人手不足を背景に定年退職の年齢を引き上げる企業が増えている。人件費の増加につながるため従来は敬遠されてきたが、若手の採用が厳しさを増し、シニアに頼らざるを得なくなっている。高齢でもやりがいや給与アップを求めて転職するケースが増えており、企業側は「囲い込み」の強化に向け、いかに待遇を改善できるかが問われている。(川口尚樹)

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「意欲あれば年齢関係ない」 「やりがいがあるし、若手の指導も楽しい」定年退職の年齢引き上げを受けて働き続ける決断をした高田工業所の井口安全衛生室長(右)(3月21日、北九州市で)定年退職の年齢引き上げを受けて働き続ける決断をした高田工業所の井口安全衛生室長(右)(3月21日、北九州市で) プラント設備の建設や修繕を手がける高田工業所(北九州市)で、本社工場の事故防止の責任者を務める井口賢一郎・安全衛生室長(62)は3月下旬、職場で声を弾ませた。

 定年を目前に控えた2021年、会社が対象年齢を60歳から65歳に引き上げた。定年後の再雇用の制度は既にあったが、給与は約4割減り職責も下がる。延長により給与の削減率は1割ほどにとどまる。能力次第で職務も大きく変わらないため、続投を決めた。 井口さんは引退して妻と欧州旅行をしようと考えていたが、「『長く働いて規則正しい生活をした方が健康でいられる』と、妻が一番喜んだ」と笑う。 高田工業所では、50歳以上の社員が全体の3割超を占め、最も多い。定年を60歳に据え置けば人材不足に拍車がかかる。既に人手不足で受注を断るケースも出ており、高田寿一郎社長は「意欲があれば年齢は関係ない。事業を継続する上で貴重な戦力だ」と力を込める。変わる標準 日本の企業は定年を法律上の最低年齢である60歳とすることが多かったが、その標準は変わりつつある。 1 2 3

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