広島県は、2024年、DXの推進と地域の課題解決に取り組むため、県内の14市町とスタートアップをマッチングする「The Meet 広島オープンアクセラレーター Gov-Tech-Challenge2024」を開催した。広島県内の自治体が抱える地域課題や、住民サービス・行政事務に関する課題を解決すべく、革新的なアイデアや技術を持ったスタートアップとの協業を支援している。本記事では、2024年度の成果発表会で語られた内容をお届けする。

【共創事例 25】庄原市×forent「庄原の自然と『あなた』の旅を!」

スピーカー

forent株式会社 代表取締役 塚崎浩平

弊社は「JTI(JAPAN TRAVEL ITINERARY)」(URL:https://japan-travel-itinerary.jp/)という生成AIを活用したインバウンド向けの旅行計画作成サービスや、キャンプ場の予約やキャンプ場開発支援を行う「ExCAMP」(URL:https://excamp.jp/)、地域周遊を促すゲーミフィケーションアプリ「クエスティバル」(URL:https://forent.co.jp/Questival/)を運営している会社です。

今回はAIの旅程表を作るJTIのシステム基盤を庄原市に最適化し、そこにキャンプ事業を掛け合わせた提案をさせてもらいました。

JTIは、趣味嗜好を入力するとその人に最適化された旅行プランが表示され、レストランやアクティビティ、宿泊施設を含めた予約まで完了できるシステムです。現在は庄原市のDMOと協力しながら、AIチャットを基にした個別最適化されたプランの企画や移動手段のレコメンド、ユーザー満足度向上を目指して開発しています。

具体的には、庄原市の観光資源や自然体験、宿泊施設、食事処、移動手段(レンタカー・バス等)を含めて、ユーザーの趣味嗜好に応じた最適な旅行プランをAIチャット上で自動提案する仕組みを構築中です。

さらに、庄原市内のキャンプ場やコテージなどと連携し、旅行プランの中に自然体験を組み込んだ滞在の提案を進めています。四季折々の風景やアウトドアアクティビティなど、庄原の魅力を活かした宿泊・体験コンテンツの拡充にも取り組んでいます。
「今日の天気は?」「桜は咲いていますか?」「近くでBBQできる場所は?」といった観光客からの問い合わせにリアルタイムで応答できる観光情報チャットボット(LINE対応)の開発も進行中です。旅程表と連携した情報提供により、現地での行動判断や体験の質を高めることを目指しています。

また、弊社には月間約200万回再生されるインバウンドのSNSアカウントや、認知度の高いキャンプ関連のアカウントを保有しているので、これを活用して送客支援もしながら実証実験を進めます。まずは自然愛好家にサービスを提案し、最終的にはインバウンド客も取り込めたらいいなと考えています。

<協業スタートアップ>
forent株式会社
代表:塚﨑浩平
設立:2018年
所在:茨城県つくば市
事業内容:「新たなアウトドアフィールドを創造し続ける」というミッションのもと、AIを活用した旅行体験の最適化と地域資源の活用を組み合わせた事業を展開しています。
生成AIによる旅行プラン作成サービス「JTI(Japan Travel Itinerary)」では、ユーザーの趣味嗜好に応じて個別最適化した旅程表をAIチャット上で提案・予約まで一括で完結できる仕組みを構築しています。
加えて、訪日外国人向けのPR事業にも注力しており、日本の魅力を国外に発信することで、観光地の認知拡大と総客支援を一体的に推進しています。
さらに、遊休地をキャンプサイトとして利活用できるプラットフォーム「ExCAMP」や、キャンプ・アウトドア施設の造成支援などを通じて、地域の特性を最大限に活かした持続可能な観光・体験の場を創出しています。

【共創事例 26】府中町×PlanDo「デジタルマップを活用したスタンプラリー・プロモーション」

スピーカー

PlanDo 代表 帆巻俊之

私は府中町で生まれ育ち、府中町を愛する企画プランナーです。府中町で創業して3年が経ち、企業・行政などを対象とした企画プランニングや、販売促進・広告・イベントなどの広告代理業務、Webや動画などのコンテンツ制作、サービス・システムなどの企画開発・販売支援を行っています。

府中町の課題は、観光資源やPR素材を活用した効果的な魅力発信ができていないことでした。そこで、情報コンテンツの有効活用を目指した府中町のDX・デジタル施策の推進と、魅力を効果的に発信することで来町者増加を目指しました。

具体的には、デジタルマップを導入し、その認知と利用拡大を目指したデジタルスタンプラリーを展開しています。これまでに蓄積された観光情報をベースに、デジタルマップを構築し、そこにスタンプラリーを連携させました。

スタンプラリーはイベント概要や特典情報、スポット情報、ルート案内、電子スタンプ台紙などわかりやすく使いやすい画面を用意し、スタンプが3個以上貯まるとアンケートに回答し、特典への応募ができるという仕組みです。

デジタルマップとスタンプラリーの利用促進を図るため、府中町の公式サイトやSNS、広報誌、チラシからPRサイトに誘導する仕組みを構築しました。さらにPR用チラシを15,000部制作し、府中町内の施設はもちろん、町外の広島駅や平和公園、イオンモール広島府中などに設置いただいたり、町内会の回覧板や掲示板にも掲示したりと府中町総出の広報活動が実現しています。

利用状況は公開後約1ヶ月間で、デジタルマップの利用者は約2500人、閲覧数は約7000PV、スポットPV数は約1万となりました。デジタルスタンプラリーは実施2カ月間で4000人以上が利用し、イベントへのエントリー数は538人、特典応募件数は240件となりました。

今回の協業はとても短納期かつボリュームが多かったにもかかわらず、高品質の仕組みを導入でき、府中町が持っていた資源を有効活用できたと感じています。今後も、府中町と連携して登録情報を増やしつつ、利用状況等をリアルタイムで把握しながら、利用促進と利便性の向上を図りたいと考えています。

<協業スタートアップ>
Plan Do
代表:帆巻俊之
設立:2021年12月
所在:広島県安芸郡
事業内容:企業・行政などを対象とした企画プランニングや、販売促進・広告・イベントなどの広告代理業務、Webや動画などのコンテンツ制作、サービス・システムなどの企画開発・販売支援を行っています。

【共創事例 27】江田島市×パブリックテクノロジーズ「江田島市における『助け合い交通』の推進」

スピーカー

株式会社パブリックテクノロジーズ 宇井美佳

弊社はテクノロジーを活用して自治体業務の効率化や公共サービスの質の向上を目指す会社です。

現在の日本の公共交通は、多くの乗合バスや地域鉄道事業者が赤字であり、高齢者等の移動手段の不足が懸念される状況にあります。人口減少に伴う需要減に直面している上に、担い手の不足と高齢化によってサービス拡充が困難になっているのです。

江田島市においてもバスの路線や便数が限られていることから、自家用車が重要な交通手段になっている一方で、高齢化によって免許返納者の急増が予想されています。さらに、島の陸路と航路をつなぐアクセスにも課題があり、改善が求められていました。

そこで弊社は、地域の住民がドライバーとなり、乗り合わせを活性化することで、移動難民をゼロにすることを目指す「助け合い交通」を提案しました。助け合い交通とは、自家用車を所有しドライバー登録した市民と、移動手段を必要としている市民を、AI配車システムでマッチングする仕組みです。

実証実験では、離島を除く江田島市全域で、6月から2ヶ月間を目安にトライアル運行を実施します。地域団体と協力し、弊社と江田島市、ドライバー、住民の全てが一丸となって乗り合わせの促進と効率化を図りたいと考えています。また、今後の本格導入に際して、ドライバー採用や講習会サポートを実施し、助け合い交通による生活の質の向上を目指します。

<協業スタートアップ>
株式会社パブリックテクノロジーズ
代表:青木大和
設立:2020年
所在:東京都中央区
事業内容:GovTech事業の運営

【共創事例 28】福山市×デナリパム「地域課題を解決するための未来型コミュニティハブ実現に向けた共創」

スピーカー

株式会社デナリパム 代表 井本直正

弊社は「あなたの想いを技術でカタチにします!」をスローガンに、AIやロボット、IoT、5Gなどさまざまな先端技術を活用してビジネスをサポートしている会社です。研究開発を中心に手掛けており、開発した技術を企業や自治体、学校法人に提供し、さまざまなDX推進を図っています。

広島県福山市のまちづくり推進課には、交流館を未来型コミュニティハブへ変革したいという課題がありました。交流館は福山市に93館あり、2023年度の利用件数は約8万件、利用人数は約83万7000人という実績があります。

そこで、福山市の交流館を未来型コミュニティハブにすべく、地域の人が先端技術を使って学び、交流する場にすることを提案。ターゲットは地域住民、特に学生や若者、技術に興味のある人で、技術を体験したり身につけたりすることをメインの目的とします。

ロードマップは3ステップあり、まずは技術を知り体験する「インプット講座」を実施して、新しいことへの興味を深めます。次に、実際に手を動かしながら技術を習得する「基礎編講座」、最後に技術を実践する「応用編講座」を実施して、実践内容や成果を発表する場を設けたいと考えています。

ただ、唐突に「交流館で先端技術を学びませんか」と呼びかけても、きっと思うように集客はできません。そこで、2025年3月2日に開催された「ふくやま東部文化フェスタ2025」に参加して「先端技術に触れてみよう!」というブースを設置し、自由に先端技術を体験してもらう場を作ることに。それを最初のステップである「インプット講座」として実証実験を始めました。

当日は、AIを使った指先だけで弾けるピアノの体験や、メタバース・VRを使った仮想空間の体験、ARを使った拡張現象の体験を提供しました。結果、約150名に参加いただき、8割を超える参加者から「デジタル技術を学ぶワークショップに参加したい」というアンケート結果を得られました。

この結果を参考に、今後も福山市まちづくり推進課との協議を続けることで、交流館を先進技術が学べて交流ができる場へと進化させたいと考えています。

<協業スタートアップ>
株式会社デナリパム
代表:井本直正
設立:2014年
所在:大阪府大阪市
事業内容:AI・ロボット・IoT・5Gなどを活用して、DX企画・開発支援や研究開発、スタートアップ支援などさまざまなビジネスサポートを行っています。

【共創事例 29】三次市×スペースシフト&インフォマティクス「災害情報やデータを一元管理・活用することで、発災時・発災後の業務を効率化する『災害DXプラットフォーム』」

スピーカー

株式会社スペースシフト 糸井紀貴
株式会社インフォマティクス 福島健

糸井 スペースシフトは宇宙関連のスタートアップで、地球観測衛星データの解析を強みとし、大規模災害や土砂崩落被害、洪水被害の可視化を得意としています。インフォマティクスは地理空間情報サービスの開発や提供をしている会社で、多くの自治体でハザードマップ作成システムや対策本部支援システムなどの防災ソリューションの導入実績があります。

今回は三次市とスペースシフト、インフォマティクスそれぞれの強みを生かした災害DXプラットフォームを開発することになりました。災害情報やデータを一元管理・活用することで、安心安全な社会、復旧力向上、庁内業務の効率化、組織間連携の実現を目指します。

現在、日本国内では災害が甚大化・多頻度化しており、三次市でも令和3年8月豪雨で河川が氾濫し、大規模な被害が発生しました。その際に浮き彫りとなった課題は、情報収集や共有をよりスピーディにすることで初動対応を早くすることや、各部門の連携をよりスムーズにして迅速な意思決定をすること、被害データは紙ベースの保管ではなくデジタル化する必要があることでした。

これらの課題解決のために開発しているのが、住民からの通報や国・県の防災情報、衛星データなどを収集してデジタル地図に紐付け、災害対策本部や現地調査などで活用する災害DXプラットフォームです。平時でも住民の要望やインフラ維持に関する問い合わせで気軽に使えるようにすることで、実際に災害が発生したときスムーズに運用ができる状態を目指しています。

福島 このシステムのポイントは、デジタル地図上に災害状況を重ね合わせて表示し、俯瞰的かつ迅速に状況把握ができることです。また災害状況を可視化できるダッシュボードを開発し、災害発生時に現地調査の情報を瞬時に災害対策本部と共有できるようにしています。

糸井 令和6年度は必要最小限の機能を実装したプロトタイプを開発し、令和7年度に平時・発災時での実証をしながら、機能拡張の可能性を検討し、令和8年度からの本番サービスを三次市様で開始できるよう準備を進めています。本取り組みを通して災害に強い街づくりに貢献すると同時に、防災先進都市としての三次市を全国に発信できたらと考えています。

<協業スタートアップ>
株式会社スペースシフト
代表:金本成生
設立:2009年
所在:東京都千代田区
事業内容:衛星データ解析システム開発、衛星データ解析業務、宇宙事業関連の各種調査・コンサルティング​を展開しています。

株式会社インフォマティクス
代表:齊藤大地
設立:1981年
所在:神奈川県川崎市
事業内容:GIS(地理情報システム)、XR、AI機械学習などの技術を活用し、お客様の業務課題の解決や新たな価値創出を支援するITソリューション企業です。

【共創事例 30】三次市×はんぽさき「三次市における除雪業務の効率化と今後の発展について」

スピーカー

株式会社はんぽさき 代表 小林俊仁

弊社は地域情報の共有化にまつわる社会課題を解く会社として2020年に創業しました。昨今、さまざまな地図アプリが登場していますが、それではなかなか使えないという課題を持つ業界は多々あります。たとえばチームで使う設備管理や林業、特殊な地図を使う現地調査や訪問、圏外で使う運輸や災害対策などが挙げられます。

こういった業界では現状でもホワイトボードや紙のメモなどが使われており、地図の取り回しが悪い、情報の蓄積・管理に手間がかかる、状況把握に時間がかかり意思決定が遅れる、コストがかかるといった課題があります。これらの課題を解決するために、チームで使う共有地図「LivMap(リブマップ)」を開発しました。

これにより、チーム内の地点伝達や情報共有・蓄積を簡単にでき、独自データを含めた地図データをスマホで持ち運びできるようになります。写真やテキストでのリアルタイムの情報共有や作業進捗、自身やチームの位置情報をいつでもどこでも確認できるため、林業やレンタカー、自治体などさまざまな業界で導入いただいています。

ポイントは、非常に汎用的なツールであること。道路管理システムや災害システムにそれぞれコストをかけて専用ツールを導入するのではなく、リブマップは防災や林業、都市計画など異なる用途で使いたい地図を大量に搭載できるため、圧倒的な低コスト化が実現します。

今回三次市では、除雪に対する問い合わせが大量で対応が追いつかない、該当地域の確認作業が手間、除雪事業者に対する指示が電話やFAXで手間がかかる、稼働時間の証跡担保に余計な労力がかかる、紙の保管が大変といった課題がありました。そこでリブマップを活用いただいてこれらの課題を全て解決し、雪の降らない季節では災害対応や道路管理などにも活用いただくことになりました。

このアプリは能登半島地震や令和6年台風10号などで活用されている実績があるので、広島県でも広く自治体や事業者に活用いただきたいと考えています。

<協業スタートアップ>
株式会社はんぽさき
代表:小林俊仁
設立:2020年
所在:東京都港区
事業内容:GIS (地理情報システム) およびソフトウェア技術を用いた業務課題・産業課題の解決や、既存産業のDX支援、ソフトウェア開発に関するコンサルティングを行っています。チームが地図上でさまざまな情報を管理・共有化するアプリ「LivMap (リブマップ)」と漁業者向けに開発された船舶ナビゲーションアプリ「umico (ウミコ) 」を提供しています。

編集後記:

全4回にわたりお届けしてきた「The Meet 広島オープンアクセラレーター2024」成果発表会では、広島県内14の市町とスタートアップによる共創事例を紹介してきました。自治体が抱える課題に対し、先進技術やユニークな発想をもつスタートアップと手を組むことで、地域に新たな価値を生み出していることが印象的でした。防災や観光、交通、行政業務など多様なテーマに対して、デジタル技術を起点にした取り組みが加速しており、まさに「実装」フェーズに入った地方創生の今が垣間見えたのではないでしょうか。全国の自治体・企業にとっても、本事例が新たな連携のヒントとなれば幸いです。これからも、地域課題解決に挑む現場のリアルを伝えてまいります。

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