ドジャースのFA戦略に不満の声「この制度とゲームは不公平」

 ドジャースが野球を台無しにしている――。

 近年、米国内ではこんな批判が拡大している。今年に入り、その声はさらに大きくなった。きっかけは、ドジャースがフリーエージェント(FA)の目玉であったカイル・タッカー外野手と4年総額2億4000万ドル(約372億3000万円 ※うち3000万ドル=約46億5000万円は後払い)で契約したこと。タッカーの平均年俸(AAV)6000万ドル(約93億円)は、同僚の大谷翔平投手(年平均7000万ドル=約108億5600万円)に次ぐ歴代2位となり、メッツのフアン・ソト外野手の5100万ドル(約79億円)を上回った。

 過去3年のオフシーズンにおいて、ドジャースは数々の契約を結んできた。

・大谷翔平投手:10年総額7億ドル=約1085億6000万円 ※うち6億8000万ドル=約1054億6000万円が後払い
・山本由伸投手:12年総額3億2500万ドル=約504億円
・タイラー・グラスノー投手:5年総額1億3656万2500ドル=約211億8000万円
・ブレイク・スネル投手:5年総額1億8200万ドル=約282億3000万円
・タナー・スコット投手:4年総額7200万ドル=約111億6700万円
・トミー・エドマン内野手:4年総額7400万ドル=約114億7700万円
・エドウィン・ディアス投手:3年総額6900万ドル=約107億円

 そして今回、タッカーをも獲得したことで、その給与総額は前例にない莫大な規模となった。

 タッカー獲得時点で、ドジャースの2026年シーズンにおける推定課税対象給与総額は、4億1340万ドル(約639億4470万円 ※Spotrac調べ)と過去最高を記録。ぜいたく税額は1億6200万ドル(約250億6000万円)となり、2025年の総年俸下位15球団を上回ることになった。

 ESPNのジェフ・パッサン記者は米スポーツトーク番組「ザ・パット・マカフィー・ショー」の中で、ドジャースの近年のFA戦略について「ファンはこの制度とゲームが不公平だと感じている」とMLB全体のファンの感情を代弁。さらに、チームや選手たちでさえも「ドジャースのようなチームにどう勝てばいいのか分からない」と話していると主張した。

 また、元MLB幹部でGM経験のある現MLBネットワークアナリストのジム・ボーデン氏は、米ポッドキャスト番組「ファウル・テリトリー」で「過去10年間、下位半数となる15市場のMLBチームでワールドシリーズを制したチームは1つもない」と指摘。「小市場チームは収益分配金を受け取っているにもかかわらず、ドジャースのようなチームの年俸総額に追いつけない。何らかの変更(サラリーキャップまたはサラリーフロアの施行)がなければ、チーム間の年俸総額の格差はさらに拡大し、小規模市場チームの競争がさらに困難になる」と訴えかけた。

元選手が証言「ドジャースは断トツで最高の組織」

 だが、一方でこんな声もある。米メディア「ジョンボーイ・メディア」のクリス・ローズ氏(元FOXスポーツ/MLBネットワーク)と共同司会者のトレバー・プルーフ氏(元MLB三塁手/現ツインズ解説者)は、自身のトーク番組「ベースボール・トゥデイ」でファンの間にある大きな不満を認めつつも、ドジャースの選手編成と現行の労使協定(CBA)下で資金を投入する姿勢を称賛したのだ。

 ローズ氏は「ドジャースは選手育成やスカウト活動から選手への様々な配慮の提供に至るまで、賢明なロースター構築を行い、野球のあらゆる面で単純に優れている」と主張。さらに、2025年にドジャースを抜き最高年俸総額(3億2310万ドル=約500億円)を記録しながらもプレーオフ進出すら果たせなかったメッツを引き合いに出し、「特に野球においては年俸総額がすべてではない」と話した。

 プルーフ氏も、“悪の帝国”とも呼ばれるドジャースは「選手にとって最高の行き先だ」と称賛。2018年にドジャースで半シーズン過ごした元チームメートのブライアン・ドジャー氏が「ドジャースはこれまで自分がプレーした中で、断トツで最高の組織と語っていた」とし、給与総額や支出意欲だけでなく、選手育成、選手の宿泊施設、そしてチーム全体の勝利文化においても、競合他球団をはるかに凌ぐ存在だと強調した。ローズ氏とプルーフ氏は、ドジャースの野球部門編成最高責任者であるアンドリュー・フリードマン氏の力量も番組内で絶賛している。

 とはいえ、MLBのオーナーグループ間の富と資源の格差が、かつてないほど拡大していることは否定できない。現行の労使協定が2026年シーズン終了後に失効するにあたり、MLB選手会とオーナー側がこれらの問題を解決し、より公平な競争環境を構築しようとはしているが、2021-22年と同様のロックアウトが再び発生すると多くの専門家が危惧している。

 サラリーキャップやサラリーフロアは導入されるのか。いずれにしろ、お金に糸目をつけない金満球団が有能選手を獲得し続け、栄光を手にする図式に共感できないという声が出ているのは事実だ。

(笹田大介 / Daisuke Sasada)