2026年4月11日 午前7時30分
【論説】杉本達治前知事のセクハラ問題を受けた福井県のハラスメント対策が本格的に始動した。管理職の問題意識の希薄さや対応の不適切さ、個人の特定や不利益な扱いを恐れ通報しにくい体制といった組織風土の課題は長年にわたり染みついたもので、すぐには変わらない。新体制を機能させ、法令順守や人権尊重の取り組みを積み重ねていくべきだ。
県が、県立病院を除く全職員を対象に行ったハラスメント被害の実態調査で、回答した3840人の6・8%に当たる262人が現在ハラスメントに悩んでいると訴え、特に上司のパワハラが多かった。組織風土の問題の根深さは、石田嵩人知事のいう「世代間の意識のずれ」だけでは片付けられず、決して看過できる状況ではない。
深刻なのは、自浄能力に対する職員の不信感だ。県の調査でハラスメント被害を申告した262人のうち、154人が行為者への抗議や周囲への相談など何らかの対応を取ったが、67人は状況が何も変わらなかったと答えた。対応しなかった108人は「何をしても解決しない」「職務上不利益が生じる」「職場の人間関係が悪くなる」といった理由が目立った。
被害の解消につながるはずの人事課の介入を希望する割合も14・9%と低い。「調査しても改善しない」「行為者を刺激し報復されないか心配」などの声の多さは、これまでの体制の機能不全を示している。
ハラスメントを防げない温床は杉本氏の問題の再調査にも表れた。44人の職員が被害者から相談を受けたり、セクハラ行為を見聞きしたりしていたが、41人は何も対応しなかった。「知事が行為者だったから」「担当部署が公正に取り扱うか疑問」といった理由から、上の立場の顔色をうかがう風潮が垣間見える。
1日施行の県のハラスメント防止条例は、都道府県単位で初めて知事ら特別職を対象に含め、防止に率先して取り組むと責務を明確化した。管理職が部下から相談を受けた場合に担当部署への速やかな報告を義務付けた。ハラスメントなどの防止策をまとめた推進計画を今後策定する予定で、その実効性が問われる。
体制面では石田知事を本部長とするコンプライアンス推進本部を設置し、実務の中核となるコンプライアンス推進課と、外部有識者による助言機関を設けた。仕組みを整えるだけでは県民の信頼を取り戻せない。定期的な職員アンケートの結果などで、組織風土が変わったと目に見える形で示すことが不可欠だ。
