イェンス ヴィッシング監督のもとで始まった新生ガンバのキーワードは『前へ』。

選手、スタッフの誰もがその言葉を心に据えて、

プレーも思考も、さらにはフットボーラーとしての生き方を含めて前への意識を強め、サッカーに向き合っている。

今シーズンのWE ARE GAMBA OSAKAはそんな「前へ」突き進む男たちが、

キャリアを大きく動かした体験や出会いといった『突破』の瞬間にスポットをあてる。

その先に、彼らはどんな世界を見出したのだろうか。

 今でも忘れられない試合がある。期限付き移籍で在籍した栃木SCでの2024年に戦ったJ2リーグ第8節・ジェフユナイテッド千葉戦だ。0-3と大きなビハインドを追いかける状況下、南野遥海は後半からピッチに立った。

「前年度はJ3のテゲバジャーロ宮崎でプレーしていて、この年は初めてJ2リーグを戦ったんですけど、開幕戦で先発して以降は途中出場が続いていたんです。その中で1つ前の第7節・Vファーレン長崎戦で6試合ぶりに先発して移籍後初ゴールも取れたんですけど、千葉戦は連戦だったので控えに回り、監督からは『流れを変えてくれ』と言われて後半から出場しました」

 もっとも、後半立ち上がりにも立て続けに失点した栃木は、さらに5点を失ってしまう。結果、0-8。キャリアにおいても経験したことのないスコアで敗戦したが、南野自身は栃木に加入して初めて「いける」という手応えを掴んだという。

「チームとしては失点を重ねてしまったんですけど、点差ほど内容は悪くはなかったし、自分のパフォーマンスについては、ボールの受け方とか、動き方、ゴールへの向かい方みたいなところで『いける』という確かな手応えを掴めた45分間になりました。当時は3-1-4-2の真ん中、インサイドハーフでプレーしていたんですけど、試合前、海外のプレー映像を観ていた時に、自分とタイプは違うとはいえパウロ ディバラがすごくスムーズにボールを受けていたのを観て、そのイメージで千葉戦に入ったんです。しかも、何回か前を向くシーンがあった時に、そのイメージ通りにプレーしたらすごくフィットしたというか。ゴールに向かうコツみたいなものを掴めた気がした。以降は確信を持って『取れる』と思えるようになったというか。長崎戦での初ゴールはたまたまボールが来て取れた、という漠然としたものでしたけど、千葉戦以降はゴールまでの持っていき方など含めて確信を持って点が取れるようになった」

 事実、第9節以降はスタメンに定着した彼は、前線での存在感を膨らませながらチーム最多の7得点と数字を残す。

「僕にとっては得点以上にその感覚がめちゃ大事というか。それがあって初めて点が取れる気がする」

 そして、その『感覚』は、ガンバに復帰して2年目を迎えた今シーズン、試合を重ねる中でより大きくなっているという。

「ガンバに復帰した昨年は、J1で点を取るというか、ガンバの選手としてJ1で点を取ることに難しさを感じていたというか。説明が難しいけど、チームの雰囲気、クラブの歴史、サポーターの圧力はもちろん、前線の競争力を考えても、そもそもたくさんのチャンスをもらえるわけではない中でそれをものにする難しさは正直、あった。そういう意味では僕が大事にしている感覚的なところで『ああ、いけるわ』って思える瞬間はなかったんですけど、今年は違う。まだ完全にこれ、というところには辿り着けていないけど、時間を追うごとにその感覚が大きくなっているのは感じます。開幕の大阪ダービーとか、9節・京都サンガF.C.戦もその1つ。これまでの経験上、その感覚の部分への手応えが大きくなるほど自然と点も取れてきたので、今はそれをできるだけ研ぎ澄ませることを意識しています」

 話を聞いたのは、彼がシーズン2得点目を挙げた4月22日のアビスパ福岡戦直後。実際、その時も彼は得点以上に自分の『感覚』について強調していたが、その福岡戦から1週間後、4月29日の京都戦でも南野は再びゴールネットを揺らし、3試合ぶりの先発出場となった5月2日のヴィッセル神戸戦でも2得点を決めた。これは、つまりーー。



高村美砂●文 text by Takamura Misa

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