中国政府に対しては批判なし

Image:Samuel Boivin/Shutterstock.com

アップルはWWDC 26で発表した新たな「Siri AI」機能について、今年後半に開始予定のベータ版ではEUと中国で利用できないと明らかにした。そのうちEUについては、同社が提示した提案をEU規制当局がいずれも受け入れなかったことが理由だと説明している。

同社の公式ニュースリリースによれば、今後もEU規制当局と協議を続け、解決策を模索していく方針だという。しかし、「プライバシーとセキュリティを守る解決策について建設的な協議を拒否された」ため、現時点ではEUにおけるiOSおよびiPadOS向けSiri AIの提供時期を示せる状況にはないとしている。

さらにアップルによれば、EU規制当局はDMA(デジタル市場法)に基づき、任意の仮想アシスタントに対してユーザーのデバイスへのほぼ無制限のアクセス権と、そのアクセスを利用した自律的な操作権限を、ユーザーによる継続的な監視や制御なしに与えるよう求めているという。

アップルは、これは他社製AIに対してメッセージの閲覧・送信、購入、ファイルへのアクセス、さらにはあらゆるアプリを横断した操作の実行能力を開放することを意味すると主張している。その結果、AIシステムが乗っ取られた場合には、パスワードや写真などの個人データが盗み出されたり、ファイルやアカウント設定がユーザーの同意なく恒久的に変更されたりする恐れがあると警告している。

こうした深刻なリスクを踏まえ、同社は「Trusted System Agent」という仕組みを設計したと説明している。これはEU向けデバイスにおいて、仮想アシスタントとデバイス機能の間に入る仲介レイヤーであり、他社アシスタントにもSiri AIと同等の機能へのアクセスを認めつつ、ユーザーとデバイスを保護するものだという。

さらにアップルは、Siri AIをEUへ導入すると同時に、この仕組みを18カ月かけて段階的に展開する計画も提示したとのことだ。しかし同社によれば、欧州委員会はこの案を含め、「アップルのどの提案にも同意しなかった」という。

また、フランスのニュースメディアNumeramaは、アップルのマーケティング担当上級副社長グレッグ・ジョズウィアック氏に対し、EU規制、とりわけDMAが新機能の提供にどのような影響を与えているのかを質問した。これに対し同氏は、Siri AIを巡る問題について「これまでで最も酷い例であり、欧州委員会によるDMAの極端な解釈の一例だ」と述べ、現在の膠着状態が数カ月、あるいは数年続く可能性もあるとの見方を示している。

一方でEU側は「新しいサービスは最初からDMAに準拠した形で提供されるべきであり、ローンチ後に段階的に対応するための猶予は認めない」との立場を明確にしており、姿勢を崩していない。

これらの制限は一般消費者だけでなく開発者にも適用される。EUを拠点とする開発者は、新しいSiri AI機能をテストしたり、自身のiPhone・iPad向けアプリに統合したりすることができない。一方でアップルは、EUにおいてもmacOS 27、visionOS 27ではSiri AIを提供するとしている。

アップルとしては、EU規制当局に責任があると訴えることで、域内の世論を味方につけたい思惑があるのかもしれない。その一方で、同じくSiri AIの提供時期が見通せない中国については、「Siri AIおよびその他のApple Intelligenceの新機能は、Appleが規制要件への対応に取り組んでいる間、中国では利用できません」と一文で説明するにとどめている。この温度差は興味深いところである。

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