アンソロピックのダリオ・アモデイCEO(2月19日インド講演で、写真:ロイター/アフロ)
(英エコノミスト誌 2026年4月18日号)
ミトスが登場した今、AIへの自由放任主義はもう政治的に通用せず、戦略的にも賢明でない。
世界最強の新技術を、片手で数えられる数の男たちの手に委ねるべきなのだろうか。
非常に有名なためファーストネームだけでも誰なのか分かる5人のギーク――ダリオ、デミス、イーロン、マーク、サム――は、これから未来を形作る人工知能(AI)モデルをほとんど神のごとく支配している。
片やトランプ政権は、モデルが驚愕の能力を獲得する間も状況を静観してきた。中国とのAI開発競争で確実に勝利を収めるには、民間企業に自由に競争させるのが一番だと固く信じていたからだ。
今まではそうだった。AIに対する米国の自由放任主義的な扱いは、ここに来て突然終わりを迎えつつあるようだ。
目がくらむほど速いAIモデルの進歩は米国自体の国家安全保障にとっての脅威にもなっており、以前は過剰規制を心配しがちだった政権幹部らをいら立たせている。
同時に、米国の有権者の間で強まっている怒りは、AIを政治の避雷針に変えつつある。自由放任のアプローチはもう政治的に通用せず、戦略的にも賢明ではない。
クロード・ミトスの衝撃
転機が訪れたのは4月7日、AIモデル開発企業アンソロピックによる「クロード・ミトス」の発表だった。
同社によるこの最新モデルはソフトウエアの脆弱性の発見に驚くほど長けており、もし悪意ある者の手に渡れば、銀行から病院に至る重要な社会インフラの脅威になる。
AIモデルはこのところ、バイオセキュリティ・ハザード(病原体やそれに汚染された物質の拡散などにより、生物学的な安全が脅かされる危険のこと)や大規模な組織的詐欺など、ほかのリスクももたらしている。
アンソロピックのダリオ・アモデイ最高経営責任者(CEO)は賢明なことに、ミトスの一般公開はあまりに危険だと考えた。
そこでコンピューティング、ソフトウエア、金融の大企業およそ50社にのみ使用を認め、各社が防御態勢を強化できるようにした。
スコット・ベッセント米財務長官も強い不安を覚え、大手銀行のトップらを呼び出して緊急会合を開いた。
トランプ政権が動いたのはこれが初めてではない。ほんの数週間前には国防総省が、完全自律型兵器や国内の大衆監視に自社のAIモデルが使われることをアモデイ氏が拒んだ後に介入した。
そしてトランプ政権も警戒心を抱いた。国家安全保障にとって重要な技術に対し、一企業が権力を行使したからだ。
有権者からの反発は、政権に介入を求める圧力をさらに強めることになる。足下の世論調査の結果を受けて、2028年の選挙ではAIが大きな争点の一つになると考える政治家がますます増えている。
米国の人々はAIに対して、諸外国の人々よりもはるかに懐疑的だ。
AIは就職の機会を損なうと考える人は10人中7人に上り、前年比で急増している(それも確たる証拠が得られるずっと前から増加している)。
また、AIは電気料金の上昇にはほとんど、あるいは全く関係がないものの、データセンターに対する草の根レベルの反対運動も増えている。
時勢の表れなのだろうか、オープンAIを率いるサム・アルトマン氏の自宅はここ数日間に2度襲撃されている。
