奈良市のクラフトビール醸造所「奈良醸造」の二つのビールが、米国で行われた世界的ビール品評会「ワールドビアカップ2026」の2部門で最高賞の金賞に輝いた。「世界一のビールを造る」目標を掲げ、これまで約160種類を手掛けた社長の浪岡安則さん(47)は、「受賞に甘んじることなく、より高い品質のビールを届けられるよう努力を重ねたい」と気持ちを新たにしている。(河部啓介)
受賞を喜び、さらに意欲を燃やす浪岡さん(奈良市で)
奈良県田原本町出身の浪岡さんは大学卒業後、県職員として主に土木に携わった。ビール醸造に興味を持ち、15年に退職。京都の醸造所で約1年半修業後、大和郡山市との境にある一角に奈良醸造を構えた。18年から醸造を続けている。
同品評会の金賞の基準は「指定されたスタイルを正確に体現し、味、香り、外観の適切なバランスを備えた、世界クラスのビール」とされる。
奈良醸造のビールは「FUNCTION(ファンクション)」(American―Belgo―Style Ale部門)と、灯台を意味する「LIGHTHOUSE(ライトハウス)」(Session Beer部門)の二つが金賞に選ばれた。
ファンクションは、ベルギー系酵母とアメリカンホップの掛け合わせで、爽やかだが複雑なホップの香りを楽しめる仕上がり。苦すぎない飲み口で、クラフトビール初心者でも手に取りやすい定番商品だ。
今大会は6度目の応募で、当初のコンセプトは変えず、レシピを微調整して挑み続けた。浪岡さんは「自分でおいしいと思うビールで受賞できたことがうれしい」と笑顔を見せる。
一方、ライトハウスは初出品。数年前に一度醸造した際、友人の醸造家から「世界で通用する」と太鼓判を押されており、昨年に復活させた。低アルコール(度数3・0%)だが、しっかりした飲み応え。複数のロースト麦芽を掛け合わせることで苦みの中に多層的な香りの変化が感じられる逸品だ。
「灯台」の名前には「酔わずにおいしい」というコロナ禍以降の飲酒意識の変化を受け、奈良醸造のこれからに光を照らす、という思いも込められている。
奈良醸造の製品は、県外出荷が多数を占める。浪岡さんは製品のラベル作製時、「大仏や鹿はデザインに描かないで」とあえて注文を付けている。「ビールはユニバーサルな飲み物なので、奈良から離れた場所でも手にとってもらえるよう、他にもあるデザインではなく、なんだこれは、と思う面白いデザインを目指した」とこだわりを見せる。
一方、県内のビール消費量はまだ少ない。「レベルの高い酒文化を誇る奈良でビールも追いついていきたい。地元から世界まで通用するビールにしたい」と目標を語った。
◆ワールドビアカップ
=醸造所や小売業者などでつくるアメリカの「ブルワーズ・アソシエーション」が主催し、1996年に創設。2026年の大会では、世界約50か国から約8000のビールが応募された。専門の審査員が厳正な審査を行い、各部門で金、銀、銅の各賞を決める。「ビール界のオリンピック」とも称される。
金賞に選ばれたFUNCTION(ファンクション)
LIGHTHOUSE(ライトハウス)
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