ユニオンテック 安部社長(提供、ユニオンテック、以下同)
建設・設備業界といえば「高齢化」や「人手不足」が叫ばれるのが常だ。しかし、岐阜県で空調設備や給排水設備を手がけるユニオンテック株式会社は、社員の平均年齢が約378歳と異例の若さを誇り、大型公共施設や工場などの設備工事で県内トップクラスの実績を上げている。
彼らはなぜ若手を惹きつけ、定着させることができるのか。代表取締役社長の安部源太郎氏と管理部の渡邊氏の言葉からは、地域社会との深い信頼関係と、常識を覆す組織づくりの裏側が見えてきた。
戦後の焼け野原から始まった「井戸水クーラー」と途切れない縁
創業時の写真
同社のルーツは1948年、安部社長の父である安部源平氏が創業した「ユニオン電気商会」に遡る。戦地から戻った創業者は、焼け野原のトタン板の上に自作の「停電灯」を並べて売り始めた。電気が頻繁に止まる当時、車のバッテリーと電球を繋いだ停電灯は人々の生活を照らす命綱だった。
その後、町の電気屋として暮らしを支える中、約60年前にダイキン工業からクーラーの販売を打診されたことが空調事業の第一歩となる。当時のクーラーは、わざわざ井戸を掘って地下水を汲み上げ、室外機を水で冷やして風を送るという大掛かりなものだったという。
大きな転機となったのは、祖父の代から懇意にしていた岐阜信用金庫の第3代組合長・河合甚助氏からの「お前のところのエアコン、入れてみろ」という一声だった。
全支店へパッケージエアコンを納入した実績を足がかりに事業は大きく拡大したが、この関係は過去の武勇伝ではない。現在も銀行の支店新設や建て替えの際には必ず発注を受けるなど、半世紀を超えて脈々と続く深い絆となっている。
年商25億円。成長を支える「一貫体制」と環境への真摯な提案
ユニオンテックでは働きやすい環境を醸成している
ユニオンテックの強みについて、入社24年目を迎える管理部の渡邊氏は「営業から設計、施工、そしてメンテナンスまでを自社で完結できる一貫体制にある」と語る。
渡邊氏は自社の仕組みを自動車メーカーに例え、「トヨタが販売から生産、毎年の点検までを一式で持っているのと同じ。こうした流れをすべて自社で持っている企業は、岐阜県内でも意外に少ない」と分析する。
渡邊氏が入社した20数年前、かつては1000万〜25000万円ほどだった案件が、現在では1億〜2億円を超える規模の大型公共施設などを任せてもらえるまでになり、直近の年商は約25億円から30億円と安定した経営基盤を築いている。
この成長を支えているのは、安部社長が進めてきた真摯な提案活動だ。
近年はSDGsの観点から、イニシャルコストがかさむ省エネ・環境配慮型の空調機器であっても、その長期的メリットを誠実に説明し、導入を促している。こうした目先の利益にとらわれない姿勢が、公共工事や大型案件における確固たる信頼に繋がっている。
創業者の写真
「人間関係で辞める人はいない」社員の幸せを形にする数々の施策
人材不足が深刻な建設業界にあって、同社には毎年コンスタントに若手が入社し、定着している。その裏には、安部社長が進めてきた「社員の幸せ」を形にする数々の施策がある。
まず着手したのは現場の安全への投資だ。就任当初から「安全にお金をケチらない」と宣言し、新しい作業着やヘルメット、安全靴、ハーネスなど、命を守る装備への出費を惜しまなかった。
また、かつての「一匹狼」的な職人気質から脱却すべく若手部長陣を抜擢し、「課長改善会議」や「部長審議会」といった会議体を新設。「それは俺の仕事じゃない」と突き放すセクショナリズムを排し、部門間で徹底して対話する風土を作り上げた。
働きやすさへの改革も目覚ましい。会社として育児休業制度の導入を発表した途端、働き盛りの男性社員2名が連続して「2ヶ月の育休」を申し出た。現場の対応は最初不安になったが、すぐに「皆で助けよう」と支え合う空気が生まれ、今では男性の育休取得率は100%に達している。
充実した福利厚生も特筆すべき点だ。毎年の継続的な賃上げを実施し、新卒の初任給は25万8000円と業界水準を大きく上回る設定とした。
さらに、社員が休日にリフレッシュできるようリゾートホテルの会員権を購入したほか、日々の昼食代を会社が半額負担する食事補助制度まで導入し、社員の生活を物心両面からサポートしている。
こうした取り組みの結果が「弊社の人間がいいんですよ」という安部社長の言葉に表れている。給与につられて転職した社員が「3ヶ月で戻りたい」と出戻りを希望してきたこともあるという。
同社の退職理由は「実家の家業を手伝うため」など前向きなものが大半で、人間関係の不満で辞める人がいないというリアルな事実こそが、同社の魅力の何よりの証拠だろう。
社員たちの様子
社会の「当たり前」を守る誇りと、建設業の真価
安部社長は建設業の社会的意義について、強い確信を持っている。「建設業や運送業は、社会にとって不可欠な存在。ある日突然エアコンが壊れたら、高齢者の方は命の危機に晒されるかもしれない。
災害で水が出なくなる恐怖は誰もが知っている。私たちの仕事は、そうした『当たり前の生活』をどう作り、守っていくかという尊い使命の上に成り立っている」。
だからこそ、世間に根付くネガティブなイメージや一部の偏った報道に対し、安部社長は「社会の認識を変えたい」と熱を込める。
建設業に従事する人々は怖そうな印象を持たれがちだが、実は極めて高いコミュニケーション能力が問われる職業でもある。施主から現場の職人まで、多様な立場の人々の間に立ち、調整しながら形にしていく力が必要だからだ。
現場で働く社員たちも、その誇りを胸に刻んでいる。自分が関わった建物が完成し、家族と訪れた時に「ここはお父さんが作ったんだよ」と胸を張って言える喜び。
渡邊氏も「直接感謝される機会は少なくとも、社会インフラを支え、緊急時にもいち早く駆けつけて力になれるという確かな自負をみんなが持っている」と語る。社会を根底から支える確かなやりがいが、ユニオンテックの若き力たちを今日も熱く突き動かしている。