今月のメキシコ大統領・議会選では与党が圧勝し、ロペスオブラドール大統領が求めていた司法と社会制度を変える憲法改正への扉が開いた。シェインバウム次期大統領はどの改正を優先させるかを決めなければならない。
2日の議会選でロペスオブラドール大統領率いる左派与党、国家再生運動(MORENA)は予想より多くの議席を獲得し、野党から要求された変更をすることなく、より速いペースで改革を進め得る可能性がある。
一部の投資家はチェック・アンド・バランスの崩壊を懸念している。

シェインバウム氏とロペスオブラドール氏(2018年)
Photographer: Alfredo Estrella/AFP/Getty Images
1. 現大統領はどのような司法改革を望んでいるのか
10月に退任するロペスオブラドール大統領は、最高裁判所を含む全ての裁判官を国民投票で選出することを望んでいる。また、裁判官の任期を短縮し、給与に上限を設け、同じく国民投票で選出される司法懲戒機関の創設を提案している。
大統領は長い間、最高裁と対立。最高裁は大統領のアジェンダの重要な一角を阻止してきた。大統領は11日の記者会見で、司法改革は「急務」だと明言した。
憲法改正には議会の3分の2以上の賛成が必要だ。重大犯罪に対する取り締まりが甘く、機能不全に陥っているとも見なされる司法に変更を加えることを国民は広く支持しているが、大統領が提案した憲法改正への支持はずっと少ない。
今回の上下両院選で、与党連合は下院で3分の2を上回る議席を獲得。与党連合が3分の2に至らなかった上院では、交渉が必要となる。
大統領の提案に批判的な向きはこうした改憲は司法の独立性を脅かし、民主主義を弱体化させ、裁判所を政治化させると主張している。
2. 次期大統領は憲法改正についてどのような発言をしているのか
現大統領と10日に会談したシェインバウム氏は、提案されている司法改革が議会で最初に議論されるだろうと述べ、この改革については議会だけでなく、学者や市民団体も含めて広く議論すべきとの考えを示した。
シェインバウム氏は、公務員の年金制度見直しや公職再選制限など法整備の第1弾として挙げている。投資家からは、幾つかの独立規制機関を廃止するなどの憲法修正案に懸念の声が上がっているが、これについては後日議論されると同氏は明らかにした。
3. ペソの反応は
選挙後最初の1週間で、メキシコ・ペソは8%余り下落した。一部の投資家はシェインバウム氏が現大統領との距離を置くことに失敗し、その代わりに司法の見直しなど最も物議を醸す提案を受け入れたことに警戒感を抱いている。
JPモルガン・チェースは調査リポートで、ペソは選挙結果に「過剰反応」したとし、投資家にロングポジションを維持するよう勧めた。
4. 株式市場は
ほとんどの影響は外国為替市場で見られたが、選挙直後のメキシコ株も連立与党が圧倒的多数(スーパーマジョリティー)を得るとの懸念から打撃を受けた。
また、ワシントンの全米商工会議所で最近開かれた非公開の会合では、米企業関係者がメキシコの当局者に現・次期大統領による計画の一部がメキシコへの投資環境を悪化させることを懸念していると伝えた。
5. 他に市場に影響を与えそうな改革は
司法の見直しに加え、物議を醸している提案の一つは連邦政府の選挙庁を廃止し、下院で選出されるのではなく、有権者によって選ばれるメンバーで構成される新たな機関を設立する構想だ。
現大統領はまた、政党助成金を減らし、選挙運動向けの民間資金調達を認めることを提案している(選挙当局の弱体化は自由で公正な選挙を危うくするとの抗議デモも行われた)。
現大統領はまた、連邦経済競争委員会(COFECE)のような独立した規制機関の廃止や、エネルギー分野において国家機関である連邦電力委員会を重視し民間企業の役割の縮小することも求めている。
6. なぜ社会的プログラムが憲法改正案に含まれているのか
年金プログラムのような社会的イニシアチブが、憲法改正の文脈で語られるのは奇妙に思えるかもしれない。
しかし、メキシコでは大統領の任期は1期6年に限られているため、最低賃金の引き上げなど、ロペスオブラドール政権下で行われた政策変更を憲法に明記することで、別の政党が政権を取った後でも、その政策が維持されるようにする狙いがある。
シェインバウム氏は選挙直後のコメントで、現大統領が支持した改革に加えて、女性・学童支援プログラムなどの新たな改革も打ち出した。年金制度や司法の見直しなどと共に、これらの改革が同氏の優先事項だ。シェインバウム氏は他の提案は後回しにされるとしている。
7. 覚えておくべき重要な日程は
新議会は9月1日に立法期間が始まる。シェインバウム氏の大統領就任は10月1日だ(ロペスオブラドール氏は大統領の任期終了後に公職から引退すると繰り返し述べているが、シェインバウム次期政権に対するロペスオブラドール氏の影響は大きい)。
シェインバウム氏によれば、9月に最初の改憲案が審議され始めるのが目標。
原題:What Are the Mexico Reforms Spooking Markets?: QuickTake(抜粋)
