掲載日

2025年10月20日

着実に、サンスペルはその存在感を広げている。パリでは、タイムレスなラグジュアリーを手がける英国の老舗が、ファッションの人気エリアとして知られるマレ地区、サント・クロワ・ド・ラ・ブルトンネリー通り38番地に新たな拠点を構えた。10月8日には約60平方メートルのブティックをオープンし、これで2025年に入ってから3店舗目の新規出店となる。

サンスペルのパリ店の外観サンスペルのパリ店の外観 – Sunspel

13世紀に遡る、マレ地区でも最古級の通りのひとつに位置するこのブティックは、3人の従業員によって運営されている。1860年にトーマス・アーサー・ヒルによって創業された同ブランドは、Tシャツ、ポロシャツ、ニット、コート、パンツから成るクラシックで厳選されたワードローブを展開。ショップ中央には、2019年から英国人調香師リン・ハリスと協業して開発してきたフレグランスをはじめ、アクセサリーやオブジェも並ぶ。

ハリスツイードとシーアイランドコットン

創業当初から、サンスペルは素材へのこだわりで知られてきた。同ブランドが用いる「シーアイランド」と呼ばれるコットンは、多くの水と日照を要するカリブ海原産の品種で、17世紀にイギリス領西インド諸島に入植した欧州人によって栽培が始められたものだ。サンスペルのTシャツには、カリフォルニアの農場産のスーピマコットンも用いられている。その他のアイテムには、スイスで紡績されたモンゴル産カシミヤを採用している。

Tシャツはブランドの主力アイテムTシャツはブランドの主力アイテム – Sunspel

サンスペルのストーリーテリングは、こうした逸話に事欠かない。ウールコートを指し示しながら、2005年からブランドのオーナーを務めるニコラス・ブルックは、スコットランド北西部の群島の住民が自宅で織り上げる生地、ハリスツイードで仕立てられていることを、動画を交えて語る。

リビエラ・ポロシャツは、1950年代に創業者の孫が南仏の気候に合わせて考案したモデル。現在はポルトガルの工場で、レース編み機を用いる25台規模の設備で生産されている。ブランドの定番であるTシャツには、映画カジノ・ロワイヤルでダニエル・クレイグのために特別に製作されたラインもある。英ノッティンガムで製造され、縫製スタッフが自らの名前を記すことで、陰で支える職人たちに光を当てている。

「今後もフランスへの投資を続けたい」

コラボレーションの常連であるサンスペルは、ルメール、コム デ ギャルソン、JWアンダーソン、ポール・スミス、トム・ブラウンといったブランドとの共作も手がけてきた。これらのコラボレーションでは、同社は主に技術的な知見を提供し、クリエイティブ面はパートナーに委ねる。自社のアイテムにはロゴを配さず、落ち着いたカラーは英国人アーティスト、リチャード・ワドコックの絵画から部分的に着想を得ている。同時に、過去の技術革新を礎に新たなテクニカルプロジェクトにも取り組み、最近ではシーアイランドコットンとカシミヤのブレンドを発表した。 

2005年、ニコラス・ブルックがヒル家からサンスペルを買収2005年、ニコラス・ブルックがヒル家からサンスペルを買収 – Sunspel

サンスペルのCEO、ラウル・ヴェルディッキは、AlphaTauriとゼニア グループを経て2023年に同ブランドに参画。「サンスペルがユニークなのは、複数の要素の組み合わせにあります。英国ブランドであり、高品質な製品と確かなヘリテージを備えているからです」と述べる。「当社は業績好調で、コロナ禍でも成長しました。今日のこのブティックは新たな一歩です。今後もフランスへの投資を続けていきたいと考えています」。現時点で、マレの店舗はフランス人客と海外からの観光客の双方を引きつけており、後者が顧客の55%を占めている。 

2026年初頭には東京にも出店

サンスペルはすでにロンドンに8店舗を構え、英国内ではエジンバラ(スコットランド)と、リバプール近郊に位置するCheshire Oaks Designer Outlet内にさらに2店舗を展開。米国では、ロサンゼルス、サンフランシスコ、サンタバーバラに加え、ニューヨークのソーホーとアッパー・イースト・サイドに、計5つの直営ブティックを構える。グローバル展開を加速するなか、サンスペルは2026年初頭に東京にブティックをオープンする予定だ。また、Beams、Saks、Harrods、Selfridges&Co、La Samaritaine、Printempsといった多数のリテーラーにも卸しており、34カ国で実店舗のプレゼンスを確保している。 

ブランドは、プレスや映画も活用して新規顧客を獲得しているブランドは、プレスや映画も活用して新規顧客を獲得している – Sunspel

この展開を後押しするには、ブランドは顧客基盤を刷新していく必要がある。ニコラス・ブルックはこう語る。「30年来の60代の顧客もいれば、20代の顧客もいます。顧客を維持するうえで、私たちは年齢ではなく製品の品質にフォーカスしています」。さらに彼は、英国では初代クリエイティブ・ディレクターである北アイルランド出身のジョナサン・アンダーソンの存在もあり、ブランドが一定の知名度を得ていると説明。プレスや映画(F1、カジノ・ロワイヤル)といった他の媒体も、顧客層の更新に寄与している。

2025年、サンスペルの売上高は3,600万ポンド(約4,150万ユーロ)を計上。同ブランドは、2020年以降、毎年20%の成長を続けているとしている。