キャンペーンのメインとなるのが薬師寺だ。観光客が集中する近鉄奈良駅から少し離れた西ノ京町に位置しているが、近鉄橿原線の西ノ京駅から徒歩で数分というか、ホンの1分程度の距離感。現在の境内は駅の東側にあるが西側からも遺構が見つかっているそうで、駅の立地自体が当時の境内にあるようなイメージなのだ。

 近鉄奈良駅からは大和西大寺駅で乗り換えが必要ではあるものの、10分程度でアクセスできるのはなんともうれしいところ。ただ、駅から近いのは北側の與楽(ようらく)門だが、正門といえるのは逆側の南門。ちょっと回り道になるけれど、駅の西出口を出て一般道に迂回して南側からスタートしたいところ。

 そのほか、奈良交通の路線バスでのアクセスも可能だ。97または98系統なら薬師寺駐車場バス停で南側に、77系統なら西ノ京駅バス停で鉄道と同じ北側に降りることができる。奈良市内から薬師寺までカバーする「奈良公園・西ノ京世界遺産1-Day Pass」(600円)が用意されているから平城宮跡や春日大社、ならまちなども楽しみたいならバス利用もアリだろう。

 なお、伽藍には撮影不可の場所が数多くあるが、今回は許可をいただいて撮影して掲載している。

薬師寺

所在地: 奈良県奈良市西ノ京町457
拝観料(個人): 大人1000円、中高生600円、小学生200円
拝観時間: 9時~17時(最終受付16時30分)
拝観可能場所: 金堂、大講堂、東院堂
お写経体験(ご納経料): 1巻2000円~

近鉄 西ノ京駅今回のツアーでは奈良交通の特別仕様車、四神シリーズの「玄武」で移動。観光客だけではなく地元の方からの注目度も高かった駅周辺マップ薬師寺伽藍配置年間行事など。今回のツアーは薬師縁日で行なわれる大般若転読法要にあわせて実施された

 さて、まずは薬師寺の歴史を紐解いてみると、天武天皇9年(680年)に皇后、鵜野讃良姫巫女(後の持統天皇)の病気平癒を祈って発願されたのがはじまり。

 藤原京に造営されたのち平城京への遷都とともに現在の地に移った。天平時代には天下の四大寺の1つとされていたものの、多くの堂塔が火災や地震により消失。創建時からの姿を残すのは東塔(とうとう)のみとなっていたが、1976年に100万巻もの「お写経勧進」により金堂を落慶したのをはじまりに西塔(さいとう)、大講堂、食堂(じきどう)と主要な堂塔を復興。白鳳時代の伽藍を現在によみがえらせた、というのがおおまかな流れになる。

 なお、金堂内にある薬師三尊像をはじめとして彫刻や絵画、建築物など国宝や重要文化財が多数保存されているほか、1998年には世界遺産に登録されている。ちなみに法相宗は「西遊記」でおなじみの三蔵法師のモデルとなった玄奘三蔵を鼻祖として「唯識」を教えとしている。

中門前からの眺め大谷徹奘副住職お写経勧進により復元された金堂お写経勧進による伽藍復興を目指した高田好胤和上による「發菩提心 荘厳國土」の文字が刻まれている

 最初に訪れたのは南門。そこから拝観受付を抜けるとすぐに中門があり、それをくぐると正面に金堂、東塔、西塔が姿を見せ、その奥には大講堂が位置する。写真でその空気感やスケール感を表わすのは難しいが、現代の建築物から受ける感覚とは違った歴史の重みが感じられる迫力は圧巻だ。

 そこで待っていてくれたのが大谷徹奘(てつじょう)副住職。年間ほとんどを法話のために全国行脚に充てている名物僧侶だ。大谷副住職はこうした奈良のお寺の特徴ともいえる伽藍配置について、お釈迦様を祀る東西の塔が過去を、薬師三尊像を祀る金堂は現在を、大講堂は未来の人づくりを、と境内で過去から未来までを勉強できるようになっているためだと説明。また「南向き」「(建物内)土足」「金属の仏様」といったところが奈良のお寺の特徴とも教えてくれた。今まで京都、奈良で「古都」とひとくくりにしてしまっていたが、時代背景などでこうした違いがあるのは興味深い。

 金堂の前に建つ灯篭には「發菩提心 荘厳國土」の文字が刻まれている。これは前述した白鳳伽藍の復興を目指した高田好胤和上が精神として残した言葉で「一人一人が清らかな心で生きたならば国全体が美しくなる」というもの。これを受けて大谷副住職は「心の使い方を徹底的に訓練するのが薬師寺というお寺で、その心の使い方をどうしても中国に伝えたかったのが三蔵法師です」と背景を説明。

 また、「薬師寺はお寺にお墓を持たず、お坊さんは一切葬儀に触れません。ご供養のお経はあげるけどお葬儀のお経はしません」「生きている人間がよりよく幸せに生きるためのことだけを勉強するのがこのお寺です」と教えてくれた。そのほかにも多くのお話をしていただいたのだけれども、ここでそれを書いているとそれだけで数回分になってしまうので割愛。より詳しく知りたい場合は、全国で法話会や講座が開かれているのでそちらに参加するといいだろう。スケジュールは公式サイトで確認することが可能だ。

 また、JR東海の「EXサービス」の「EX旅先予約」において、大谷副住職の法話に加え玄奘三蔵院伽藍「大唐西域壁画」を副住職の特別解説付きで見学できるプランが設定されているので、そちらの利用もオススメ。そのほかにも、多くのプランが用意されているので、興味ある向きはJR東海のサイトをチェックしていただきたい。