記事のポイント
欧州委員会と米司法省はGoogle広告事業分割を唯一の是正策と認識している。
トランプ大統領は分割自体よりもEUが先行することに反発している。
最終的な救済策を規定するのは欧州の判断であり、市場への効果は不透明である。
Googleのデジタル広告における支配力をどう抑えるかという問題は、現在米国の法廷とブリュッセルという2つの場で進行している。注目は主に米国の裁判に集まってきた。
しかし、実際にGoogleの広告事業の分割が可能かどうかを示すもっとも明確なシグナルを出すのは、ヨーロッパかもしれない。
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というのも、提案されている救済策そのものが大きく異なるからではない。むしろ、大西洋の両側の規制当局は、Googleの広告テクノロジーのスタックを解体することこそが、オンライン広告取引における同社の違法な独占状態を解消する唯一の現実的な手段であるという見解で、ますます一致しつつあるからである。
両者を分けるのはタイミングと姿勢だ。
トランプ大統領の報復警告で揺れる独禁訴訟
ヨーロッパは動きが速い。11月初旬までに、GoogleはEUの定める60日の期限を迎え、独自の救済策を提案しなければならない。それが受け入れられなければ、規制当局が独自に措置を講じる。一方米国では、裁判を皮切りに司法省(DOJ)の救済案を裁判官が判断することになるが、判決が出るのは数週間から数カ月先になる可能性がある。
その前提に立てば、ヨーロッパが先に行動し、介入が実際にどのようなものになるのかの基準を定める可能性は十分にある。最終的にどのような救済策となるかはまだ不透明であるが、欧州の規制当局は分割案が真剣に検討対象となっていることを明言している。ただし、それが最終的に残るかどうかは、ワシントンからの圧力の度合いに左右される可能性がある。トランプ大統領はすでに、EU当局が科した29億5000万ユーロ(約4720億円)の初期罰金を「米国企業への直接的打撃」と位置づけているからである。
トランプ大統領は、規制当局がこの方針を続けるなら、米国はEUに対して通商関税を用いて「不当な罰金を無効化する」と警告した。この脅しは、米国とEUのあいだで一時的に貿易戦争が回避された直後に出されたものであり、いまやGoogleの独占禁止訴訟はその駆け引きに巻き込まれている。強行すれば経済報復のリスクがあり、退けば規制当局の権威を損なう。
これは厄介な板挟みである。ただし、トランプ大統領の過去の実績からすれば話は複雑だ。脅しは声高に発せられるものの、実際に行動に移すことは一貫していない。再就任後も警告を繰り返してきたが、実際に実行された例は少ない。変化する可能性はあるが、現時点ではそうなっていない。
「ヨーロッパは今こそ非常に強いメッセージを発する機会である。脅迫は通用しないと示すべきだ」と、欧州議会議員で緑の党/EFAグループ所属のアレクサンドラ・ゲーゼ氏は述べた。
問題は圧力に耐えられるかどうか
分割を正当化する法的根拠は強い。欧州委員会は、Googleが買い手側、売り手側、そして広告オークションの各レイヤーを支配していることが、構造的に不公平な市場を生んでいると主張している。Googleはルールを決め、自ら競争に参加し、あらゆる段階で利益を得る立場にある。この構造を是正するには分離しかないという立場である。
しかし、議論の強さよりも重要なのは、それが圧力に耐えられるかどうかである。これが、挑発が政治を上回ることの多い政権への対処法として定着してきた。関税から貿易、テクノロジーに至るまで、トランプ大統領は強硬姿勢をとってきたが、必ずしも実行には至らなかった。そしてそれらは、彼自身が必ずしもその根本的な大義に賛同していたわけではない事例だった。
司法省がGoogleの検索における独占に対して反トラスト訴訟を起こしたのは、彼の1期目の在任中であった。そして、現在司法省反トラスト局を率いる彼の任命者ゲイル・スレーター氏が、同省がGoogleの広告テクノロジー事業の解体を主張するために出廷したのも、9月下旬のことである。
皮肉なことに、大統領自身は分割そのものに反対しているのではなく、「先に動くのがヨーロッパであること」に反発している可能性が高い。
「トランプ政権はGoogleを分割したいと考えている。しかし、米国企業である以上、『分割すべきだ』と言うことと、『誰がそれを実際に行うのか』ということのあいだには違いがある」と、プレイスケル法律事務所の独占禁止法部門チェアであり、ロビー団体「オープン・ウェブのための運動(Movement for an Open Web)」の共同創設者でもあるティム・カウエン氏はそう述べた。
最終的に分割を規定するのはヨーロッパの決定
ヨーロッパがその点を意識していることを示す証拠はいくつかある。Googleに対する今回の措置を主導してきた欧州連合の執行機関である欧州委員会は、ワシントンの方針をそのままなぞっているわけではないが、司法省の動きを綿密に追ってきた。実際、広告スタックの各階層で競争がいかに歪められているかという構図に至るまで、司法省が提示した構造的な主張とまったく同じ論理を反映しているのである。
「欧州委員会がやってきたことは、司法省が主張している立場を非常に綿密に踏襲することである」とカウエン氏は述べた。
だからこそ、数々の政治的な雑音にもかかわらず、最終的に分割がどのような形になるのかを規定するのはヨーロッパの決定となる可能性が高いのである。
しかし、その答えがすぐに出る可能性は低い。欧州委員会は、おそらくGoogleに対し、自らの修正案を提示する複数の機会を与えるだろう。ちょうど10年以上前にマイクロソフトの独占禁止法訴訟が解決するまでにそうしたようにである。
広告業界の反応は大半が現実的だ。何らかの変化が必要だという認識は広がっており、規制当局の介入なくしてはプラットフォームの行き過ぎを止める線引きはできないという感覚があるからである。同時に、懐疑的な見方も残る。たとえ規制当局が成功しても、市場に利益をもたらすだけの余地が残っているのか、という疑問だ。
「次の進化がオープンウェブを支持する方向に舵を切るのは理にかなっている。つまりパブリッシャーにとっての選択肢が増え、相互運用可能なオークションが拡大し、手数料率への実質的な圧力が強まるということだ」と、アドテク企業パティキュラー・オーディエンスのCEOであるジェームズ・テイラー氏は述べた。「Googleには自発的にこれを行う動機がない以上、政府による規制が必要なのだ」。
[原文:Google’s ad tech breakup is now a political hot potato – and Europe’s holding it first]
Seb Joseph(翻訳・編集:坂本凪沙)
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