インド、ネパール、バングラデシュ……、日本で出会うことが多いインド亜大陸出身の人たち。日本では普段、どんな食事をし、どんな暮らしをしているのでしょうか。インド食器・調理器具の輸入販売業を営む小林真樹さんが身近にある知られざる世界の食文化を紹介します。
ヒンドゥー教徒の名付け文化の今昔
この日の訪問先はインド北西部、ラージャスターン州のトクラという小さな村出身のデオラさん宅。デオラさんは2022年に来日して日本の大学を出た後、都内の大手IT企業で働くエンジニアである。都内在住インド人が多く住む大島四丁目団地に、同じラージャスターン州出身の妻クリシュナさんと生後8カ月になる娘のミリガークシちゃんと三人暮らしをしている。
毎度おなじみインド人が多く住む江東区大島四丁目団地
出迎えてくれたデオラさん一家
ドアを開けて出迎えてくれた時、ミリガークシちゃんの大きな眼が印象的だった。インド人の子どもの眼はクリッとしていることが多い。ミリガークシちゃんもまさにそんな眼で、不思議な闖入者(ちんにゅうしゃ)をじっと見つめるように迎え入れてくれた。
「『ミリガ』というのは鹿、『アークシ』は目を表します。新生児室で初めて彼女を抱き上げた時、この子の目の力がとても印象的だったのでそう名づけました」
デオラさんは娘の名前の由来を説明してくれた。
クリッとした目が印象的なミリガークシちゃん
インドのヒンドゥー教徒が子供の名前を決める場合、パンディットと呼ばれる司祭のところに行き、誕生した時間や場所などを伝える。するとパンディットは古めかしく分厚い対照表を参照しながら誕生星を割り出し、その座標をもとに最もその子にふさわしい名前の最初の一音を決める。例えばミリガークシちゃんの場合は「ミ」である。親たちはそれに従い、その第一音ではじまる名前を考える。
これは今でもインドのヒンドゥー教徒の間で広く見られる名づけ方だが、一方でつける名前の傾向も時代によって変化があるという。
「ミリガークシという名前はちょっと斬新だったかもしれません。伝統的に女神の名前をつけたりする人はまだまだ多いので」
デオラさんたちの出身地であるラージャスターン州はインドの中でもジャイナ教徒やヒンドゥー教徒の多い保守的な地域として知られる。インド国内の州ごとの菜食・非菜食の分布図をみると、インドで最も菜食者が多いのがラージャスターン州なのである(※)。 菜食者がそのままイコール保守的な人々とは限らないが、宗教で定められた規範にしたがって生きている人が多いということは確かだ。
※出典:National Family Health Survey
デオラさんたちの出身地ラージャスターン州
ラージャスターン州のバザール
バザールのにぎやかな人たち
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