ロシアのプーチン大統領がウクライナへの本格的な侵攻を開始して間もなく、戦闘用ドローン(無人機)の不足という差し迫った課題に対処するため、ロシアの無名企業が中国企業との連携を図る計画を立てていた。

    ブルームバーグは、ロシア政府から資金提供を受けているアエロHITの社内文書を検証した。ロシア政府関係者とのやり取りなども含まれているこれらの文書は、プーチン政権が中国政府との友好関係を利用して西側の制裁を回避し、ウクライナを攻撃するドローンの製造に必要な技術や能力をいかにして手にしたのかが示されている。

Work Of The Mobile Group Of Anti-Aircraft Warfare In Kyiv Oblast

ウクライナの防空即応部隊、キーウ州でロシアの無人機を追跡(2024年)

Photographer: Zinchenko/Global Images Ukraine/Getty Images

  ロシアがウクライナで始めた戦争を巡り、中国の習近平指導部はいずれの側にも武器を供給していないと主張。

  だが、センシティブな技術が中国からロシアへと移転している実態がこれらの文書からは浮かび上がる。ロシアと中国によるこれまで報じられてこなかった防衛技術分野での企業連携の詳細が2022年後半から25年6月までのこうした文書に記されている。

急成長

  アエロHITは、極東ハバロフスクの空港近くにある自社工場で、今年中に月産最大1万機のドローン生産が可能になるとしている。より高度な機種投入に向けた生産拡大も計画している。

  同社は急速に成長。ウクライナ南部ヘルソン州での軍事作戦において、ロシアの主要なドローンサプライヤーの1社となっている。プーチン氏は戦争終結に向けた合意には、同州全域をロシアの支配下に置くことが不可欠だとしている。

  アエロHITの製品には、一人称視点(FPV)ドローン「Veles」が含まれている。操縦者が画面や仮想現実(VR)ゴーグルを通じて機体搭載カメラの映像をリアルタイムで確認できるFPVドローンは、戦争の両陣営にとって極めて重要な兵器となっている。

  複数の報道によれば、ロシアはこれを用いてヘルソン市の民間人を意図的に追跡しているという。ウクライナは同市を22年後半に奪還した。

Ukraine's President Volodymyr Zelenskiy Visits Site of Russian Strike in Kyiv

ウクライナのゼレンスキー大統領(4月25日)

Photographer: Andrew Kravchenko/Bloomberg

  FPVドローンの価格は仕様によって数百ドルから数千ドルまで幅がある。ブルームバーグが確認した24年3月の購入オーダーによると、Veles100機の発注価格は総額800万ルーブル(現在の為替レートで約1500万円)、1機当たり約15万円だった。

  米財務省は24年6月、アエロHITを制裁対象に指定し、Velesドローンが「ヘルソンに拠点を置くロシア軍によってウクライナの標的に対して使用された」と指摘した。

  アエロHITは取材および詳細な質問に対し回答しなかった。 

    同社は25年6月16日付の書簡で、ロシア国防省の学際研究・特別プロジェクト部門の責任者に対し、中国の大手ドローンメーカー、オーテル・ロボティクスの「EVO Max 4T」ドローンの生産をローカライズするための資金支援を要請。この書簡には、71億ルーブルの投資計画と2年4カ月分の納入スケジュール方針が記載されている。ロシア国防省はコメント要請に応じなかった。

ハルビン工業大学

  アエロHITは23年前半からオーテルのエンジニアと協力関係を築いており、制裁の影響で一時中断したものの、24年末ごろには再び連絡を取り合い、25年5月からドローン生産のローカライズに向けた交渉をしていることが書簡で示されている。

  書簡にはEVO Max 4Tが民間用に設計されたものの、電子戦に強い無線モジュールなどの特性により戦闘で高い効果を発揮しているとの説明がなされ、最大で年3万台を生産する計画が描かれている。

IFA 2022 Consumer Electronics Fair

ベルリンの見本市に参加したオーテル(2022年)

Photographer: Adam Berry/Getty Images

  ロシア軍がウクライナ侵攻を開始した22年2月時点で、オーテルはロシア企業との取引や関係を一切否定しており、アエロHITとの協力やEVO Max 4Tの現地生産計画についても認識していないとしている。ロシアとの直接・間接的な取引を同月に全面的に停止し、厳格な社内コンプライアンス(法令順守)を導入したというのがオーテルの言い分だ。

  ブルームバーグが確認した文書によると、23年秋にはロシアのドローン生産拠点であるハバロフスクで中国の部品とテクノロジーを用いたドローンの生産体制を整備するため、ロシア企業「Komax」と中国のハルビン総合保税区およびハバロフスク空港の担当者が開始した。この会社はハバロフスク空港も管理している。

  両国の関係者が生産を目指したドローンは、オーテルやSZ・DJIテクノロジー(深圳大疆創新科技)の製品に似たタイプだったと文書は示している。ロシア国防省や他の政府機関が主要な顧客候補として特定されていた。ロシア企業との協議を巡る問い合わせに対し、ハルビン総合保税区は返答しなかった。

  中国とロシアの関係が一段と進展したのは、23年4月28日-5月3日にロシア代表団が訪中し、ハルビン総合保税区およびハルビン工業大学(HIT)に関連する企業の代表者らと面会した時だった。HITは中国有数の工科大学で、特に宇宙工学や防衛技術の分野で高い評価を受けている。

President Putin's State Visit To China - Day Two

ハルビン工業大学(HIT)を訪れたプーチン氏

Source: Getty Images

  HITは中国人民解放軍の最先端兵器開発に関与しているとして、米政府から懸念を示されており、20年には米商務省から制裁を受けた。HITとロシアとの関係は長年にわたり続いており、プーチン氏は24年5月に中国を公式訪問した際にHITを訪れている。HITはコメント要請に応じなかった。

  両国の関係者はハバロフスクに合弁企業を設立することで合意し、試作として100機のドローンキットがロシアに納入されることになった。ロシア側の文書によると、ロシア代表団はオーテルの本社および深圳のドローン工場も視察したという。

  アエロHITはハバロフスクで登記され、ロシア政府はこのプロジェクトについて毎週報告を受けるよう要請していた。事情に詳しい欧州の当局者によれば、社名はロシア語の「アエロ」と、ハルビン工業大の略称を組み合わせたものだという。ロシアの企業登記記録によると、アエロHITはKomaxが経営権を握っている。

  アエロHITは今年1月、中国人民解放軍との関係を指摘する米国の主張を否定するコメントを発表。オーテルは「民生用ドローンを専門とするハイテク企業で、防衛関連企業でも軍へのサプライヤーでもなく、軍事関連の資格も一切有していない」と反論した。

  中国政府は軍事転用可能なドローンのようなデュアルユース(軍民両用)製品の輸出を管理していると繰り返し表明している。ただ、一部の中国企業がロシア企業と取引を続けていることについて、中国政府がどの程度把握しているかは、今回検証した文書では分かっていない。中国外務省は取材要請に応じなかった。

Russia Dropped Guided Aerial Bomb On Kherson

ヘルソンでロシアの空爆により住宅や車両が破壊された(2月2日)

Photographer: Ivan Antypenko/Suspilne Ukraine/JSC “UA:PBC”/Getty Images

 

原題:Russian Drone Documents Draw Line From China to Ukraine’s Skies (抜粋)

 

(中国側の動きなどを追加して更新します)

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