穏やかな瀬戸内海に瀬戸内しまなみ海道が伸び、周囲には豊かな山々が広がる。森と海がともに近く、産業も盛んな愛媛県今治市は、近年、移住者が増えているのだそう。新たな暮らしを求めてこの地に移り住んだ人たちを訪ねた。
愛媛県今治市
愛媛県の北部に位置する人口約15万人の市。造船などの海事産業やタオルを中心とする繊維産業が盛んで、県では松山市に次ぐ第2の経済圏になっている。また陸地部のほかに島嶼部も。大島、伯方島、大三島の3つの島とはしまなみ海道でつながっており、車での行き来が可能だ。
地域おこし協力隊として縁のなかった今治へ
埼玉県→今治市陸地部
〈リッケンファクトリーデザイン〉
福地立憲さん
くろごま団地(愛媛県今治市常盤町2丁目1-20)は福地さん(左)の作業場も兼ねている。ご家族が立ち寄ることも。
今治港にほど近く、かつては地域の中心として栄えた今治銀座商店街。近年はシャッター街と化していた通りの一角に、今年9月、シェアキッチンや一棚本屋を内包する小さなコミュニティスペース「くろごま団地」が開業した。
運営するのは〈リッケンファクトリーデザイン〉の福地立憲さん。地元の埼玉でデザイナーとして活躍しながら地域活性化にも携わり、2022年に今治へ移住した。
15年ほど空き店舗になっていた衣料品店を改築。
「埼玉では、昔ながらの商店街にデザイン事務所を構えていた縁から、定期的にものづくりを起点にしたマルシェなどのイベントを行っていました。地域と関わる面白さを実感するなかで、2018年に行政主催のまちづくりの集中プログラムに参加したのが転機になって。そこで出会った仲間と起業し、遊休資源を活用した地域活性化のより大きなプロジェクトに携わるようになったんです」
最盛期は路面が見えないほどの人通りだった。
本業のデザインと同様の熱量でまちづくりにのめり込む一方、「いろんな土地に住んでみたい」という思いも温めていた。
「再開発で事務所の立ち退きが必要になったことと結婚を機に、拠点を移すなら今かなと。調べるうちに地域おこし協力隊の存在を知り、地域活動に携わってきた自分にピッタリな制度だと感じました」
内陸県で生まれ育ち、漠然と海への憧れがあった。ゆえに照準を合わせたのは、以前夫婦で旅をした瀬戸内。だが今治に決めたのは「偶然だった」と福地さん。
「協力隊を募集している自治体をいくつかピックアップして、そのひとつが今治市でした。他よりも早いペースで選考が始まり、とんとん拍子で採用が決まって。コロナ禍だったこともあり、実際に足を運んだのは面接の日が初めてでした」
