隣り合う京都と滋賀で出生率が「真逆」になったワケ 「通勤圏の駅近マンション・工場」が出生率を上げる要因に 2026年06月10日

近年、日本の出生率に異変が起きています。

関西の中でも特に低下が目立ったのが京都府です。特に京都市では、おととし行われた市町村ごとの調査で1.13と、関西の政令指定都市では最も低くなりました。

 

■10年連続で下がり続け…過去最低を更新

 

■「タワマンは建てられない」京都

関西の中でも特に低下が目立ったのが京都府です。全国で4番目に低い数字となっています。

中でも京都市はおととし行われた別の調査の市町村ごとの数値で1.13と、関西の政令指定都市では最も低く、全国で2番目に低い結果となっています。

大阪市や神戸市と比べても、なぜ京都市の出生率はこれほど低いのか。少子化問題を研究する立命館大学産業社会学部の筒井淳也教授は、まず京都市内のマンション事情に着目します。

「タワマンは建てられないですよね」と筒井教授は指摘します。 近年、都市部の住居として各地で建設が進むタワーマンション。しかし京都市内の中心部には1棟も存在しません。貴重な景観を守るために条例で課された高さ制限が、マンション供給を大きく制約しているのです。

【立命館大学産業社会学部・筒井淳也教授】「限られた土地に低いマンションしか建てられないので供給が制限されますから、どうしても価格が上がっていきます」

ファミリー層が求める広さの物件数が非常に限られ、価格も高騰しているという現実があります。

 

■「金持ちだけが住めばいいというような」都市の富裕化も

 

■「もし子育てするとなったら地元に戻る」との声も

 

■栗東市は本州で最も高い出生率「1.92」

では、子どもを産みやすい街とはどのような街なのか。

滋賀県栗東市はおととし行われた市町村別出生率の調査で1.92と、本州で最も高い数字を記録しています。関西では滋賀県が唯一上昇した中で、さらに突出した結果です。

理由を探ろうと取材班は栗東市役所を訪ねましたが、栗東市企画政策課の芝原慶久課長も「うちもなかなかちょっと分析難しい。細かい要因が積み重なって複合的な要因で今の水準をキープできているのかな」と率直に語ります。

そこで筒井教授とともに現地へ向かいました。駅に降り立った教授が早速指摘したのは、周辺の街の構造でした。

【立命館大学産業社会学部・筒井淳也教授】「まさにわかりやすく駅があります。駅のすぐ近くに大きなマンションが林立している。その真ん中にショッピングモールがある。この要素が出生数を上げるパターンになっている」

この構造は、社会の働き方の変化と深く結びついていると教授は続けます。かつてのニュータウンは駅から遠く、戸建て中心で、男性だけが働くライフスタイルを前提としていました。しかし今は共働き世帯が増え、通勤の利便性と買い物の利便性がより重視されるようになっています。

都市部よりも住宅価格が安く、通勤時間も短くできる郊外の「駅チカ」に、共働きの子育て世帯が集まっているといいます。

 

■栗東駅近くの戸建て住宅も子育て世帯に高い人気

 

■「通勤圏の駅近のマンション・工場」が出生率を上げる要素

 

■「人口を分散させることが大事」筒井教授

筒井教授は、市町村単位の対策にとどまらず、日本全体の視野で考える必要があると強調します。

【立命館大学産業社会学部・筒井淳也教授】「必ずしも都心部に近いところに住んでほしいという方針はこだわらない方がいい。住宅価格が控えめな自治体に住んでもらって通勤してもらうライフスタイルの方が出生率は上がりやすい。集まってくる人口をできるだけ分散させて、中にいる人も比較的住みやすくすることが大事」

政府が少子化対策を進める中、有効な手立てはなかなか見つからないのが現状です。ただ、栗東市の事例が示すように、住環境・雇用・利便性という日常生活に根ざした複合的な条件が、出生率の向上と深く結びついている可能性があります。

「ここで子どもを産み育てたい」と感じられる街の形を、広い視点で問い直すことが求められているのかもしれません。

 

(関西テレビ「newsランナー」 2026年6月8日放送)

Share.