2026年07月21日 16時10分
メモ


イスラエルは長期間にわたりパレスチナ・ガザ地区に攻撃を続けており、アメリカとイランの戦闘終結に向けた交渉にも影響を及ぼしています。アメリカ国民による反イスラエル感情が高まる中、イスラエルが多額の資金を費やしてAIやインフルエンサーを動員し、アメリカの世論をイスラエル有利に誘導しようと働きかけていることが、経済紙のウォール・ストリート・ジャーナルによって報じられました。

Israel’s $50 Million Experiment to Change U.S. Public Opinion – WSJ
https://www.wsj.com/politics/israels-50-million-experiment-to-change-u-s-public-opinion-253b3b70

Israel’s new influence campaign brings AI into the battle for American opinion | Ctech
https://www.calcalistech.com/ctechnews/article/hya411vqezg

アメリカのシンクタンクのピュー・リサーチ・センターが2026年3月に行った調査では、イスラエルを好ましいと回答したアメリカ国民は37%で、好ましくないと回答した割合の60%を大きく下回りました。また、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相に対しても、世界情勢に関して正しい行動を取ることをほとんど、あるいはまったく信頼できないとする割合が59%に達しています。

そんな中、イスラエルはAIを活用したキャンペーンや保守系メディアへの直接的な資金提供などに多額の資金を投じ、アメリカの世論をイスラエル有利に誘導しようと試みています。イスラエルのギドン・サール外務大臣によると、イスラエル政府は意識形成および世界におけるイメージ向上に向けた取り組みを拡大するため、2026年度予算として7億ドル(約1137億円)以上を計上したとのこと。

アメリカのJ・D・ヴァンス副大統領は、2026年7月の人気ポッドキャスト司会者ジョー・ローガン氏との対談で、イスラエル政府がイランとの戦争に関するアメリカ世論を操作し、和平交渉を妨害しようと試みていると批判。「一部のイスラエル当局者は戦争を無期限に継続させるためにアメリカの世論を操作し、変えようとしています」と語っています。

イスラエルは過去1年間で、アメリカにおける世論形成活動を支援するために少なくとも6社と契約し、マーケティング専門家を中心とした30人以上がイスラエルの外国代理人として登録されています。中でも注目されているのが、アメリカのドナルド・トランプ大統領の盟友であり元選挙対策本部長のブラッド・パースケール氏との契約です。パースケール氏は人気保守系ポッドキャストやラジオ番組の司会者を抱える複合企業セイラム・メディアで最高戦略責任者を務める人物で、イスラエルは4500万ドル(約73億円)以上の金額でパースケール氏と契約したそうです。

イスラエルとパースケール氏との契約には、「セイラム・メディア・ネットワークのメディア資産および関連する配信チャネルへの物語的なメッセージの統合」が含まれています。トランプ大統領の元首席戦略官であり、自身も著名なポッドキャスターであるスティーブン・バノン氏は、「なぜ保守系トークネットワークで2番目に大きい番組が、登録された外国代理人によって運営されているのでしょうか?」と批判しました。


セイラム・メディアとパースケール氏は、ポッドキャスターや司会者らに対してイスラエルに好意的な発言をするように依頼し、報酬を支払っているわけではないと主張しています。セイラム・メディアの最高経営責任者であるデビッド・サントレラ氏は、「私たちの司会者は他人の台本を読むのではなく、自分の考えをそのまま述べることでキャリアを築いてきました」と述べました。しかしウォール・ストリート・ジャーナルは、セイラム・メディアの司会者らの多くは長年にわたりイスラエルを擁護していると指摘しています。

イスラエルの取り組みはポッドキャストだけにとどまりません。2025年7月に設立された「Show Faith by Works」という団体は、イスラエルへの好感度を高めるとともにパレスチナ系住民を過激派組織と結びつける活動を行っています。Show Faith by Worksが当局に提出した書類には、ジオフェンシングを利用してアメリカ南西部に住むメガチャーチやキリスト教系の大学生を対象に、親イスラエル的なメッセージを送る計画が記されているとのこと。

また、イスラエルはインフルエンサーの動員も進めており、ネタニヤフ首相も最近のアメリカ訪問で保守派のインフルエンサーに会談しています。インフルエンサーのヨアブ・デイビス氏が経営するマーケティング会社はイスラエルと契約を結んでおり、デイビス氏はInstagramアカウントで頻繁にイスラエルと戦争に関する議論について意見を述べているとのこと。デイビス氏は2026年6月、イスラエルで性的少数者の権利擁護を訴えるプライド・マーチに参加し、「イスラエルはLGBTQ+の人々にとって、中東で最も安全な場所です」とカメラの前でコメントしたそうです。

パースケール氏の事業計画には、ClaudeやChatGPTといったチャットAI上で、親イスラエル的な反応を引き起こすためのものも含まれます。これには親イスラエル的なコンテンツを含むウェブサイトやSNS投稿、リンクの作成などが該当します。実際にチャットAIが、パースケール氏のチームが構築した親イスラエルのウェブサイト「Allyvia.org」を引用するケースもあるとウォール・ストリート・ジャーナルは報じています。


イスラエルの影響力工作ではAIも活用されています。AIを活用したテキストメッセージ送信を手がける企業・SparkFireは650万ドル(約10億5600万円)の契約を結び、数百万人を超えるアメリカ人のスマートフォンに「アメリカとイスラエルによるイランとの和平交渉」について尋ねるメッセージを送信しています。このメッセージの送り手は「Friends for Peace」という団体の会員を名乗るエマ、またはサラという人物ですが、会話は堂々巡りでありテキストはAIによって生成されたものと思われます。

実際にAI生成らしきメッセージを受け取ったアーティストのベス・サードゥット氏は、「私は『あなたは本物の人間ではないと思う』と言ったのですが、それは自分が本物の人間だと信じ込ませようとしてきました」「たとえ私が信じる理念であっても、AIと会話したくはありません」と述べました。

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