オーストラリア健全性規制庁(APRA)は10日、ハイブリッド債と呼ばれる永久劣後債(その他Tier1債=AT1債)について、自己資本組み入れの段階的廃止を金融機関に提案した。

  スイスの銀行UBSグループに救済合併されたクレディ・スイス・グループのAT1債170億ドル(現在の為替レートで約2兆4300億円)相当が無価値となった経緯を踏まえたもので、豪州は自己資本要件でのAT1債利用を規制する最初の管轄区域になる可能性がある。

  銀行破綻・整理に伴う負担を納税者に求めず、債権者が損失を吸収する手段として、世界的な金融危機後に導入されたAT1債は、銀行の自己資本が一定水準を下回ったり、経営危機に陥ったりする場合、元本が削減されたり株式に転換されたりするリスクがある。

  ロンズデールAPRA長官は、AT1債の複雑さや訴訟の可能性、悪影響が波及するリスクを挙げ、ストレス発生時に銀行を安定させる機能を果たさないと主張した。個人投資家によるAT1債保有の割合が「非常に高い」豪州では、そうしたリスクが高いと認識を示した。

  クレディ・スイスのAT1債の価値消滅を受け、スイスや日本で損失を被った投資家らが相次いで訴訟を起こした。

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Key Speakers at the Financial Review Banking Summit

ロンズデールAPRA長官

Photographer: Brent Lewin/Bloomberg

  APRAは発表資料で、「今回の提案は、銀行破綻の際によりシンプルで確実な破綻処理を実行し、危機に直面する金融システムの安定を支援することを目指す。ストレス発生時に預金の安全性への信頼を強化する狙いもある」と説明した。

  豪州の4大銀行は、リスク加重資産の少なくとも1.5%相当のAT1債をそれぞれ保有している。APRA案によれば、国際的に活動する大手銀行の場合、AT1債1.5%を「Tier2」1.25%と、「普通株式等Tier1」0.25%に置き換えることが可能だ。

  よりシンプルな資本枠組みへの移行は2027年1月1日に開始し、32年までに全てのAT1債を入れ替えることを想定する。欧米の複数の金融機関が昨年相次いで破綻、あるいは整理対象になった世界的混乱を教訓に生かしたという。

Hybrid Bonds Recovered From Credit Suisse Wipeout

 

 

  ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のシニア産業アナリスト、マット・イングラム氏は「1.25%のTier2と、0.25%の普通株式等Tier1への資本要件転換を認めるとAPRAが決定したことで、オーストラリア・コモンウェルス銀行とウエストパック銀行、ナショナルオーストラリア銀行(NAB)、ANZはAT1債の合計発行残高約390億豪ドル(約3兆7200億円)について、10億豪ドル近い金利節約が可能ではないか」と指摘した。

原題:Australia to Scrap AT1 Bonds After Credit Suisse Wipeout (2)、APRA Proposes Banks Phase Out Use of AT1 Capital Instruments(抜粋)

(豪州の4大銀行への影響などを追加して更新します)

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