ASMLホールディング、SAP、ミストラルAIなどの欧州企業が、欧州連合(EU)の人工知能(AI)規則について、欧州のAI分野の国際競争力を損なう恐れがあるとして、施行の延期を求めている。
EUの執行機関、欧州委員会のフォンデアライエン委員長宛ての書簡で、企業らは最も強力なAIモデルに適用される規制の実施延期と、「イノベーションに配慮した規制アプローチ」を求めた。書簡には110以上の企業・団体が署名している。「延期と、スピードよりも規制の質を優先するという明確な姿勢は、世界中のイノベーターや投資家に対し、欧州が簡素化と競争力強化に本気で取り組んでいるという強いメッセージになる」と訴えている。
署名企業には、エアバス、メルセデス・ベンツグループ、BNPパリバ、ルフトハンザドイツ航空、ピュブリシス・グループ、プロサス、シーメンス・エナジーなどが含まれる。
企業側はAI規則について、欧州委員会が必要な指針や基準、特に高度なAI企業が規制に適合するための手引きである「行動規範」を未だに提示していないことに不満を示している。行動規範の策定は当初5月予定だったが、遅れている上に、内容にも批判が集まっている。
テック企業は、この行動規範案がAI法の範囲を逸脱し、独自に過度なルールを課していると指摘している。米国政府も4月、欧州委員会と複数のEU加盟国に書簡を送り、現行の行動規範案を撤回するよう求めた。
こうした遅れにより、AI法の施行自体がさらに先送りされる懸念も出ている。EUのAI規則は段階的に施行されており、「ChatGPT(チャットGPT)」のような高度AIモデル向けの規制は8月に施行予定だ。だが、7月時点でもなお、開発者や学識者、デジタル権利活動家からなる作業部会が、詳細なガイドラインの策定に取り組んでいる。
EUのAI規則は、技術の悪用防止を目的に昨年可決された。AI開発企業は、モデルの学習方法や著作権への配慮などに関する情報の提供を求められ、高度なモデルにはリスク緩和、安全性強化、アーキテクチャ情報の報告など、さらなる義務が課される。また、公共空間でのリアルタイム人物識別のような特定用途には、制限が設けられる。
原題:ASML, SAP, Mistral Ask EU to Delay Start of AI Act Rules(抜粋)
