【回顧とやま 記者が見た2025】穴場感 観光客つかむ (1)米紙「行くべき52カ所」に富山市

スーツケースを手に富山市ガラス美術館が入るTOYAMAキラリ内を歩く観光客ら

 今月中旬、東京に住む大学時代の友人4人が、富山市に遊びに来た。「世界一美しいスタバ」と呼ばれる「スターバックスコーヒー富山環水公園店」で交流サイト(SNS)を更新したかと思えば、県美術館のシンボル・クマの彫刻の前でパシャリ。見慣れた路面電車まで「レトロでエモい」と写真に残した。1泊2日、シャッターを切る手が休まらなかったようだ。

 1月7日、米紙ニューヨーク・タイムズが世界の旅行先として「2025年に行くべき52カ所」に富山市を選出した。新年早々、寝耳に水だった。街の反応を聞き歩くと、飲食店員の大沢靖子さん(54)は「なんで富山? なにもないちゃ」と首をかしげていた。

 地元の受け止めと裏腹に誘客効果は絶大だった。1〜9月の県内の外国人延べ宿泊者数は24万7910人で前年同期比で1・4倍。藤井裕久市長は「特に欧米からの観光客を目にする機会が増えた」と実感する。

 市ガラス美術館の来館者数は11月末時点で38万6366人。前年同期比で約1・7倍に上る。今月21日、カナダから美術館を訪れた団体職員ジェフリー・トレンブレイさん(39)は「昨日は東京、明日から京都と大阪。富山はお城が目的」と話す。世界的な建築家、隈研吾さんが手がけた空間に「建物のセンスが素晴らしい」と感激していた。

 米紙は選定理由の一つを「混雑を避けながら、文化的な感動や美食を楽しめる」と挙げた。確かに記者の友人(26)も「回転ずしは並んだけど、観光地はゆったり空いている」。人気過ぎない穴場感が、おもてなしに十分な余裕を生み、観光客の心をつかんでいるのかもしれない。

 選出の波に乗った政策も目立った。市は本年度予算でインバウンド(訪日客)対策費に計1億9千万円を盛り込み、観光名所の多言語化やホームページを強化した。大規模に投資しただけに、一過性の盛り上がりで終わらせるわけにはいかない。

 市は次なるキラーコンテンツとして、薬産業を発信する拠点「とやまくすりミュージアム(仮称)」の整備計画を進めている。現に和漢薬の購入や薬製造の体験ができる「池田屋安兵衛商店」の利用者は、10月末時点で7万4472人と、既に昨年を上回る。観光の視点でも「富山のくすり」の需要はありそうだ。

 市を推薦した米国出身のライター、クレイグ・モドさんは9月、市長との対談で「観光客に合わせることはおすすめしない。地域の文化や伝統を高めるのが一番大事」と力説した。背伸びし過ぎず、今ある市の魅力を磨いていく−。観光客の満足だけでなく、市民の誇りが育つ恩恵もある気がする。 (篠崎美香)

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 2025年も残すところ1週間足らず。夏の参院選やクマの大量出没など取材に駆け回った記者たちが印象に残った出来事を振り返る。

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