杉本達治

福井県が1月7日に公表した調査報告書は、前知事・杉本達治による長期かつ悪質なセクシュアルハラスメント行為を詳細に認定した。約1000通に及ぶ私的メッセージと身体的接触、拒否できない権力構造の実態を検証する。

 

6000人調査で明らかになった前知事の組織的逸脱行為

福井県は1月7日、前知事の杉本達治によるセクシュアルハラスメント行為について、第三者で構成された調査委員会の報告書を公表した。調査は県職員約6000人を対象に実施され、複数の女性職員から深刻な被害申告が寄せられた。

報告書は、杉本氏が知事という立場にありながら、その権限と影響力を私的な関係構築に利用し、長期間にわたって特定の職員に接触を続けていたと認定している。行為は単発的な不適切発言ではなく、繰り返し行われた点が特徴で、調査委は「悪質性が高い」と明確に評価した。

さらに、行為の一部については、セクシュアルハラスメントの範囲を超え、刑法上の不同意わいせつ罪や、ストーカー行為等の規制等に関する法律に抵触する可能性も否定できないと踏み込んで言及している。地方自治体のトップによる不祥事として、極めて重い内容となった。

 

約1000通の私的メッセージが示す執着と支配の構図

調査で特に詳細に検証されたのが、テキストメッセージによる接触である。杉本氏が女性職員に送信したLINEや私用メールは、確認できただけで約1000通に上るとされた。

その内容は、業務連絡の域を完全に逸脱し、恋人関係を想起させる愛情表現や、感情の起伏を一方的に押し付けるものが多かった。休日や業務時間外、深夜にも「冷たい」「放置プレイか」「起きて、起きてえ」「眠れません」「助けて」といったメッセージが連投され、被害者の生活時間にまで侵入していた実態が浮かび上がる。

被害者は聞き取りに対し、「恥ずかしく屈辱的だった」「心の底から気持ち悪かった」と証言した。本来の業務遂行よりも、杉本氏の感情をなだめることを優先するよう求められたと受け取れる文面も確認されており、職務と私情の線引きが意図的に曖昧にされていた。

 

拒否できなかった背景にある知事という圧倒的権力

被害者らが明確な拒否の意思を示せなかった理由について、報告書は権力構造の問題を重く捉えている。相手は知事であり、人事権を含む強大な影響力を持つ存在だった。

被害者らは「職を失うのではないか」「仕事がなくなるのではないか」といった社会的、経済的な不利益への恐怖を強く抱いていたと述べている。特に、杉本氏と親子ほど年齢が離れた被害者は、性的関係を想像しただけで恐怖と嫌悪感に襲われたと証言した。

報告書は、被害者が返信の中で迎合的な表現を用いた場面があった点についても、「さらなる加害を回避しようとする防衛的反応」と評価し、被害者の責任を一切否定している。権力の非対称性が、沈黙と服従を強いた構図が浮き彫りとなった。

 

身体的接触を伴う被害と否定し続けた加害者の供述

調査では、精神的苦痛にとどまらず、身体的接触を伴う被害も3件確認された。いずれも被害者が拒否しにくい状況下で行われている。

飲食店で2人がけのソファに座らされ、「触っていい?」と声をかけられながら太ももを触られた事例。懇親会の場で、向かい合って座る席から両足の間に足を入れられ絡められた事例。さらに、別の飲食の場では、背後からスカートの中に手を入れられ、太ももの裏や臀部を触られた事例も報告された。

杉本氏はこれらについて「記憶にない」「触ったことはない」と否定したが、調査委員会は被害供述の一部がテキストメッセージなどで裏付けられているとして、供述は信用できないと結論付けた。言動の一貫性の欠如も、評価を厳しくする要因となった。

 

辞職後も問われる姿勢と被害者への向き合い方

杉本氏は2025年12月4日に知事を辞職している。しかし、報告書は辞職会見での発言内容についても厳しく言及した。謝罪を述べながら「福井に残って福井のために尽くしたい」と発言し、「海外旅行に行きたい」と口にしたことについて、調査委は反省の姿勢が見られないと指摘している。

被害者の中には、謝罪後も加害行為が繰り返されたことで「DVのように感じた」と語る者もいた。自分にも非があるのではないかと自責の念を抱き、尊厳を大きく傷つけられたという証言も複数記録されている。

報告書は「本当に反省しているのであれば、まず被害者の気持ちを最優先すべきだ」と結論付け、県政トップによる行為が組織全体に与えた影響の大きさを強調した。今回の調査結果は、個人の問題にとどまらず、権力と倫理の在り方を県政全体に問い直す内容となっている。