秋田県由利本荘市で4月23日、「ユーラス西目ウインドファーム」のリプレース工事竣工式が行われた。2000年代前半に導入された多くの陸上風車が更新時期を迎えるなか、卒FITを見据えた将来的な市場統合や地域共生など、これからの再エネ事業に何が求められているのかを探る。

メイン画像:ユーラス西目ウインドファームの竣工式(秋田県由利本荘市)

未曾有の災害を乗り越え
予定通りの竣工を実現


今回のリプレースでは、単機出力4300kWの大型風車7基に集約した

秋田県由利本荘市のユーラス西目ウインドファームは、2004年11月にベスタス社製の2000kW風車15基(計30000kW)で営業運転を開始した、秋田県内でも陸上風力の黎明期の大規模風力発電所である。稼働から約20年が経過し、設備の高経年化が進んだことから、23年3月に旧設備の運転を終了し、設備の全面的な更新(リプレース工事)を進めてきた。

今回の建て替えでは、従来の15基を撤去し、シーメンス・エナジー社製の単機出力4300kWの大型風車7基へと集約した。連系容量はリプレース前と同じ30000kWを維持しているが、単機出力の大型化と基数の削減により、メンテナンス効率の向上と発電量の増加が期待されている。この新たな7基の風車は、一般家庭約15000世帯分の消費電力に相当するクリーンエネルギーを供給し、年間約24000トンのCO2削減効果が見込まれている。

建設プロセスにおいては、24年7月に発生した大雨災害により、資機材の輸送路に土砂が流入するという困難に直面した。しかし、施工を担った前田建設工業が2ヶ月という短期間で道路の仮復旧を行い、行政との円滑な連携によって計画的な工期維持を実現した。

ユーラスエナジーホールディングスの諏訪部哲也社長は、この風車の開発段階から事業に関わっている。23日の竣工式のあいさつで、諏訪部氏は「工事期間中、幾多の試練を乗り越えられたのは、施工会社や風車メーカーとの緊密な連携に加え、現場スタッフが地域住民と積極的に対話を重ね、信頼関係を築き上げた賜物であります」と強調した。由利本荘市の佐々木司副市長は、ユーラスエナジーが地域貢献基金などを通じて市の環境保全や地域振興に寄与してきたことに謝意を表した。
 

 

風車リプレースを取り巻く情勢と
ユーラスエナジーの決断の経緯


ユーラス西目ウインドファームの竣工式(秋田県由利本荘市)

日本国内の陸上風力発電所は、2000年代前半に導入された設備が続々と更新時期を迎えている。昨今の風力発電業界では、資材価格の高騰や物流費の上昇、そして安全性に対する社会的要請の厳格化が事業継続の判断を難しくさせている。ユーラスエナジーは、国内で数多くの発電所を運営してきた実績から、資材高騰や安全対策といった課題をあらかじめ想定し、それらを解決するための仕組みを建て替え計画のなかに反映させた 。

設備選定にあたり、同社は約20年間の運転実績から得られた詳細な風況データを活用した。かつて15基が配置されていた場所に、より大型の風車をわずか7基に集約して配置した判断の背景には、保守工数の削減と自然環境への影響低減、そして発電効率の追求がある。

近年、風車の大型化が進む一方で、故障や事故などへの不安も高まっており、特に安全対策については、設計段階から性能の向上を図った。導入された最新鋭機には、雷などの自然災害に対する保護機能の強化や、24時間365日の挙動の異常を即座に検知する遠隔監視システムが備えられている。20年にわたる地元の信頼を損なわないよう、透明性の高い情報開示と、自社グループによる専門的なメンテナンス体制の構築が事業継続の前提となった。


秋田県由利本荘市 佐々木司副市長

竣工式で由利本荘市の佐々木副市長は「風力発電設備は地域のみなさまの生活と密接に関わるものです。今後とも、安全第一で適切なメンテナンスをお願いするとともに、積極的な情報開示、情報共有を合わせてお願いいたします」と事業者側に要望した。

ユーラスエナジーの諏訪部社長は取材に対し、「安全対策、とりわけ昨今秋田県内でも発生しているブレードの破損や事故については、非常に重く受けとめています。『安全第一』を言葉だけでなく実行で示し、地域のみなさまに安心して風車を見上げていただけるよう、徹底したメンテナンスと慎重な操業に邁進してまいります」と話した。

リプレース後の売電の動向と
ユーラスエナジーの考え


ユーラスエナジーホールディングス 諏訪部哲也社長

このプロジェクトにおける売電制度については、2020年度にFIT価格16円/kWhで認定を受けている。出力制御の頻発など市場環境が厳しさを増すなかで、安定的な固定価格での売電は事業の予見性を高める基盤となっている。一方で同社は、将来的な「卒FIT」を見据え、再生可能エネルギーを市場に統合していくための運用ノウハウの蓄積を急いでいる。

FIT制度下であっても、需要に応じた供給管理や高度な保守管理が問われることに変わりはない。今回の事業資金については、北都銀行、荘内銀行、羽後信用金庫といった地元の金融機関によるプロジェクトファイナンスを活用しており、地域の資金を活用して発電所を建て替え、売電収益を地域へ還元する経済循環モデルの維持を目指している。

さらに、同社はリプレース後の運営において、自社グループが培ってきたメンテナンス技術の外部提供についても視野に入れている。風力発電所が建てて終わりではなく、30年、40年と持続的に稼働し続けるためには、国内に分散する小規模事業者の設備も含めた業界全体の安定操業が必要であるとの認識に基づいている。諏訪部社長は自社の資産管理にとどまらず、技術協力という形で国内の再エネ市場の信頼性向上に寄与する姿勢を示している。

日本国内の陸上風車
リプレースの動向予測


リプレースしたユーラス西目ウインドファーム(秋田県由利本荘市)

ユーラス西目ウインドファームの事例は、今後全国各地で本格化する陸上風車リプレースの潮流を予見させるものである。初期導入地点の多くは風況に恵まれた好立地であり、それらを最新技術で更新することは、新規地点の開発と同等、あるいはそれ以上に日本の脱炭素化にとって重要度が高い。

今後の動向として、風車の「大型化・集約化」は一層加速すると予測される。資機材価格が高騰するなか、基数を減らして土木工事量やメンテナンス対象を絞り込むことは、事業性を確保するための標準的な手法となるだろう。一方で、ユーラスエナジーが示したように、技術的な更新だけでなく、20年前とは異なる社会情勢に合わせた「地域との対話の深化」が不可欠となる。環境アセスメントの知見に基づいた安全性への配慮と、FIT期間終了後を見据えた市場競争力の確保が、今後のリプレース事業の成否を分ける要因となる。

さらに、国内ではダウンタイムの評価についても議論が深まることが予想される。既設設備の撤去から新設までに数年を要する空白期間を、許認可対応や地域協議を含め、いかに適切に管理し、安全性と経済性のバランスを取るかが問われている。日本の陸上風力発電は、導入から定着、そして持続的な再投資の段階へ移行しており、先行事例の知見を業界全体で共有し、制度の変化に柔軟に対応していく必要がある。
 

 

DATA

「ユーラス西目ウインドファーム」の竣工式開催

取材・文:ウインドジャーナル編集部