小島慶子の今日はじっくり語りたい!
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小島慶子×「地政学」田中孝幸対談(上) 「地理的に恵まれている」がゆえの日本の弱点/イランに攻撃を仕掛けたトランプ米大統領の頭の中
エッセイスト、メディアパーソナリティ、昭和女子大学現代ビジネス研究所特別研究員
2026.05.12
暮らし
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エッセイストの小島慶子さんが、様々な分野で活躍する「今、会いたい人」に話を聞きに行く連載。今回のお相手は、日本経済新聞編集委員の田中孝幸さん。政治・経済記者として世界各国を取材してきた経験を基に、国際関係を地政学から読み解く本を書いています。2026年2月に2冊目となる『世界を解き明かす 地政学』(日経BP)を出版した田中さんに、今まさに世界を混乱に陥れている米国のトランプ政権の振る舞いなど、「あの国はなぜそのような行動をとるのか」の疑問を小島さんが投げかけていきます。
(上)変貌する米国と中国のはざまで 超大国の「なぜ」を地理×政治で解き明かす ←今回はココ
(下)地政学に学ぶリスク回避策 「相手の不安」を知れば、とるべき行動が分かる
「動くものと動かないもの」を整理して、国際情勢を考える
小島慶子さん(以下、小島) まず基本のきとして、地政学とはどういうものなのでしょうか。
田中孝幸さん(以下、田中) 定義は人によって幅があるのですが、私の考えは次のようなものです。地政学の「地」は地理で、動かないものを指しています。気候なども地理の一部です。一方、「政」は政治。地とは対照的にすごく変動します。
地政学は一般的に、地理に重点を置いて国際関係を捉えることだといわれるのですが、私は、動くものと動かないものを整理して、国際情勢や世界の行く末を考えていくことだと定義しています。

日本経済新聞編集委員の田中孝幸さん(写真左)と小島慶子さん(同右)。対談冒頭、小島さんからは「田中さんのご本、私が長く日本と往復生活をしたオセアニア地域にほとんど触れていなかったのがちょっと寂しかった……次はぜひ」とまさかの続編リクエストが
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小島 日本には、地政学的にどういう強みと弱みがあるのでしょうか。
田中 まず基本的なこととして、日本は島国で、他国との国境を陸上で接していません。そういう国は世界的に少数で、ほとんどの国は陸上国境を持っています。それもかなり長い。例えば中国とロシアは合計4200キロメートルの国境で接しています。だから、国境を守ることが安全保障とほとんど同義になっています。
古代から今に至るまで、海を越えて他国を攻めるのは大変難しいことです。そういう意味では、日本は地理的に他国から攻められにくい環境にあります。あとは、山が多く水資源が豊富。これも多くの国にはない恵まれた地理的条件です。今、米国とイスラエルによる軍事攻撃の舞台になっている中東の湾岸諸国などは、豊富な原油を産出する一方で、水資源に乏しいです。
小島 そうですね。海水から飲み水を造らないと生きていけない。
田中 湾岸諸国は淡水化プラントが水の命綱で、水が油よりも高かったりする。日本は水資源が豊かで他国から攻められにくいという地理的なメリットがありますが、それゆえ恵まれた環境の日本に長く暮らしていると、世界のことについて想像力が働きにくくなる傾向がある。こうした無知が日本の弱みともいえます。
