2025年7月 熊本市にある私立高校・開新高校を運営する学校法人「開新学園」において、20年以上経理業務を一任されていた元職員の女性が、
約2億円を横領していた疑いがあることが明らかになりました。発覚のきっかけとなったのは、2025年4月の人事異動後に新たに経理を担当した職員による不審な口座の動きへの気づきでした。
長期にわたる単独管理と監査の回避
開新学園の発表によれば、横領の疑いが持たれているのは50代の女性職員で、1996年に入職し、2003年から2025年3月までの22年間、経理業務を1人で担当していました。
この間、教職員の退職積立金や学校の運営資金が振り込まれる複数の口座から、本人の私的利用目的で現金が引き出されていたとされています。
この女性は「2004年頃から私的に現金を引き出していた」と自ら認めており、すでに依願退職しています。
また、「弁済の意思がある」とも申し出ているということですが、着服したとされる金額は約2億円に達し、被害回復は容易ではないと見られています。
注目すべきは、監査の際に口座間で資金を移動させ、外部監査をすり抜けていたという点です。税理士による定期的な監査にも関わらず、不正が20年以上にわたり見過ごされていたことは、チェック体制の根本的な欠陥を示しています。
発覚の経緯と学園の対応
2025年4月の人事異動により経理担当が交代し、後任職員が口座に不審な動きを確認したことで内部調査が開始されました。
そして6月には不正が明るみに出て、学園は速やかに警察に相談。現在は熊本県警が捜査を進めるとともに、学園側も第三者委員会を設置して真相解明と再発防止策の検討を進めています。
開新学園の甲斐達也理事長は、記者会見で「チェック機能が全く働いていなかった。多大なるご心配とご迷惑をおかけし、深くお詫び申し上げます。信頼回復のため、原因の究明と再発防止に努めます」と謝罪しました。
教訓:学校法人のガバナンスと内部統制の重要性
今回の事件は、個人による長期的な業務の独占と、それを許容してきた組織的な体制の脆弱さを浮き彫りにしました。とくに学校法人など公益性の高い組織では、外部監査や内部統制に過信するだけでなく、実態に即したリスク評価と業務の分掌、そして情報の可視化が重要です。
経理における内部牽制体制(ダブルチェック)の不在や、IT化の不徹底も背景にあると考えられます。経理業務の自動化、操作ログの可視化、役割分担の明確化など、情報システム部門が支援可能な領域も多いはずです。本件は単なる個人の不正ではなく、組織としての経理管理や内部統制の在り方そのものが問われる事案です。学校法人、社会福祉法人、医療法人など「非営利法人」とされる組織においても、情報セキュリティやシステム監査の知見を活用した仕組み作りが求められています。
参照
https://www3.nhk.or.jp/lnews/kumamoto/20250718/5000025781.html
https://www.yomiuri.co.jp/national/20250719-OYT1T50041/
https://news.yahoo.co.jp/articles/599578e944c0468437eaf43ea2550dd744d44267
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投稿者:三村
セキュリティ対策Labのダークウェブの調査から執筆まで対応しています。
セキュリティ製品を販売する上場企業でSOC(セキュリティオペレーションセンター)や脆弱性の営業8年、その後一念発起しシステムエンジニアに転職。MDMや人事系のSaaS開発を行う。
