2026
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2026年1月14日、ドバイに本拠を置く大手暗号資産取引所Bybitは、ラテンアメリカ市場における重要な戦略的マイルストーンを達成したと発表した。同社の決済サービス部門である「Bybit Pay」が、ペルー国内で圧倒的なシェアを持つデジタルウォレット「Yape(ヤペ)」および「Plin(プリン)」との統合を完了したのである。この連携により、ペルーのユーザーは保有する暗号資産を、現地の法定通貨であるヌエボ・ソル(PEN)として、日常生活のあらゆる場面で容易に利用できるようになった。

目次

Yape・Plinとの統合が持つ意味

今回Bybitが接続を果たした「Yape」と「Plin」は、単なる決済アプリではない。ペルーにおいて、これらは銀行口座の代替とも言える社会インフラとしての地位を確立している。 Yapeはペルー最大の銀行であるBCP(Banco de Crédito del Perú)が運営し、PlinはBBVAやInterbank、Scotiabankといった大手銀行連合によって支えられている。これらは露店での買い物からタクシー料金、友人間の送金に至るまで、現金に代わる手段として国民に広く浸透している。

この統合により、Bybitのユーザーは、アプリ内で暗号資産を売却し、その資金を即座にYapeやPlinのアカウントへ転送することが可能となる。これまで、海外の取引所にある資産を現地の生活資金として使うためには、P2P取引や複数の仲介業者を経由する必要があり、手間とコストがかかっていた。Bybitはこのプロセスを劇的に簡素化し、暗号資産と実体経済をシームレスに接続する「オフランプ(換金)」のルートを確立したことになる。

「ラストワンマイル」の解消と金融包摂

Bybitの共同創業者兼CEOであるベン・チョウ氏は、今回の取り組みについて「暗号資産の有用性を高めるためには、現地の実情に合わせた金融ソリューションが必要不可欠である」と述べている。ペルーを含むラテンアメリカ地域では、銀行口座を持たない層(アンバンクト)が多い一方で、スマートフォンの普及率とインフレヘッジとしての暗号資産需要は極めて高い。

同社のセールス・マーケティングディレクター、ジョーン・ハン氏もまた、この提携が「ユーザーにとって最も身近なツールを通じて、デジタル資産の価値を現実世界で解き放つものだ」と強調する。暗号資産を保有していても、それを使える場所がなければ通貨としての機能は果たせない。Bybitは、すでに数百万人のユーザーを抱える現地の支配的なプラットフォームと組むことで、独自に加盟店を開拓するコストをかけることなく、一気に「使える場所」を確保する戦略をとったと言える。

南米市場における競争激化と今後の展望

ラテンアメリカは現在、BinanceやBitget、OKXといったグローバルな取引所が相次いで進出を強化している激戦区である。ブラジルの「Pix」やアルゼンチンの決済網など、各国独自の即時決済システムとの統合が、シェア獲得の鍵となっている。

Bybitによるペルーでの成功は、同社のローカライゼーション戦略が機能していることを証明するものだ。今後、このモデルが近隣諸国にも展開されれば、南米全体で「Bybitで資産を運用し、現地のQRコード決済で生活する」というスタイルが定着する可能性がある。2026年、暗号資産取引所は単なるトレーディングの場から、日常生活の「財布」としての機能を競うフェーズへと完全に移行しつつある。

まとめ

今回のニュースは、南米ペルーにおいて暗号資産が単なる「投資対象」の枠を超え、日常的な「決済手段」として社会インフラに深く組み込まれ始めたことを意味する重要な進展です。世界的な大手取引所であるBybitが、ペルー国内で圧倒的なシェアを誇るデジタルウォレットサービスと直接連携したことで、現地の人々にとって暗号資産を実際の買い物や支払いに使うハードルが劇的に下がることになります。

ペルーでは「Yape」と「Plin」という2つのスマートフォン向け決済アプリが国民の生活に広く浸透しており、銀行口座を持たない層も含めて、多くの人々が屋台での買い物から公共料金の支払いまでこれらを利用しています。今回の連携により、Bybitの独自決済サービスである「Bybit Pay」を利用するユーザーは、自身の取引所口座にあるビットコインやステーブルコインなどの資産を、これらの現地アプリを通じてスムーズに決済に利用できるようになります。つまり、これまでは「取引所で現地通貨に換金し、銀行に出金してからアプリにチャージする」という手間のかかる手順が必要でしたが、今後は保有する暗号資産をよりダイレクトに実社会での支払いに充てることが可能になります。

この動きを分析すると、最大のメリットは新興国における「ステーブルコインの実需」に応えられる点です。自国通貨のインフレ懸念がある地域では、資産を米ドル連動のステーブルコイン(USDTなど)で持ちたいという需要が強くありますが、それを日常生活で使うのは困難でした。今回の仕組みは、資産の保全は暗号資産で行い、使う瞬間だけ現地通貨のネットワークを利用するという、理想的な金融体験を提供します。一方で課題としては、規制当局の反応が挙げられます。国境を越えた資金移動や、銀行システムを介さない価値の移転が活発になることで、マネーロンダリング対策(AML)や本人確認(KYC)について、現地政府からより厳しい基準を求められるリスクがあります。

今後の展望としては、このペルーでの事例が、同様の経済課題を抱える他の南米諸国や新興国への展開モデルとなるかどうかに注目です。もしこの「取引所と現地決済アプリの統合」が成功し普及すれば、クレジットカード網などが未発達な地域において、暗号資産が主要な決済インフラとしての地位を確立する大きな転換点となるでしょう。