第107回全国高校野球選手権 準決勝   県岐阜商2―4日大三 ( 2025年8月21日    甲子園 )

<県岐阜商・日大三>2回、県岐阜商・横山は同点の右犠飛を放つ(撮影・北條 貴史)
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 県岐阜商(岐阜)は、日大三(西東京)との準決勝に2―4で敗れた。生まれつき左手指のない横山温大外野手(3年)は「7番・右翼」で先発出場し、2回に一時同点となる犠飛を放った。ハンデを背負いながら活躍する姿は反響を呼び、今大会最多の3万7000人の観衆が甲子園に集結。1956年以来69年ぶりの決勝進出を逃し、36年以来89年ぶりの優勝はかなわなかったものの、その奮闘が大きな感動を呼んだ。

 甲子園に愛された横山の大冒険が幕を閉じた。同点の9回、先頭打者として打席へ歩を進めると、球場は温かい拍手に包まれた。「最高の景色でした」。甲子園の最終打席は左飛。準々決勝まで4試合連続安打をマークし、無安打に終わったこの日も0―1の2回無死一、三塁から同点の右犠飛を放った。最後までハンデを感じさせない姿で魅了。「悔いはない。胸を張って家に帰りたいです」。涙を見せず、聖地の土を両手でかき集めた。

 春夏通算4度の優勝を誇る県岐阜商に投手として入学。しかし、自己最速が120キロ前後から伸びず、控えから抜け出せない。1年時の11月6日の夜、鍛治舎巧監督(当時)に意を決してLINEを送った。「僕は投手を続けていてもベンチに入れないと思います。打者として勝負させてください。打者としての方がハンデがあると思いますが、今まで以上に頑張ります」。野手転向が認められ、ひと冬越えた3月のこと。控え組の打撃練習を見ていた前監督が豪快な振りに目を奪われた。「あれ、誰や?」。隣にいたコーチがうれしそうに言った。「横山ですよ」。以後、横山はレギュラー組に加わるようになった。

 生まれつき左手の指がないハンデは、想像を超える努力と創意工夫で乗り越えた。外野守備では右手にはめたグラブを捕球した瞬間に外し右手で投げる。バットは左手で支え、右手一本で振り抜く。横浜との準々決勝では、初回に右翼線への飛球に右腕を伸ばして好捕した。今大会は5安打。活躍するたびにベンチで「明日の朝刊も横山が1面かー」と笑い合った。その懸命なプレーが見る者の心を動かし準決勝に今大会最多観衆が集った。

 「自分のようなハンデのある子に“甲子園に立てるんだぞ”と示してほしいですし、自分みたいな子がいろいろな所で活躍することがとても楽しみです」

 今後は大学で野球を続ける予定だ。今夏の躍進を通して新たな夢も芽生えた。「限界まで高いレベルで野球をしたい。行けるならプロまで頑張りたいです」。甲子園と同じように、これからも野球の神様に見守られている。(河合 洋介)

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