
さまざまな分野での活用に向けて、日本各地で実証が行われているドローン。人口減少や高齢化が進む和歌山県紀の川市でも、ドローンによる課題解決を目指して設立された「紀の川市ドローン社会実装推進コンソーシアム」が中心となり、地域での持続可能性を見据えた利活用を検討しています。事務局として活動するソフトバンクの担当者に、2025年度に行われた実証や、コンソーシアム設立の背景、今後の取り組みについて聞きました。

ソフトバンク株式会社 次世代事業開発本部 事業推進部
南野 洋(みなみの・ひろし)
AIを中核とする次世代社会インフラの構築を推進。防災・物流・点検といった地域課題の解決に向けたドローン活用の先行モデルの実証・事業化に取り組んでいる。
ドローンで災害時の物資輸送や河川・道路の点検。平時活用も可能なユースケースの検証をスタート
「紀の川市ドローン社会実装推進コンソーシアム」は、2025年7月に市とソフトバンクが発起人として設立されました。ドローンの社会実装を段階的かつ着実に進めることを目的として、実証をはじめとした取り組みを推進しています。
南野「紀の川市は、市内を紀の川や貴志川が流れ、中山間地域も抱えています。地域によっては市街地へのアクセスが限られ、豪雨時の河川氾濫や道路崩落、それに伴う孤立化などのリスクが懸念されています。こうした地域特性を踏まえて2025年度は防災訓練と連携した支援物資輸送と、河川やインフラの状況確認を行う巡回航路の検討の2つの実証を設定しました」

ユースケース① 中山間地域へ医薬品や生活物資を輸送

支援物資輸送の実証は、自治体の防災訓練の一環として行われました。災害により特定の地域が孤立したと想定し、遠隔操縦の拠点を「桃山保健福祉センター」に設置し、約1.6km離れた2拠点間を、模擬医薬品を載せたドローンを飛行させます。実際に支援にあたる自治体の職員が参加し、どのような手順で進めるか検証。単なるデモンストレーションではなく、災害対応のシナリオの中でドローンがどう機能するのかを具体的に確かめる実証になりました。


この物資輸送実証では「フェーズフリー」の考え方を重視しました。紀の川市の市街地では買い物や生活サービス拠点の集約が進み、山間部にある鞆渕エリアからのアクセスに課題があります。こうした地域に対して平時から医薬品や生活必需品を運べる仕組みが整えば、日常の利便性向上も期待されます。
南野「ソフトバンクは、ドローンによる訓練の全体の企画とシナリオ設計、自治体と協力企業がスムーズに連携できるよう全体管理を行いました。目指したのは、災害時だけの特別な仕組みではなく、平時にも活用でき、地域で継続的に使い続けられる運用体制の確認です。どんなものを運ぶことができ、自分たちの住む地域でどう役立つのか。そうしたイメージを持ってもらえたことは、社会受容性の向上という面でも大きな意味があったと思います」

当日は60人以上の地域住民が訓練の様子を見学し、ドローンが運ぶ模擬支援物資を確認
ユースケース② 河川や道路の状況確認に有効な巡回航路の設定

河川や道路の巡回航路の実証は、大雨などが発生した際に、河川氾濫や道路崩落状況、またはそのリスクを迅速に把握することを目的に行われました。ソフトバンクは、全体の企画から、ドローン、運行管理システム、効果測定フレームの提供を行うなど、他地域でも進めている実証の知見が生かされています。

実証に先立ち、事前の現地調査と航路策定、試験飛行を経て、当日は高精細カメラを搭載したドローンで、貴志川や真国川周辺などのモニタリング飛行を実施。浸水状況や崩落個所がないか、その危険性がないかなどを確認するためのポイントを、判断可能な画角で撮影することが求められます。想定した飛行ルートに沿って撮影することで、橋梁や河川、道路などの状況確認に必要な情報が取得できたと言います。


南野「実証では3つのルートを飛行し、ドローンが持ち帰ってきた画像は有効な画角かつ十分な画質であることが分かり、将来の巡回運用への手応えがつかめました。一方で課題も見えています。ドローンは飛行高度の制限もあるため、巡回対象の横方向からの映像では把握しにくい場合があります。確認すべき対象に応じて、ルートや画角を丁寧に設計する必要性を再認識しました。今回の実証は “有効な航路” を見極める一歩になったと思います」
コンソーシアムの参画団体と共に、ドローンの実用化に向け一歩ずつ前進
2つの実証を通じて技術的な有効性の手応えが得られた一方で、実際に地域で使い始めるには引き続き整理すべきことが残っていました。
南野「まずは『それぞれの役割を誰が担うのか』という点。ドローンは飛ばせば終わりではなく、物資の調達やドローンへの積み込み、飛行前後の管理や点検、記録など、人の動きを考慮したオペレーション設計が必要です。防災面では24時間365日応対できる体制も求められます。また、自動飛行を一部で取り入れているものの、安全確認や運用判断にも人が関与しています。将来的にはより省人化し、属人的でない形へ進化させていくことも重要です」

南野は、こうした課題を1つずつ解消し、長く地域に根ざして運用するためにコンソーシアムが必要だったと説明します。2025年7月に設立された「紀の川市ドローン社会実装推進コンソーシアム」は、市とソフトバンクが中心となり、地元企業や団体、教育機関など20団体以上が参加。情報交換の場にとどまらず、防災、物流、農業などのテーマごとにワーキンググループを設け、収益性も考慮しながら持続可能な仕組みづくりを進めています。

南野「コンソーシアムでは、地域に深く受け入れられ、平時も有事も使える “準公共サービス” としてのドローン運用モデルを検討しています。ソフトバンクがさまざまな自治体と実証を進めてきた中で、地域課題に活用するには、導入後も地域の中で運用を完結できる形が望ましいと考えるようになりました。地元企業や団体の皆さんが主体となって参加することで、日々の生活に浸透させることができ、雇用の維持にもつながります。同じような課題感を持たれていた紀の川市の岸本健市長に、“ドローン運用の地産地消” の構想に賛同いただき、全面的な協力のもとスタートすることができました。官民連携により地域課題の解決と事業性の両立を探り、将来的には『紀の川市モデル』として全国の先進事例になることを目指しています」

2026年度は各ワーキンググループを中心に、来年度以降の実用化に向けて活動をさらに加速します。ソフトバンクもコンソーシアム全体の推進と技術提供の両面で貢献していくと南野は話します。
さらに、これらの取り組みは、2026年度に「ドローンを活用した『空の地域インフラ』構築プロジェクト」として地域未来交付金に採択されており、国の支援のもとで社会実装に向けた検討が本格化していきます。
南野「例えば河川や道路を巡回するドローン運用では、さまざまな国内メーカーの機体を活用していきたいと考えています。マルチメーカー対応が可能な遠隔操縦の仕組みや、離着陸地点の作業を自動化する機材を開発・導入することで、さらに可能性が広がっていくはずです。
2025年度は技術的な実効性や安全性の確認が中心だったのに対し、2026年度は自治体による運用開始を見据え、運用手順や制度にもフォーカスし、関係者との協力を密にしながら準備を進めていきます」

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(掲載日:2026年5月26日)
文:ソフトバンクニュース編集部
