イーロン・マスク率いるテスラの販売減速に歯止めがかからない。欧州での販売不振は11月も続き、1年以上にわたる下落傾向がさらに鮮明になっている。

ロイターが報じた月間登録データによると、欧州主要市場でのテスラ車の登録台数は先月、前年同月比でほぼ半減した。国別ではフランスで58%減、スウェーデンで59%減、デンマークで49%減といずれも大幅な落ち込みとなっている。登録台数は、販売動向を示す重要な指標だ。

販売低迷は、テスラが欧州で唯一工場を構えるドイツでも続いている。同社はベルリン近郊に生産拠点があるにもかかわらず、10月の登録台数は750台にとどまり、前年同月の半分以下という厳しい結果となった。

とはいえ例外もある。ノルウェーでは11月、登録台数が前年の約3倍となる6,215台を記録し、年初から11月までの累計登録台数は、すでに過去最高を更新している。

しかし、こうした動きは欧州市場全体の潮流とは一致しない。2025年1〜10月の新車登録台数データを見ると、テスラの欧州販売は厳しい状況だ。欧州自動車工業会(ACEA)の統計では、同期間の販売台数が前年同期比で約39%減となっており、同社の不振が構造的な問題になりつつあることがうかがえる。

市場シェアも縮小している。調査会社Schmidt Automotive Researchの分析では、電気自動車(EV)市場におけるテスラのシェアは、2024年5月の12.6%から2025年5月には7.2%へと低下した。

その間、競合他社は勢いを増している。欧州のEV市場では、フォルクスワーゲンが首位に立ち、今年上半期のEV販売台数は13万3,465台と、テスラの10万8,878台を上回った。さらに10月には、中国のBYDがテスラの2倍以上を販売し、存在感を示している。

テスラ、失速の背景

テスラ失速の背景には、複数の要因がある。なかでも、イーロン・マスクの政治的言動が、欧州の消費者を遠ざけている点が大きい。特にドイツでは反発が強まっており、マスクが極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」への支持を公然と示したことで、批判が広がっている。

マスクは今年1月、AfDの選挙集会にオンライン参加し、ドイツ人はナチスへの罪悪感を克服すべきだと発言。このスピーチをきっかけに、テスラ車のボイコット運動が一気に拡大した。ドイツのドラッグストア大手Rossmannやエネルギー企業LichtBlickなどが、社用テスラ車の利用停止を表明。さらに隣国ポーランドでも、スポーツ相スワウォミル・ニトラスが国民に不買を呼びかける事態となっている。

こうした政治的要因に加え、競争環境の変化も逆風となっている。欧州では現在、欧州・中国・韓国・日本メーカーによる150以上のEVモデルが販売され、競争は急速に激化している。

ロイターによると、調査会社Escalentが欧州主要5カ国で実施した調査(対象:約2,000人の新車購入予定者)では、約38%がテスラの革新性や品質の魅力は失われた、と回答したという。

イタリアでも苦戦を強いられている。イタリア運輸・インフラ省の最新統計によると、同国でのテスラ車の登録台数は10月まで6カ月連続で減少。10月の登録数は256台で、前年同月比47%減となった。また今年1〜10月の累計登録台数は9,047台で、前年同期比で33%減少している。

一方で、今年1〜5月のイタリアのEV市場全体では、前年比73%増と拡大している。こうした動向から、欧州での販売不振はEV市場全体のトレンドではなく、テスラ固有の問題との見方が強まっている。

ノルウェーの特殊事情

しかし、ノルウェーでは事情が大きく異なる。統計によると、テスラは今年、同国で自動車メーカーとして史上最高の販売記録を更新。2016年にフォルクスワーゲンが樹立した記録を塗り替えた。