第一生命経済研レポート

2025.02.19


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内外経済ウォッチ『アジア・新興国~トランプ関税は一旦延期も、メキシコ経済はその前にすでにブレーキ~』(2025年3月号)



西濵 徹



目次






メキシコを巡っては、米トランプ政権が追加関税を課す方針を示し、実体経済への悪影響が懸念されて金融市場では通貨ペソ、株式、債券に売り圧力が掛かる事態に直面した。なお、資金流出の動きは、昨年の大統領選と議会選で左派のMORENA(国民再生運動)が躍進して以降進んだ。その後に発足したシェインバウム政権はバラ撒き色の強い財政政策に加え、エネルギー部門や鉱業部門で国有化を進める国家資本主義色の強い政策を志向するなど、財政状況が急激に悪化することが懸念されたことがある。

他方、同国経済は財輸出の約8割を米国向けが占めるとともに、GDPの3.5%程度を占める移民送金の大宗が米国から流入しており、米国経済の影響を受けやすい。よって、米国経済が堅調な推移をみせていることを追い風に同国経済も拡大が続いているものの、トランプ氏が主張する追加関税の直接的な影響はGDP比7%程度に達する。さらに、シェインバウム政権が米国からの輸入品に同程度の追加関税を課す報復措置に動けば、その影響はGDP比4%弱に達し、財輸入の4割を米国からの輸入が占めるなかで物価に押し上げ圧力が掛かるなど悪影響が広がる。こうした事態を警戒して金融市場においては資金流出圧力が強まり、トランプ関税を前にした『駆け込み』の動きが輸出を押し上げることが期待される一方、資金流出が幅広い経済活動の足かせとなることが懸念された。

図表図表

なお、昨年10-12月の実質GDP成長率はマイナス成長に陥るなど、米トランプ政権の発足を前に景気にブレーキが掛かっている。ここ数年はコロナ禍一巡による経済活動の正常化に加え、商品高も重なりインフレが高止まりしており、中銀は引き締め姿勢を堅持した。しかし、昨年以降はインフレ鈍化が確認されるなかで中銀は一転利下げに舵を切っている。とはいえ、中銀は依然慎重姿勢を維持し、実質金利は高水準で推移するなど市場環境は引き締まり、景気の足を引っ張っている。それはインフレが中銀目標を上回るなか、ペソ安が輸入インフレを招くことを警戒していることが影響している。

米トランプ政権は2月初めに一旦追加関税の発動を決定したが、その後の両首脳による電話協議を経て発動は30日間延長された。シェインバウム政権が密輸の取り締まり強化、中国からの輸入抑制、不法移民対策の強化に動く姿勢を示したことが奏功した模様である。しかし、トランプ氏の動きは見通しが立たず、仮に関税が発動されれば景気に深刻な悪影響が出ることは必至である。政府は今年の経済成長率見通しを+2~3%とする見通しを示しているが、昨年の経済成長率は+1.35%に留まり、今年の経済成長率のゲタが昨年から縮小していることに鑑みれば、極めて楽観的に過ぎる。シェインバウム政権はいよいよ『荒波』と対峙する可能性が高まっていると判断できる。

図表図表



西濵 徹

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