ブラジル環境・気候変動大臣マリナ・シルバさん
ブラジルのマリナ・シルバ環境(かんきょう)・気候変動(きこうへんどう)大臣(だいじん)(67)が、毎日新聞(まいにちしんぶん)のインタビューに応(おう)じました=写真(しゃしん)。主(おも)な一問一答(いちもんいっとう)を紹介(しょうかい)します。【聞(き)き手(て)・田中(たなか)泰義(やすよし)、大野(おおの)友嘉(ゆか)子(こ)】
――1992年(ねん)、ブラジルで「地球(ちきゅう)サミット」が開(ひら)かれました。あれから33年(ねん)、11月(がつ)にブラジルで国際連合(こくさいれんごう)気候変動枠組(きこうへんどうわくぐ)み条約(じょうやく)第(だい)30回(かい)締約国(ていやくこく)会議(かいぎ)(COP(コップ)30)が開(ひら)かれます。どのような合意(ごうい)を目指(めざ)しますか?
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◆国際社会(こくさいしゃかい)はこの約(やく)30年(ねん)間(かん)議論(ぎろん)を重(かさ)ね、さまざまなルールを作(つく)ってきました。しかし、最大(さいだい)の挑戦(ちょうせん)はまさにこれからです。決(き)められたルールや約束(やくそく)をどう実行(じっこう)に移(うつ)すかが重要(じゅうよう)です。
世界(せかい)の気温(きおん)上昇(じょうしょう)を産業革命(さんぎょうかくめい)前(まえ)と比(くら)べ1・5度(ど)に抑(おさ)える国際(こくさい)目標(もくひょう)を達成(たっせい)するには、各国(かっこく)が大胆(だいたん)な取(と)り組(く)みをしていかなければなりません。再生可能(さいせいかのう)エネルギーを増(ふ)やし、エネルギーの利用(りよう)効率(こうりつ)を高(たか)め、化石燃料(かせきねんりょう)をなくしていく。この三(みっ)つの決定(けってい)を実現(じつげん)するための道(みち)を示(しめ)すロードマップが重要(じゅうよう)です。道(みち)はとても険(けわ)しく、複雑(ふくざつ)であることは理解(りかい)しています。しかし、だからこそ多国間(たこくかん)協力(きょうりょく)が一層(いっそう)重要(じゅうよう)になると考(かんが)えています。
――ブラジルや中国(ちゅうごく)、インドなどの国々(くにぐに)に、気候変動(きこうへんどう)対策(たいさく)で先進国(せんしんこく)並(な)みの貢献(こうけん)を期待(きたい)する声(こえ)があります。
◆歴史的(れきしてき)に二酸化炭素(にさんかたんそ)(CO2)を多(おお)く排出(はいしゅつ)してきた先進国(せんしんこく)が、まずは導(みちび)く形(かたち)になると思(おも)います。弱(よわ)い国々(くにぐに)への資金(しきん)支援(しえん)も含(ふく)めてです。しかし、ブラジルのような中(ちゅう)所得(しょとく)国(こく)の役割(やくわり)も認識(にんしき)しています。既(すで)にブラジルは、電力(でんりょく)の約(やく)8割(わり)が再生可能(さいせいかのう)エネルギーによるものですし、森林破壊(しんりんはかい)の実質(じっしつ)ゼロという挑戦(ちょうせん)的(てき)な目標(もくひょう)も掲(かか)げています。日本(にっぽん)やインド、中国(ちゅうごく)といった脱(だつ)炭素(たんそ)に困難(こんなん)を抱(かか)える国(くに)にバイオ燃料(ねんりょう)を提供(ていきょう)するなど、他国(たこく)への貢献(こうけん)も可能(かのう)です。
――各国(かっこく)の温室効果(おんしつこうか)ガス削減(さくげん)目標(もくひょう)をどう評価(ひょうか)しますか?
◆きちんと評価(ひょうか)したいのは1・5度(ど)目標(もくひょう)を達成(たっせい)できるかで、私(わたし)の印象(いんしょう)では各国(かっこく)の目標(もくひょう)は不十分(ふじゅうぶん)です。さらに大胆(だいたん)な目標(もくひょう)が求(もと)められます。気候変動(きこうへんどう)の影響(えいきょう)は、もはや待(ま)ったなしです。乾燥(かんそう)や熱波(ねっぱ)、水不足(みずぶそく)、強(つよ)い台風(たいふう)といった異常気象(いじょうきしょう)による災害(さいがい)が多発(たはつ)しています。
未来(みらい)あきらめない
――アメリカの「パリ協定(きょうてい)」離脱(りだつ)の影響(えいきょう)を補(おぎな)うには何(なに)が必要(ひつよう)でしょうか?
◆最(もっと)も資金(しきん)や技術(ぎじゅつ)力(りょく)を持(も)つ世界(せかい)2位(い)の排出(はいしゅつ)国(こく)(1位(い)は中国(ちゅうごく))が離脱(りだつ)する影響(えいきょう)は大(おお)きいです。一(ひと)つ目(め)にアメリカ内(ない)の排出削減(はいしゅつさくげん)が滞(とどこお)ること。二(ふた)つ目(め)に、気候(きこう)変動(へんどう)対策(たいさく)に必要(ひつよう)な資金(しきん)の流(なが)れが止(と)まること。三(みっ)つ目(め)に、アメリカに従(したが)う国(くに)や金融機関(きんゆうきかん)が現(あらわ)れることが心配(しんぱい)されます。しかし、だからこそ気候変動(きこうへんどう)外交(がいこう)にしっかり取(と)り組(く)み、アジアの国々(くにぐに)や民間(みんかん)とも連携(れんけい)して克服(こくふく)する必要(ひつよう)があります。
私(わたし)たちの食料(しょくりょう)や生命(せいめい)、若者(わかもの)の未来(みらい)をあきらめるわけにはいきません。経済(けいざい)や領土(りょうど)を巡(めぐ)る戦争(せんそう)がある今(いま)こそ、多国間(たこくかん)の協力(きょうりょく)が重要(じゅうよう)です。COP(コップ)30に向(む)けて、より高(たか)い目標(もくひょう)を目指(めざ)す連合体(れんごうたい)を作(つく)ろうと呼(よ)びかけています。
――シルバさんの情熱(じょうねつ)の原点(げんてん)は何(なん)でしょう?
◆私(わたし)はアマゾンの奥地(おくち)の森林(しんりん)で生(う)まれ育(そだ)ちました。文字(もじ)の読(よ)み書(か)きを習(なら)う「識字(しきじ)教育(きょういく)」を初(はじ)めて受(う)けたのは16歳(さい)の時(とき)です。困難(こんなん)な環境(かんきょう)でしたが、同時(どうじ)に豊(ゆた)かな森林(しんりん)がありました。豊(ゆた)かな色彩(しきさい)、におい、美(うつく)しさ。その全(すべ)てに影響(えいきょう)を受(う)けて、生命(せいめい)の強(つよ)さを感(かん)じながら育(そだ)ちました。私(わたし)は「生命(せいめい)」というものにこだわっています。生命(せいめい)を脅威(きょうい)にさらすものに対(たい)して、強(つよ)くありたいのです。
