家事・自炊 読んで新生活 新年度が始まり、新しい生活に四苦八苦している人も多いだろう。「家事」や「自炊」を描いた小説やエッセー、ノンフィクションなどの刊行が相次いでいる。本の中の人々の知恵を頼りに、気負いすぎず、自分なりの生活のペースをつかむのはいかがだろうか。(小杉千尋)

『死者たちへの捧(ささ)げもの』安藤礼二著

料理や食器洗いに飽きたら、時々本を読んで一休みするのはどうだろうか料理や食器洗いに飽きたら、時々本を読んで一休みするのはどうだろうか

小説、エッセーにヒントや工夫 家事とは誰かのためではなく、まず自分自身が生きるために必要なこと――。近藤史恵さんの新刊小説『山の上の家事学校』(中央公論新社)は、大切な真実を気づかせる。舞台は、男性を対象とした家事学校。妻と離婚して以来、すさんだ生活を送っていた幸彦はある日、妹から「山之上家事学校」を勧められる。
 ほかの男性たちと、掃除や洗濯、料理を学ぶうち、幸彦は家事を「自分の仕事ではない」と思い込んでいる自分の
歪(ゆが)
みに気づく。

 忙しい現代では、完璧にこなそうと思いすぎないことも大切だろう。せやま南天さんのデビュー作『クリームイエローの海と春キャベツのある家』(朝日新聞出版)は、家事代行として働く
津麦(つむぎ)
の物語だ。
 つい家がひどく散らかってしまい、完璧にこなせない家事に悩む大人たちに、温かな筆致で寄り添った。 家事の中でも、ひときわ手間と時間がかかるのが料理だ。フードライターの白央篤司さんは、「無理せず、なるたけラクに、そこそこおいしく」と唱える。 半端に余った食材はみそ汁に活用し、お弁当は「マンネリ上等」。『台所をひらく 料理の「こうあるべき」から自分をほどくヒント集』(大和書房)は、身構えすぎず料理に向き合えるように、背中を押してくれるアドバイスの数々がうれしい。 気持ちの持ち方一つで、実は家事とは自分をいたわり、養う時間になるのかもしれない。『自分のために料理を作る 自炊からはじまる「ケア」の話』(晶文社)を刊行した「自炊料理家」の山口祐加さんは、自分の料理に、あえて「ズボラ」や「手抜き」の言葉を使わないと決めたという。 <「今日もなんとか頑張った!」で十分のはず> 映画評論家の三浦哲哉さん『自炊者になるための26週』(朝日出版社)は、米を炊く、魚をさばくなど半年かけ、料理を楽しみながら少しずつ自分にできることが増やせるよう導く。 日々の営みを肯定できるようになったとき、その先に、自らの人生を慈しむことが見えてくるのかもしれない。掃除外注で気づき『山の上の家事学校』近藤史恵さん 『山の上の家事学校』を刊行した作家の近藤史恵さん(54)=写真=は、実は家事が苦手だという。家事について深く考えるきっかけは、3年前から週に1回、ハウスキーパーに掃除を依頼するようになったことだった。◇ 具体的にどこをどう片づけてほしいと伝えるべきか。家事の外注は、意外と難しかったという。「自分に知識や主体性がないと、人を雇うこともできない。お金を出しても家事は解決できないんだと驚きました」 本作に登場する男性は、仕事を理由に家事を後回しにし、学校で学んだ知識を家で生かそうとしない。一方、現実の社会では長時間労働により、仕事と家事の両立が難しいこともある。 「特に男性は、一人世帯でも家族がいても、(専業の家事従事者がいる家庭と)同じくらい働かないと評価されない雰囲気がありますよね。家事をしない、できないことは、男性自身の健康を阻害していることにもなると思う」と話す。 大学卒業後、呉服店で働きながら小説を書き、1993年に『凍える島』でデビュー。しばらくは執筆の傍らアルバイトをしていた。当時はフリーターを選ぶ同級生も多かった。「そのまま正社員になれず、生活が行き詰まってしまう人を何度も目にした。社会的な支援もなく、女性は結婚して家のことをやればいいと思われていたのでしょう」 30年以上たった今、共働き家庭は増えても、家事や育児の負担は女性に偏ったままだ。「今は動画で、包丁の握り方から効率の良い掃除のやり方まで、丁寧に説明されている。簡単なことから始めてみては」

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