■“ツインカム・ヨーロッパを謳った3代目パルサー

1986年5月にデビューした日産3代目「パルサー」

1986年(昭和61)年5月7日、日産自動車は3代目「パルサー」を発売した。パルサーは、サニーと多くのコンポーネントを共用する兄弟車だが、3代目のキャッチコビーは“ツインカム・ヨーロッパ”で、より欧州イメージを強めた小型車だった。

チェリーの後継として誕生したパルサー

1978年5月にデビューした日産「パルサー(4ドアセダン)」。欧州市場を指揮したシャープなスタイリング

初代パルサー(N10型)は、1978年5月に日産初のFF車「チェリー」の後継モデルとして誕生した。パルサーは、「サニー」のプラットフォームなど主要なコンポーネントを共有する兄弟車という位置付けだが、サニーよりもカジュアルで欧州志向が強かった。

キャッチコピーは、“パルサー・ヨーロッパ”であり、それをイメージするような欧州車を意識したシャープな直線基調のスタイリングが特徴。当初は、4ドアファストバックの2ボックススタイルだったが、4ヶ月後に3ドアハッチバックとクーペがラインナップされた。

パワートレーンは、厳しい昭和53年排ガス規制をクリアした最高出力70ps/最大トルク10.2kgmを発揮する1.2L、80ps/11.5kgmの1.4L 直4 OHVの2種エンジンと、4速および5速MTの組み合わせをベースに、1.4L搭載モデルには“日産スポーツマチック”を設定。これは、2ペダル仕様のいわゆる自動MTである。

欧州車風のスタイリングと俊敏な走りのパルサーは、日欧で人気を獲得し、大ヒットとはいかないまでもワールドカーとして堅調な販売を続けた。

先進のFFワールドカーを目指した2代目

1982年にデビューした日産2代目「パルサー(ハッチバック)」

1982年4月、パルサーは初めてのモデルチェンジで2代目(N12型)に移行した。3ドア/5ドアハッチバックとクーペが用意され、”ファンタスティックNEWパルサー“のキャッチコピーを謳い、世界をリードする先進のFFワールドカーが目標だった。

スタイリングは、スラントノーズとテーパードフード、リアにかけてはダックテール風のリアエンドを採用した欧州車風フォルムで、フラッシュサーフェス化を徹底したボディで優れた空力性能が実現された。

パワートレーンは、75ps/10.7kgmを発揮する1.3L 直4 SOHC、85ps/12.3kgmの1.5L 直4 SOHC、95ps/12.5kgmの同EGI(電子制御噴射)仕様の3種エンジンと、5速/4速MTおよびクラス初のロックアップ機構付3速ATの組み合わせ。

なかでも大きな注目を集めたのが、サブネーム“エクサ(EXA)を冠したクーペ「パルサー・エクサ」だ。クラス初のリトラクタブルヘッドライトを搭載し、専用サスペンションや走りに特化した各種チューニングが施された。

2代目も先進的でスポーティなモデルとして高く評価され、日欧米で堅調な販売を継続した。

ツインカムやフルタイム4WDを搭載した3代目パルサー

日産3代目「パルサー 3ドアハッチバック1600ミラノX1ツインカム」

3代目(N13型)パルサーは、1986年5月のこの日に登場した。ボディタイプは、3ドア/5ドアハッチバック、4ドアセダンの3種。主力となる3ドアはスポーティ、5ドアは実用性、セダンは落ち着いたシックさが魅力だった。

日産3代目「パルサー 3ドアハッチバック1600ミラノX1ツインカム」

日産3代目「パルサー 3ドアハッチバック1600ミラノX1ツインカム」

スタイリングは、従来通りシャープな直線と平面で構成され、インテリアはスポーティながらラウンディッシュな空間が形成された。装備で注目されたのは、JBL製スピーカーを採用したサウンドセレクションであり、上質なサウンドはもちろん、スピーカーは後方に回転できるので、野外でも音楽が楽しめるという工夫がされていた。

日産3代目「パルサー 3ドアハッチバック1500ミラノX1-E」

日産3代目「パルサー 3ドアハッチバック1500ミラノX1-E」

エンジンは、日産初のツインカムの120ps/14.0kgmの1.6L 直4 DOHC、82ps/12.5kgm&73ps/11.8kgmの1.5L 直4 SOHC、67ps/10.0kgmの1.3L 直4 SOHC、55ps/10.6kgmの1.7L 直4 SOHCディーゼルの5種エンジンが設定された。トランスミッションは、3速/4速ATおよび4速/5速MTが組み合わされた。

日産3代目「パルサー」搭載の1.6L DOHC(ツインカム)エンジン

日産3代目「パルサー」搭載の1.6L DOHC(ツインカム)エンジン

ツインカムエンジンの他に注目されたのは、1.6L DOHCエンジン搭載のセダンに搭載された、日本車初のセンターディファレンシャルにビスカスカップリング(VCU)を組み合わせたフルタイム4WDだった。スポーティな走りと4WDの組み合わせによって、オールラウンドの走行安定性が自慢だった。

日産3代目「パルサー1500 フルオート・フルタイム4WD J1」

日産3代目「パルサー1500 フルオート・フルタイム4WD J1」

日産3代目「パルサー1500 フルオート・フルタイム4WD J1」のコクピット

日産3代目「パルサー」のフルオート・フルタイム4WDパワートレーン系機構図

車両価格は、88.5万~156.5万円。1.6Lツインカム搭載モデルは142.2万円(3ドアハッチバック)/151.0万円(4ドアセダン)、また4ドアセダンに搭載されたフルタイム4WDが154.0万円に設定された。当時の大卒初任給は14.6万円程度(現在は約23万円)だったので、単純計算では現在の価値で1.6L DOHC搭載車が約224万/238万円、フルタイム4WD車が約243万に相当する。

日産初代、2代目、3代目「パルサー」

日産2代目「パルサー・エクサ」。3代目は「エクサ」の単独ネームに

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パルサーはサニーの派生車として生まれた兄弟車だが、サニーとは一味違う欧州風イメージで、日本よりもむしろ欧州で人気を獲得した。日本では、大ヒットモデルというより堅調な販売の人気モデルだったが、その評価は高く、1987年の“日本・カー・オブ・ザ・イヤー”に選ばれた。
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