
欧州初配給の邦画『十字路』活弁付き上映 鎌倉市川喜多映画記念館で研究者トーク 海外制作邦画ポスター展示•関連作品上映も_

海外で日本映画にスポットライトが当たる契機となった黒澤明監督の作品、日本のお家芸・特撮怪獣映画は、海外ではどんなポスターで宣伝されたのか。そして、欧州で初めて配給・公開された映画とは――。
海外制作の邦画ポスター130点の展示、関連作品上映や研究者トークイベントなどを展開するユニーク企画展「シネマティック・ジャパン―世界を魅了した日本映画たち」が、神奈川県の鎌倉市川喜多映画記念館で6月14日まで行われている。
『十字路』展示されているのは、特撮怪獣映画の元祖『ゴジラ』シリーズのスペイン語、ポーランド語などのポスター、黒澤明監督作品の海外制作ポスターなど130点。開催中は専門家によるトークイベントが行われているが、5月9日には、スペイン出身の映画史研究者ダニエル・アギラルが「宣材から見る、世界で注目される邦画の今昔」と題して、海外でのポスター制作状況を多数のエピソードを交えて解説した。
そして、5月30日には、欧州諸国で初めて配給・公開された映画『十字路』(監督・脚本、衣笠貞之助)が上映される。同作の上映自体が非常にまれな上に、今回は活弁、生演奏付きで、往時の雰囲気を追体験できる非常に貴重な機会となる。活動弁士は澤登翠で、湯浅ジョウイチがギターを生演奏する。
1950年公開の黒沢明監督の作品『羅生門』は翌51年のベネチア映画祭で金獅子賞を受賞し、日本映画が国際的に脚光を浴びた。だが、トークの中で、アギラルは、黒澤監督による日本映画ブームよりずっと以前の「無声映画の時代から日本映画は海外で上映されていました」と述べた。そして、1928年に完成した『十字路』売り込みのため、衣笠監督自身がフィルムを持ってドイツに赴いたエピソードを紹介した。
同作はフランス、ドイツなど欧州各国で1929年に配給・公開され好評を得た。つまり欧州で本格的に配給され、高い評価を得た最初の日本映画となった。アギラルさんは「この作品はスペインでも上映された」と言い、おそらく「スペインで初めて」公開された日本映画だった、とも指摘した。
企画展ではかつて西ドイツで制作された『羅生門』のポスターや、『ゴジラ』シリーズのポスターなどが展示されている。アギラルは幼いころから『ゴジラ』をはじめ数多くのジャンルの日本映画を鑑賞し、欧州で制作された日本映画のポスターなどの宣材を収集。1991年に日本へ移り住み、日本の映画『シン・ゴジラ』(2016年)にも出演したという経歴を持つ。
『ゴジラ』は1954年に日本で公開された後、スペインを含む世界各国で大人気となった。スペイン制作のポスターには、日本を意味する「ハポン」の文字はあるが、「ゴジラ」の文字は見当たらない。ポーランド版『ゴジラ対ヘドラ』のポスターは、ゴジラの体の中にヘドラが描き込まれているという凝ったデザインだ。
アギラルは、各国版ポスターに現れたお国ぶりについて説明、近年、そうした面白いポスターが消えつつあるのを残念がった。そんな現状だからこそ、今回の企画展は、そうした日本映画史の知られざる一面を見ることができる貴重なチャンスとなっている。
さて、1960年代にも様々な映画が海外で評価された。1960年の映画『裸の島』(新藤兼人監督)は翌年、モスクワ国際映画祭でグランプリに輝き、世界60か国以上で上映された。広島県三原市の佐木島、宿祢島で撮影が行われた。このため2012年にハリウッド俳優のベニチオ・デル・トロが両島を訪れたほど、両島は国際的に知れ渡った。企画展では同作のポーランド版ポスターが展示されている。同作の上映は6月3,4,6,7日。
時代はくだって1990年代。北海道の小樽などを舞台にした映画『Love Letter』(岩井俊二監督、1995年)は、1999年に韓国で公開されて数多くの観客を動員。そのため韓国人観光客が小樽へ押し寄せる騒ぎとなった。今回の展示には同作の韓国版ポスターを含まれる。同作の上映は6月9、10、12、13日。
企画展観覧料は一般300円、映画鑑賞は展示観覧料込みで一般1300円。5月30日の映画『十字路』の活弁、生演奏付き上映の鑑賞は展示観覧料込みで一般2500円。
概要
[企画展] シネマティック・ジャパン —世界を魅了した日本映画たち
会期:2026年4月4日(土)− 6月14日(日)
企画展観覧料:一般300円、小・中学生150円 ※鎌倉市民は無料(要証明書)
WEB:https://kamakura-kawakita.org/
