V8エンジンへの回帰が固まりつつある次のF1レギュレーション時代をめぐり、国際自動車連盟(FIA)が独立系エンジンビルダーや給油の復活を検討していることが判明した。モハメド・ベン・スレイエム会長が明らかにした。

遅くとも2031年より始まる新たな時代のF1では、ベン・スレイエム曰くV8回帰は「決定済み」であるものの、ハイブリッドの出力比率やターボの有無など、詰めるべき細部は多く残っており、現在さまざまな選択肢の検討が進められている。

その中には、カスタマーチームに対するワークスメーカー≒パワーユニット(PU)メーカーの影響力を削ぐための独立系エンジンビルダーの復活や、ハイブリッドの縮小やターボが廃止された場合を見据えたレース中の給油復活案などが含まれている。

メーカー支配を断ち切る独立系V8供給案

コスワースcopyright cosworth.com

コスワース

かつてのF1において、サードパーティ製のエンジンは一般的だった。たとえばコスワースは2013年シーズンまでマルシャにV8エンジンを供給してきた。だが、多大なコストや技術的難易度から、V6ターボハイブリッド時代の到来とともに独立系エンジンビルダーは姿を消した。

現在検討されているのは、どのチームでも購入できる費用対効果の高いV8を供給する独立系エンジンビルダーの復活だ。

イギリスの専門サイト『The Race』によると、シルバーストンでベン・スレイエムは、これにより規則変更の投票時など、ワークスメーカーがカスタマーチームに対して持ち得る支配的な影響力をなくすことができるとの考えを示した。

「エンジン供給を通じて、AというチームがBというチームを支配するような構図はなくなる」とベン・スレイエムはシルバーストンで述べた。

「[独立系ビルダーが復活すれば]誰もそれを弱みとして利用して『こちらの望む方向に投票しろ。そうしなければ良いエンジンは供給しない』などと言うことはできなくなる」

「FIAが選定したエンジンがチームに供給されることになる。そうすれば、中立性を確保し、性能とコストを管理できる。ただ[独立系ビルダーに]丸投げして『あとは好きにやれ』という話ではない。価格は上下するかもしれないが、常にFIAが判断を下す」

ベン・スレイエムは、開発・製造コストが妥当な水準まで下がれば、チームが自ら自社製エンジンを手がけるシナリオが開かれると考えている。

「マクラーレンはやると言った。それからアルピーヌも、自前のエンジンを作るだろう。すでに2社がそう言っている」とベン・スレイエムは語った。

もっとも、ベン・スレイエムが挙げた2チームには温度差がある。

マクラーレンのザク・ブラウンCEOは、財政的に見合うのであれば自製エンジンを検討する意向を示している。一方で、アルピーヌの親会社であるルノー・グループのフランソワ・プロヴォCEOは、「V8の方向性は支持するが、それはルノーがエンジンメーカーとして復帰する好機になり得るからではない。それは我々の戦略ではない」と述べた。

ターボかバッテリーか「二者一択」とFIA会長

HRC(株式会社ホンダ・レーシング)が開発を手掛ける2026年型F1パワーユニット「RA626H」、2026年1月20日Courtesy Of Honda Motor Co., Ltd

HRC(株式会社ホンダ・レーシング)が開発を手掛ける2026年型F1パワーユニット「RA626H」、2026年1月20日

2026年現在の内燃エンジン(ICE)と電動出力は約50対50に設定されており、2028年に向けては約60対40に調整されるものの、来るV8時代はそれよりもさらに電動側の役割が削減される可能性がある。

「10%かもしれないし、15%かもしれない」とベン・スレイエムは語る。「現在のような46%程度になることはない。ドライバーがストレートでアクセルを緩めるような、現在の問題は繰り返したくない」

もう一つの重大な議論の柱は、V8が自然吸気になるのか、それともターボを備えるのかという点だ。アウディは先ごろ、ターボの搭載は不可欠だとの立場を示した。

ベン・スレイエムは、2031年以降のV8規則について、ターボとハイブリッドシステムを併存させることに否定的な姿勢を示した。ターボは重量とコストの増加につながり、バッテリーもまた重量増に繋がる。さらにターボは、F1が取り戻そうとしているエンジンサウンドを損なう、というのが彼の見方だ。

そのため今後は、メーカーに対して「ターボを採るのか、縮小されたハイブリッドシステムを採るのか」という選択を与える方向に議論が進む可能性がある。

「今の私の考えでは、ターボかバッテリーか、そのどちらかだ。これはFIAが主導すべきだ。堂々巡りのままでは、何も決められない」とベン・スレイエムは述べた。

車重100kg減の代償、給油復活の可能性

エクソンモービルが2021年型ホンダ製F1パワーユニットRA621H用に開発した新燃料シナジー・レース・フューエルCourtesy Of Red Bull Content Pool

エクソンモービルが2021年型ホンダ製F1パワーユニットRA621H用に開発した新燃料シナジー・レース・フューエル

ハイブリッドシステムの縮小やターボの廃止に関する議論と並行して検討されている項目の一つが、F1にとって2009年以来となる給油制度の復活だ。

2026年の規則下において、マシンに搭載される燃料はおよそ105kgとされるが、かつてのV8時代で給油なしにレースを完走する必要があったシーズンは150kg程度だった。

ベン・スレイエムは次世代マシンについて、よりシンプルなエンジンを導入することで「100kg軽くすることを目標にしている」としている。だが、そのために、より多くの燃料を積むことで、それが相殺されてしまう事態は避けたい。

そのためFIAでは現在、給油やコストに関する研究調査が行われている。コストに関しては、機材と輸送費で、各チームに年間およそ400万ドル(約6億5000万円)の負担が生じるとの試算もあるとされる。

「どれだけの量でスタートし、どれだけ給油するのか。それを今まさに研究している。もちろん、[給油なしに]レースを走り切りたいなら、より大きなタンクが必要になる。それかピットストップをするかだ。その点を検討していく」とベン・スレイエムは述べた。

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