近代インド美術を代表する作家のひとり、ラジャ・ラヴィ・ヴァルマの絵画がインド人アーティストのオークション記録を更新した。

インドのオークションハウス、サフランアートに出品された《Yashoda and Krishna》(1890年代ごろ)は、1790万ドル(約28億円)で落札され、昨年クリスティーズ・ニューヨークで記録されたM・F・フセインの《Untitled (Gram Yatra)》(1954)の落札額1380万ドル(約22億円)を上回る金額となる。Artsyによれば、《Yashoda and Krishna》を落札したのは、製薬業界の富豪で、セラム・インスティテュート・オブ・インディアの創業者、サイラス・プーナワラだという。また、今回の落札額は、2023年に記録されたヴァルマ自身の最高額450万ドル(約7億2000万円)も大きく更新した。

サフランアートはヴァルマを「初期近代インド美術における最も影響力のあるパイオニア」と位置づけ、《Yashoda and Krishna》を「作家の代表作のひとつ」と評して次のように述べている。

「本作でヴァルマは母性愛という普遍的なテーマを、幼きクリシュナ神とその養母ヤショーダという神話上の人物を通じて解釈している。この作品は、インドの文化と信仰に深く根差した主題を体現している。」

今回の結果は、インド人作家の需要が高価格帯に強く集中していることを示している。ヴァルマをはじめとするアーティストの作品は、国家文化遺産法によって事実上インド国外への持ち出しが禁じられており、優品は比較的閉じたエコシステムの中で流通している可能性が高い。しかし、この規制は需要を抑えるどころか、希少性を背景に価格上昇をむしろ後押ししている。(翻訳:編集部)

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