東京都現代美術館(東京都江東区)で、「(UN)KNOWN HIROKO KOSHINO ―新説/真説 コシノヒロコ―」が5月26日から開催されます。
本展は、日本のファッションおよび表現文化を牽引してきたコシノヒロコの創作を、同時代的な視座からその本質的な価値と射程を捉え直します。本展では、コシノヒロコのコレクション作品約200点と絵画作品約130点の作品を紹介。半世紀を超えるキャリアの中で生み出されてきた膨大な作品群から、現代の感覚や価値観と強く共振する表現を厳選し、コシノヒロコが活動してきた各時代の社会状況や文化的文脈、同時代の芸術表現との関係性を重ね合わせながら、「なぜその表現が立ち現れたのか」「いまどのような意味を獲得しうるのか」を問い直します。
そこから浮かび上がるのは、既存のイメージに回収されがちな人物像、ブランド像を超え、実験性と批評性を内包しつつ、絶えず自己更新を続けてきたひとりの表現者としてのコシノヒロコの姿です。
また本展ではコシノヒロコが監修を務める「ネクスト・クリエイション・プログラム こどもファッションプロジェクト」で子供たちが実際に制作した作品も紹介されます。
(UN)KNOWN HIROKO KOSHINO ―新説/真説 コシノヒロコ―
会場:東京都現代美術館 (東京都江東区三好4-1-1)
会期:2026年5月26日(火)~7月26日(日)
開館時間:10:00-18:00 (展示室入場は閉館の30分前まで)
休館日:月曜日(7月20日は開館)、7月21日(火)
チケット:
一般2,200円、大学生1,500円、中高校生800円、ツインチケット(一般2枚)4,000円
※小学生以下 無料
アクセス:
東京メトロ半蔵門線「清澄白河駅」B2出口より徒歩9分
都営地下鉄大江戸線「清澄白河駅」A3出口より徒歩13分
詳細は、展覧会公式ウェブサイトまで。
展覧会の見どころ
1 圧巻のコシノヒロコ・ワールド
半世紀を超えるキャリアのなかで生み出されてきた膨大なコレクションに加え、墨絵、アクリル画・油彩によるペインティング、タペストリー、歌舞伎座公演での舞台幕、長唄の映像まで、コシノヒロコが現在に至るまでに展開してきた多彩な表現が一堂に会します。

2 コシノヒロコの表現史と時代の対話
日本のクリエイションが国際的な存在感を高めていった同時代の動向と照らし合わせながら、コシノヒロコの表現史と時代精神の関係を浮かび上がらせます。また、世界的な評価を得た田中一光氏の『冬季オリンピック札幌大会’72[試作]』、石岡瑛子氏の1979年に制作されたPARCOの広告ポスター、倉俣史朗氏の代表作の一つ『ミス・ブランチ』と共に、コシノヒロコのコレクションが並びます。
3 世代を超えたコラボレーション
フランス・パリを拠点に活動する現代アーティスト、マティルド・ドゥニーズとのコラボレーション。コシノヒロコの過去のコレクションで用いられたアイテムやテキスタイルを取り入れた立体作品を制作し、時間と文化を横断する新たな対話を生み出します。

4 創造に触れるインスタレーション
コシノヒロコのコレクションの特徴である、ゼロから開発されるテキスタイルと大胆な色彩表現。その源泉となるスケッチとあわせて紹介。そして今回は、見るだけでなく、展示されている洋服に実際に触れることも可能。一点一点のテキスタイルの質感や重さなど、その魅力を体感することができます。

5 原体験と未来への恩返し
コシノヒロコは、自身の美学を育んでくれた祖父と母、そして未来への恩返しとして、2024年より始動した、東京都と公益財団法人東京都歴史文化財団が実施する 「ネクスト・クリエイション・プログラム こどもファッションプロジェクト」を監修。プロジェクトで制作した作品展示を通して、子どもたち一人一人の感性や才能とコシノヒロコの出会いを取り上げます。

マティルド・ドゥニーズとのコラボレーション

今回の展示では、フランス・パリを拠点に活動する現代アーティスト、マティルド・ドゥニーズとのコラボレーション作品を発表。ドゥニーズは廃棄されたオブジェクトや自身の過去の絵画、映画のセットや広告制作の現場から回収した塗料などを用いて構成される「コスチューム・ペインティング」と呼ばれる手法で知られています。
本コラボレーションにおいて発表される 《Where Stories Linger》 は、ドゥニーズが展開してきた彫刻的な縫製作品の実践を基盤とし、廃棄された日常的オブジェクトと自身の絵画を切断・再構成するプロセスを通じて制作されています。各10点から成る2群のインスタレーションには、コシノヒロコの過去のコレクションに用いられた衣服やテキスタイルが素材として取り入れられ、アーティストの実践とデザイナーのアーカイブとのあいだに新たな対話が生み出されています。
コシノヒロコによる力強い色彩と大胆なテキスタイル表現と、ドゥニーズの優美でありながら緊張感を孕んだ色彩が重なり合うことで、両者の感覚は対比と調和のあいだに独自の均衡を見出しています。作品には円や三角形、ストライプといった幾何学的かつグラフィカルな要素が随所に配され、外套を想起させるシンプルな形態と精緻なディテールの対比によって、明快さと複雑さが同時に立ち現れます。
衣服と身体、過去と未来、東洋と西洋といった差異を内包しながら、それらは対立することなく緩やかに交錯し、匿名性を帯びた表現へと収斂していきます。そこには共存的な関係性が立ち上がり、身体、時間、記憶をめぐる多層的な関係が浮かび上がります。
展覧会に向けた新しいビジュアルの制作

本展では、アートディレクションにSTUDIO KIGI & を迎え、歴代のコレクションに新たな息吹を与えます。また、展覧会に向けて新しいビジュアルの撮り下ろしも実施。コシノヒロコのスタイリングチームに加え、フォトディレクションにSTUDIO KIGI &、フォトグラファーに岡本充男、ヘアメイクに石川ひろ子を迎え、本展のためにビジュアルを撮影。これまでのコシノヒロコとは一線を画す、新しい展覧会のコンセプトであるUNKNOWNコシノヒロコをイメージさせるビジュアルが制作されました。

コシノヒロコ(HIROKO KOSHINO / ファッションデザイナー)プロフィール

1937年、大阪・岸和田生まれ。文化服装学院在学中に日本デザイナー協会デザインコンクールで1位を受賞。1964年、大阪・心斎橋にオートクチュール・アトリエを開設。1977年以降、年2回東京コレクションに継続して参加する。1978年には日本人として初めてローマのアルタ・モーダに参加し、その後パリ、上海など世界各地でコレクションを発表。1995年、米国ワシントンD.C.で開催された国際アパレル連盟総会にて、アジア代表デザイナーとして講演を行う。 また、異分野のアーティストとのコラボレーションを通じ、ファッションの領域を越えたイベントや表現活動を国内外で展開している。
半世紀以上にわたり、日本のファッション界の第一線を走り続けてきたコシノヒロコ。本展「(UN)KNOWN HIROKO KOSHINO」は、単なる回顧展に留まらず、彼女が絶えず試みてきた「自己更新」の軌跡を、現代の視点から鮮やかに描き出します。200点に及ぶコレクションと130点の絵画が織りなす空間は、圧巻の一言に尽きるでしょう。また、フランス人アーティストのマティルド・ドゥニーズとの世代や国境を越えたコラボレーションにも要注目です。本展は、これまで私たちが抱いていた「コシノヒロコ」というブランドイメージを超え、彼女の「表現者」としての深淵に触れることが貴重な機会となりそうです。(美術展ナビ)
