記事のポイント
TikTokの米国事業移行をめぐる不透明さが続き、広告主の信頼と投資意欲が低下している。
ブランドやエージェンシーはリスク回避のため、TikTok予算をインスタグラムやYouTubeへ再配分しつつある。
AI動画アプリ「ソラ(Sora)」など新興競合の台頭で、TikTokの利用時間と広告価値が下落傾向にある。
TikTokの米国での将来はほぼ安泰と見られているにもかかわらず、広告主の信頼は追随していない。一部のマーケターはDigidayに対し、同プラットフォームへの来年の支出を減らす計画をすでに立てていると非公式に明かした。
広告主が大規模な投資を正当化するには、誰がこのアプリを監督し、どのように運営されるかに関する不確実性がまだ大きすぎる。今後の展開がもっと明らかになるまで、この状況は変わらないだろう。
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TikTok米国版への不安広がる
コレクティブ メジャーズ(Collective Measures)のパフォーマンスメディア担当アソシエイトディレクター、コートニー・ワーピー氏は「たとえTikTokの中核的な機能が維持されたとしても、広告主がプラットフォームに自信を持って巨額の広告費を投じるには、新たな米国版TikTokが精査され、理解される必要がある」と述べた。
いまのところマーケターが把握しているのは、せいぜい曖昧なことだけだ。いくつかの報道によると、TikTokの米国事業は依然としてバイトダンス(ByteDance)が完全に所有しており、広告やeコマースなどの収益事業を引き続き担当するという。一方、米国投資家が過半数を所有する新たな米国拠点の合弁会社がアプリのユーザーデータを管理し、バイトダンスからライセンス供与されたアルゴリズムの再トレーニングを監督する。
ここで疑問が生じる。米国でのアプリ運営を誰が主導するのか、どのように管理されるのか、そしてこの移行がパフォーマンスにどう影響するのかという疑問だ。これまでのところ、TikTokの広報担当者は今後の米国での事業展開については具体的な方針をほとんど明らかにしておらず、むしろ冷静沈着な姿勢を保ちつつ、マーケターに来年の広告費を増やすよう促している。
ジェリーフィッシュ(Jellyfish)のグローバルペイドソーシャル担当エグゼクティブバイスプレジデントのシャムスル・チョウドリー氏が指摘するように、短期的および長期的な影響に対する議論は存在する。しかし、1年でもっとも重要な四半期となる第4四半期を迎えた今、不確実性が残るというのはおそらく最悪のタイミングだ。特に同氏のチームが担当する小売クライアントにとってはなおさらである。同氏は具体的な金額は明らかにしなかったものの、現在TikTokに相当な予算を投じているという。
「短期的には、クライアントはこう考えている。もしこの四半期に新しい米国版TikTokがローンチされた場合、もともとTikTokに割り当てる予定だった予算と同じ額を投入すべきだろうか。おそらくそうすべきではない」とチョウドリー氏は語る。「長期的には、この新しいプラットフォームが現在のTikTokほどのパフォーマンスを発揮しなかった場合、投資を継続したいと思うだろうか。一部の広告主はその結果や価値を見極めようとする。その一方で、もっと保守的になり、実績のあるGoogleやメタ(Meta)のプラットフォームに戻る企業も出てくるだろう」。
予算配分の見直しが進む
AI搭載のインフルエンサーワークフローおよびマネジメントプラットフォーム、エンドレス(Endlss)のCEOであるデビッド・アビー氏も同様の意見だ。同氏の見解では、TikTokが米国限定のエコシステムに分かれるか、新しいアルゴリズムによってコンテンツのパフォーマンスが変化した場合、ブランドもクリエイターも即座に痛手を受けることになるという。
「エンゲージメントや発見性が低下した瞬間、資金は移動する」とアビー氏は語る。「移行する時期にクリエイターのリーチが減少したり、プラットフォームが技術的な混乱に陥ったりすれば、予算は即座にインスタグラムやYouTubeショートへシフトするだろう」。
だからといって、現在TikTokで成果を上げている広告主が投資を継続しないということではない。依然として大きなクエスチョンマークがついているのは、長期的な計画に関してだ。
「2026年にTikTokを中心としたキャンペーンを構築するには、米国版アプリをもっと明確にする必要がある」と話すのは、ベイシステクノロジーズ(Basis Technologies)のクライアント戦略およびインサイト担当パートナー、コリーン・フィールダー氏だ。「同様の注意がインフルエンサーマーケティングにも当てはまる。実際の移行日が近づいたら支出を一時的に停止し、米国ユーザー向けの新しいバージョンが適用される状況を見つつ、慎重に再投入する可能性が高い」。
広告主は緊急時対応計画には精通しているものの、米国版TikTokが現行アプリと同一のパフォーマンスを発揮するという保証がない状況では、どの方針を採るべきか判断が難しい。
ブレインラボ(Brainlabs)の最高製品責任者であるアダム・エドワーズ氏は、過去12カ月間の同エージェンシーのソーシャル広告費の約13%がTikTokに投じられたことを認めたものの、移行によってパフォーマンスが変化した場合、チームは予算を適切に再配分すると述べた。
「完全に撤退するかどうかは難しい。パフォーマンスへの影響が深刻かどうか次第だ」と同氏は語る。「プラットフォームが最終的にリスクが高すぎる場合、情報をもとに段階的に撤退して状況を評価することになるだろう」。
TikTokの米国広告収入
好むと好まざるとにかかわらず、TikTokは最大の市場である米国からの広告収入に依存している。
eマーケター(eMarketer)の2025年9月の予測によると、TikTokの米国広告収入は今年140億3000万ドル(約2兆741億円)に達し、来年は22.3%増の171億7000万ドル(約2兆5383億円)、2027年にはさらに24.8%増の214億3000万ドル(約3兆1680億円)に拡大すると見込まれている。
参考までに、eマーケターによれば2024年のTikTokの全世界広告収入は約264億2000万ドル(約3兆9057億円)だったが、このうち米国広告収入は約47%を占めており、122億9000万ドル(約1兆8169億円)に達した。
同様に、3月にWARCは、今年中に米国での禁止措置が回避されれば、TikTokの米国広告収入は2025年に118億ドル(約1兆7444億円)、2026年には134億ドル(約1兆9810億円)に達すると予測している。
業界の専門家でソーシャルメディアおよびクリエイターエコノミーに詳しいジャスミン・エンバーグ氏(元eマーケター副社長)によれば、特に多国籍ブランドが戦略を分割したり、転換したりせざるを得ない場合、移行期に広告費が減少するのは驚くことではないという。
「新しい[米国版]TikTokが広告主に引き続き同じ成果をもたらすなら、最終的には広告費が追随する可能性が高い」と同氏は述べた。「一部の広告主は、この移行を、実質的に新しいアプリとなる可能性があることで先行者利益を得られるチャンスと捉えるかもしれない。ただし、大手ブランドによる広告費の削減や一時停止を相殺するにはいたらないだろう」。
米国での禁止か米国向けアプリか――TikTokの課題はそれだけではない
法的トラブルが続くなかでも、平静を保ちつつ通常通りの運営を維持する姿勢で成功を収めてきたTikTokだが、まだ新たな課題が控えている。
メタは9月25日、Meta AIアプリ内に「バイブス(Vibes)」というAI動画フィードを急遽リリースし、OpenAIは9月30日、AI生成動画専用の単独アプリであるソラ(Sora)をローンチした。後者は5日足らずで100万ダウンロードを突破、現在は米国とカナダ限定で提供されている招待制アプリにもかかわらず、10月初旬にはAppleのアプリストアで首位を獲得している。
「ソラは米国だけでなくどこにおいてもTikTokにとって脅威となる」と、ニュースレター「インサイド ザ クリエイターエコノミー」の編集長兼CEOのジム・ラウダーバック氏は述べた。「ユーザーがアプリに費やす時間が減るため、TikTokの価値が低下する」。
つまるところ、視聴者数の減少は広告主の関心の低下を意味する。eマーケターが6月に報じたように、米国におけるTikTokの利用時間は、いかなるデバイス経由においても減少傾向にあり、今年は1日平均52分で、前年比で6.9%減少した。2026年には再び50分に減少し、2027年にはさらに48分になると予想されている。ただしeマーケターによれば、今年のインスタグラム(1日あたり35分)やFacebook(1日あたり30分)とくらべると、まだ高い水準にある。
とはいえ、ソラやバイブスがTikTokの主要なライバルになるかどうかはまだわからない。しかし、これらのプラットフォームは、AI生成コンテンツを中心に高いエンゲージメントを生むフィードを構築する方法と、それを収益化する方法の指針を示している。
TikTokは、Digidayのコメント要請には応じなかった。
[原文:TikTok’s ongoing U.S. uncertainty has marketers rethinking next year’s budgets]
Krystal Scanlon(翻訳:Maya Kishida、編集:坂本凪沙)
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