サポーター有志でつくる実行委員会が昨年から取り組んでいた、「KUMAMOTO FOR THE NEXT project」。一昨年に製作、発行されたロアッソ熊本20周年記念誌「ricordo」を県内の公立小中学校などへ寄贈、図書室に配架することでクラブの歴史を知り、その歩みを通じて、夢や目標に向かって仲間と力を合わせることの大切さを感じ、次代の熊本を担う大人になってもらうのが狙いだ。

 3月末に宇城市内の小中学校17校分が市役所の担当者へ直接納品されたほか、新年度を迎えて県内の公立小中学校や県立学校、一部私立学校等、受け入れが認められた517校への配布が完了した。

 このプロジェクトを立ち上げたきっかけは、実行委員会の代表を務める堤和夫さんが「若いサポーターから『昔のロアッソはどうだったんですか』と聞かれることが増えた」こと。

「チームが誕生した頃に応援していた子がプロ選手になって大学から入ってくるようになってきて、今後も県内各地で育った子たちが選手やサポーターになる可能性がある。20年近く見てきた立場として、クラブを応援していく次の世代をどうにか育てなくてはいけないと考えた時に、これまでの歩みが詰まった記念誌を県内の多くの子どもたちに見てもらうには、学校の図書館に置いてもらうのがいいと思ったんです」

 さっそく、記念誌購入の費用を集めるべく、昨シーズンのホームゲームでチラシを配ってスタジアムに来場したファン・サポーターに協力を呼びかけ。

「小さい子どもさんから年配の方、障がいを持つ方も協力していただきましたし、活動を知って県外在住のサポーターからも『いま、いくら集まってて、いくら足りないの?』といった問い合わせもありました」(堤さん)。その結果、2回の募金活動で合計42万1,952円が寄せられた。

 ただ、20周年記念誌は1冊4,000円と高額で、概算でも200万円以上の金額が必要になる。そこで、(株)アスリートクラブ熊本を通じて発行元である(株)熊日メディアコムに企画趣旨を伝え、協力を打診。不足分については企画に賛同した同社が現物を提供するに至った。

 スタジアムでの募金の呼びかけから送付先の学校や自治体への連絡、配送まで、一連の作業はサポーター延べ20人ほどが協力したほか、ガソリン代などが高騰する中、配送の一部はクラブのパートナー企業でもある運送業者さんも支援。

「歴史を広く知ってもらうために、本来はクラブがやるべき活動だったかもしれません。でも、堤さんをはじめサポーターの皆さんの発案で始まり、一緒に取り組む形を作っていただきました。クラブだけ、サポーターだけではなく、こうしてチームに関わる皆で力を合わせるのが熊本風であり、ロアッソ風なのかなと思います」と、アスリートクラブ熊本の古賀亮さん。

 また、熊本市職員として令和7年からクラブ内の「ロアッソ熊本をJ1へ」県民運動推進本部に出向、今回、熊本市をはじめ県内各自治体とのやりとりを担当した濱崎稜平さんも、「県内全域の子どもたちにロアッソ熊本の歴史や存在意義を知ってもらい、身近に感じてもらえるきっかけになればありがたい」と話す。

「この活動を思いついた時に考えたのも、『周囲の人たちに言い続けて、実際に行動を起こせば叶うんだよ』ということで、アスリートクラブ熊本さん、熊日メディアコムさんをはじめ、いろんな方に協力していただいた結果、実現できたと思います。1人ではできないことでも力を合わせればできるというのは、そもそもロアッソ熊本というクラブが誕生した背景に通じます。その経緯がこの記念誌に収められているわけで、その歩みを通して、協力すること、信念を持ってやり遂げることの大切さを感じ取ってもらえたらと思いますし、この記念誌を見て、そうしたことを感じ取った子どもたちの中から、将来、選手としてチームに加入したり、サポーターになったり、パートナー企業に入ったりする子がいるかもしれない、そういうサイクルが生まれればいいなという思いも、プロジェクトの名称に込めたんです」(堤さん)

 新年度を迎え、贈呈された各学校の図書室にも、この記念誌が配架されたはず。子どもたちが自由に読んだり、地域学習の教材として活用されたりすることで、その思いが広く伝わればと思う。

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