2015年1月1日に発足したExpress Entry(EE)が、11年間の時を経てついに全面改訂します。今月は、カナダ移民局(IRCC)が現在検討している改訂内容について、公に共有している内容を解説します。

*注意事項* IRCCのEE担当者によると、この内容はあくまでも“Early Consultation”の段階とのことです。つまり、現時点では政府がカナダ市民にEEに関する変更内容についての意見を受け付けている初期段階であり、今後Consultationが幾度か繰り返され、政府内でのデータに基づいた精査の後、最終的なEEの形が決定し、法律改訂のプロセスに入るとしています。実際に改訂されるには最低でも18ヶ月を要すると言及していました。今月号の内容はEEの改訂内容を保証するものではございませんこと、何卒ご理解頂ければ幸いです。

3つの移民プログラムを一本化

現在、EEは以下3つのプログラムで構成されています。

Federal Skilled Worker Program(FSWP)Canadian Experience Class(CEC)Federal Skilled Trades Program(FSTP)

今後、これらを単一のプログラムに統合する方向性が示されています。これにより、これまでプログラムごとに異なっていた申請条件が一本化され、よりシンプルな制度になることが期待されています。

以下、現時点で考慮されている申請条件となります。

学歴…最低でも高校卒業以上(要ECA)言語…CLB 6以上(英語またはフランス語)職歴…直近3年以内に、TEER 0、1、2、3の職種で合計1年以上の就労経験(海外経験も可)

→注目すべき点は、職歴が継続(Continuous)ではなく、合計(Cumulative)に変更される点です。つまり短期の職歴を合算して職歴の条件を満たすことが可能となります。

高賃金の職業(High Wage Occupation)

これは新要素となります。高賃金の職種をPrevailing Wage(カナダ国内の平均賃金)リスト化し、申請者の給与額がどの程度(1.3倍、1.5倍、2倍など)超えているかでEEにおける追加のCRSポイントを付与する仕組みを検討中とIRCCのEE担当者は説明していました。

高い賃金であるということは、申請者のスキルの高さ、労働市場における需要の強さ、雇用主がその人材に対して対価を支払う意思、そしてカナダ経済への貢献度といった、複数の要素が反映されています。言い換えれば、高い賃金は「その人材が市場からどれだけ高く評価されているか」を示す一つの指標とも言えます。こうした背景から、IRCCはこれまでのように学歴などの要素を見るのではなく、「労働市場がその人をどのように評価しているのか」により重点を置く方向へとシフトしようとしていると考えられます。

廃止や縮小が検討されている要素

IRCCは、以下の要素について、将来の経済的な活躍を必ずしも正確に反映するものではないとして、追加点の付与を見直す方向で検討しています。

フランス語の言語力カナダでの学歴カナダ在住の兄弟姉妹配偶者ポイント州推薦(PNP)の600点FSWPの67点制度まとめ

今回の改正の背景には、EEの公正性(Integrity)をより高めたいという政府の意図もあります。これまでの制度では、職務内容の書き方や肩書きの設定、あるいはジョブオファーの扱い方によって評価に差が出る余地がありました。しかし、職種ごとの平均賃金といった客観的な指標を用いることで、審査のバラつきを抑え、より一貫性のある評価が可能になります。IRCCは、今後EEを通して「カナダ経済にどれだけ迅速に貢献できる人材を選別できるか」という点をより重視するよう、連邦政府からも制度の見直しを求められています。

EEは従来の「プログラム別」や「Profile内容重視」の選考から、「労働市場をベースにした選考」へと変化しつつあります。今後は、単に条件を満たすだけでなく、どのような職種で、どの程度の責任や影響力を持って働いているかということが、これまで以上に重要になります。特に、付加価値の高いポジションや責任の大きい役割にある方ほど評価されやすくなる可能性があり、キャリアの方向性そのものがPR取得に直結する時代に入っていくといえるでしょう。

所感

これまで多くの(EEを通した)移民申請をサポートしてきた中で感じるのは、今回の改革は少しハードルが上がるように見える一方で、新しいチャンスも生まれているという点です。

例えば、「通算1年」の職歴が認められるようになることで、これまで条件を満たせなかった方にも道が開ける可能性があります。一方で、職種や収入の水準がより重視される流れもあり、今後は「どのような職業でどの程度の収入を得ているか」がこれまで以上に大切になると考えています。

大切なのは一つひとつの変更に振り回されすぎず、ご自身のキャリアや生活に合った形で、無理のないステップを考えていくことです。目標を持って計画的に準備をしていくことで、EEを通して個人移民を申請する可能性を高めることはできるかと思います。

aya-kawakita川喜多 綾
カナダ政府公認移民コンサルタント Aya K. Immigration Services Inc.代表移民法以外にも様々な法律を学んだ後、有名移民弁護士事務所にて実務を学ぶ。移民コンサルタントとしての国家資格取得後、2009年に起 業。お客様とご相談しながら、ビザや移民取得に向けたプランを提案。個人のみならず、大手日系法人のクライアントも多い。Website: www.ayak.ca
Email: aya@ayak.ca
Phone: 416-890-4303

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