気楽に「知り合い」から
イラスト・大野八生 新学期が始まって2か月。学校生活にも慣れて、新しい友達ができた人も多いだろう。でも、ネットのつながりを重視するあまり、友達関係がわずらわしく感じることもある。厚い友情という言葉も現実味が薄れてきた。そんな時代に本当の友達をどう見つければいいのか、本を頼りに考えてみたい。(近藤孝)
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「私は、信頼に報いなければならぬ。いまはただその一事だ。走れ! メロス」 学校の国語の教科書の定番といえば、太宰治の「走れメロス」。メロスは自分の身代わりとして人質になった友との約束を果たすため、命をかけて、刑場を目指して走る。自らを励ます言葉には、友を思う気持ちがあふれ出る。 そんな二人にも、相手を裏切りそうになったり、相手のことを信じられなくなったりする瞬間が訪れる。複雑な心境を明かす言葉がリアルだが、如月かずささんの『ほんとにともだち?』(小峰書店)の主人公も友達に不信感を抱く。 くまのまあくんとたぬきのたんくんは友達同士。たんくんはまあくんの家に遊びに来るが、ふたりはいつもほとんど無言のまま。だんだん、まあくんは心配になってくる。「ぼくとたんくんは、やっぱりともだちじゃないんじゃないかな」 まあくんは、釣りを楽しむおとうさんときつねのおじさんの様子を見て、2人は本物の友達だと理解する。おしゃべりをしていなくても笑ってなくても、「なんとなくでいいんだよ」と、おとうさんが話してくれる。 今はSNSで大勢の友達と結びついている時代。その中に、どれほど、本物の友達がいるのだろう。メロスやまあくんと同じように不安に思う子供が、増えているのではないか。 ネット時代の処方箋になりそうなのが、社会学者、石田光規さんの『友だちがしんどいがなくなる本』(講談社)だ。孤立や孤独についての研究で知られる著者は、「この人に好かれたい(嫌われたくない)、この人と友だちになりたい、といった考え方からちょっと距離をおいてみませんか」と提案する。 友達という存在は素晴らしいが、壊れやすい関係でもある。ならば、友達であることにこだわらず、つながりのある人は皆「知り合い」でいいのでは。「『知り合い』としての交流を重ねて、振り返ったら『友だち』と感じていたくらいがちょうどよい」。主に小中学生を対象にした本書のアドバイスは『ほんとにともだち?』にも通じている。 イタリア在住の作家、ジョルジョ・ヴォルペの『はるにきみがめざめたら』(工学図書)からも、友達関係を意識しすぎないで、というメッセージが読み取れる。主人公は3匹の動物たち。仲のいい友達に、新しい仲間のことを伝えるべきか。三角関係になり、友情にひびが入るのでは、と心配するが、結局取り越し苦労に終わる。気張らずに、楽な気持ちでつきあうこと。それが、現代の友達作りのひけつかもしれない。
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