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Bloomberg
掲載日
2025年11月11日
米国では今年、昨年に比べて多くの商品で値下げ幅が縮小している。こうした背景には関税の影響があると、商品を販売する親会社アップストリーム・ブランズのオーナー、ダン・ペスコース氏は指摘する。
コーチのアクセサリー
Amazon.comやその他のウェブサイトで商品を展開するアップストリーム・ブランズは、通常、ホリデーシーズンに年間売上高の最大35%を稼ぎ出す。同社はトランプ政権の新たな関税の対象となった国々から調達しているため、昨年なら20ドル未満だった銅製のハーブストリッパーが、米国の金属への関税の影響で現在は約30ドルになっている。
「関税の影響で商品原価が高止まりしており、当社として割引を提供するのは採算に合いません」とペスコース氏。「消費者の懐具合も厳しく、全体的に支出を抑える動きが広がっていることも懸念しています。まさに悪条件が重なっています」。
高級ハンドバッグのコーチからウェルネス機器のセラボディまで、プロモーションを絞る企業が相次いでいる—ただし、その理由は一様ではない。多くは関税やインフレを挙げる一方で、買い物客に対するブランドの魅力度や希少性を維持しようとする狙いもある。
「今年のホリデー商戦は極めて異例です。小売の現場には課題が山積しています」と、アリックスパートナーズ(AlixPartners)でファッション小売を統括するソニア・ラピンスキー氏。「多くの企業は関税の第1波を吸収しましたが、もはや過去と同じ水準の割引を提供する余地がありません」と付け加えた。
329.99ドルのマッサージャーや379.99ドルのLEDマスクを展開するセラボディも同様だ。多くの製品は値下げするものの、昨年ほどの割引はできないと、モンティ・シャルマ最高経営責任者(CEO)は述べた。関税の影響で、同社は今年すでに5%〜7%の値上げを余儀なくされており、生産の一部を中国から移している。
経済全体でコストが上昇し可処分所得が目減りするなか、プロモーションから距離を置くことはリスクも伴う。プライスウォーターハウスクーパースLLCの調査では、消費者は慎重姿勢を強めており、年末年始の想定支出は昨年比で平均5%減る見通しだ。17〜28歳の消費者では、ホリデー予算が23%減少すると予測されている。
「小売企業は板挟みの状態にあります」と、グローバルデータのマネージングディレクター、ニール・サンダース氏。「一方では利幅を守りたい。他方では競争環境が非常に厳しく、消費者が支出を後押しする割引を強く求めていることも理解しています」。
同氏はブラックフライデーには「かなり妥当な」割引率が見込めるとする一方、先行する値上げの上に実施されるケースが多く、見た目ほど割引幅は深くならないだろうとも付け加えた。
調査会社Circana(サーカナ)のチーフ・リテール・アドバイザー、マーシャル・コーエン氏は、今年のホリデーシーズンに小売各社は頻繁にプロモーションを打つだろうが、値引きは例年ほど深くならないと指摘。企業は発注量を抑えており、過剰在庫とそれに続く利益を損なう値下げを避ける狙いだという。
「売り切るほうが、投げ売りするよりましだ」と同氏は語った。
プロモーション縮小の理由は関税だけではない。コーチは、製品が定価で売れるだけの魅力を保つことを重視している。
「市場の一部では販促活動が続いていますが、私たちはここ数年、意図的に大幅な値引きから距離を置いてきました」と、コーチのトッド・カーンCEOはブルームバーグ・ニュースに語った。同ブランドは、新商品や製品への独占的な先行アクセスの提供によって関心を喚起できると見込んでいる。
ナイキ、リーバイ・ストラウス、ラルフ・ローレンも、プロモーションの抑制や段階的な廃止を目指す同様の戦略を採用している。狙いは製品の独自性と話題性を保つことにあり、値引きはブランドに需要がないとの印象を与えかねない。とりわけラグジュアリー企業は、値下げを極力避ける傾向が強い。
それでも買い物客は、いわゆる目玉セールを探し続けるだろう。ミシガン大学の11月の消費者心理(速報値)は、雇用見通しや物価高への懸念が強まり、過去最低に近い水準となった。
「定価では買いたくないものが多い気がします」と、ニューヨーク市在住の27歳の歯科医、オリビア・デチョさんはホリデーの買い物について語った。「本当に買うのは、大幅な割引がある場合だけですね」と付け加えた。
