
栃木県のビジネスホテル(N=58〜66施設)について、2026年9月1日〜10月31日の61泊分の推定OCC(OTA掲載在庫ベース)を曜日別に単純平均すると、日曜泊は72.5%と7曜日のなかで最も低く、最も高い土曜泊の89.0%とは16.5ポイントの開きがあった。祝日・連休に絡む6泊を除いて計算し直すと日曜泊は66.6%まで下がり、月〜木曜泊の平均85.0%に対して18.4ポイント低い水準にとどまる。連休中日の日曜が90%台まで埋まる一方で、通常の日曜は60〜70%台前半に沈むという二極化が、平均値の陰に隠れていたわけだ。本稿では、この「日曜の谷」がどの時点で生まれ、直前にどこまで戻るのかをブッキングカーブで確かめ、連泊・ワーケーション・法人前泊といった打ち手につなげて読み解く。
対象: 栃木県ビジネスホテル N=58〜66施設(客室4,833〜5,657室・主要予約サイト掲載ベース)。本記事の価格指標は推定成約ADR(OTA等の販売データから推定される成約価格水準・税抜相当)、稼働率はOTA掲載在庫ベースの推定値。いずれも定義は記事末尾。データ時点: 2026年11月4日。
本記事のデータについて
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)
Key Takeaways
— 日曜泊66.6% 祝日・連休関連の6泊を除く2026年9〜10月の推定OCC(N=58〜66施設)。月〜木曜泊平均85.0%を18.4ポイント下回り、7曜日で最も低い。
— 翌日で決まる夜 翌日が祝日の日曜は90.4%・90.1%と土曜並みで、連休最終夜は60.3%・68.6%まで下がる。夜の分類は曜日より「翌日が休日か平日か」が実態に近い。
— 45日前で16ポイント差 10月の通常週は日曜泊40%台前半、木曜泊57.0%で、直前の上積みでも埋まらない。単価を10%下げるなら必要な稼働は74.0%で、観測上限の71.5%を超える。
曜日別の推定OCC — 日曜だけが大きく沈み、平日は木曜が頭ひとつ抜ける
まずは全61泊を曜日別に単純平均した結果から確認したい。月曜泊79.6%、火曜泊85.4%、水曜泊83.6%、木曜泊86.8%、金曜泊82.8%、土曜泊89.0%、日曜泊72.5%という並びで、平日のなかでは木曜泊が最も高く、金曜泊は火〜木曜泊より一段低い。観光需要が乗る土曜と、出張需要の厚い火曜・木曜が85%を超えるのに対し(水曜は秋分の日を含むため83.6%)、日曜と月曜は80%を下回った。栃木県のビジネスホテルが「平日は出張、週末は観光」の二本柱で稼働を組み立てていることがうかがえる形といえる。
ただし、この単純平均には9月のシルバーウィーク(9月19日〜23日)と10月のスポーツの日の三連休(10月10日〜12日)が含まれている。そこで、宿泊日そのものが祝日か、翌日が祝日にあたる6泊(9月20日・21日・22日・23日、10月11日・12日)を除いて集計し直したのが次の図と表である。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
表1 曜日別の推定OCCと完売施設率(2026年9〜10月)曜日推定OCC(全日)泊数推定OCC(祝日・連休関連除く)泊数完売施設率(祝日・連休関連除く)月曜泊79.6%880.0%617.6%火曜泊85.4%985.2%827.4%水曜泊83.6%986.5%829.6%木曜泊86.8%986.8%932.5%金曜泊82.8%982.8%923.9%土曜泊89.0%989.0%943.8%日曜泊72.5%866.6%613.3%
対象: 栃木県ビジネスホテル N=58〜66施設(宿泊日ごとの施設数)。期間: 2026年9月1日〜10月31日の宿泊日。完売施設率はOTA等で掲載在庫が確認できない施設の割合(推定)。除外した6泊は宿泊日が祝日、または翌日が祝日の夜。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
祝日・連休関連の夜を外すと、日曜泊は72.5%から66.6%へ5.9ポイント下がり、谷はむしろ深くなる。月曜泊も79.6%から80.0%へわずかに動くだけで、水曜泊は秋分の日(9月23日)の60.3%が抜けたことで86.5%まで上がった。祝日を除いた後の日曜泊は6泊すべてが60.4%〜71.5%の範囲に収まっており、たまたま低い日があったのではなく、通常の日曜は構造的に3割前後の在庫が売れ残る状態と読める。
完売施設率の並びも同じ構図を示す。土曜泊は43.8%、木曜泊は32.5%の施設で掲載在庫が確認できなくなっていたのに対し、日曜泊は13.3%にとどまった。週末の土曜と平日の木曜は「売り切れる施設が出る夜」、日曜は「ほとんどの施設に空室が残る夜」という違いである。
祝日が日曜の性格を変える — 連休中日は90%台、休み明け前夜は60%台
一方で、除外した6泊を個別に見ると、日曜の弱さは「日曜だから」ではなく「翌日が平日だから」という点に行き着く。翌日が祝日だった9月20日(日)は90.4%、10月11日(日)は90.1%と、ほぼ土曜並みの水準まで埋まった。逆に、連休最終日にあたる9月23日(水・秋分の日)は60.3%、10月12日(月・スポーツの日)は68.6%と、曜日にかかわらず通常の日曜(60.4%〜71.5%)と同じ水準に落ちている。
表2 祝日・連休関連の6泊の推定OCC宿泊日位置づけ推定OCC完売施設率9月20日(日)翌日が敬老の日90.4%38.5%9月21日(月・敬老の日)翌日が国民の休日88.2%47.0%9月22日(火・国民の休日)翌日が秋分の日86.5%41.9%9月23日(水・秋分の日)連休最終日60.3%14.2%10月11日(日)翌日がスポーツの日90.1%45.0%10月12日(月・スポーツの日)連休最終日68.6%18.3%
対象: 栃木県ビジネスホテル N=62〜65施設(宿泊日ごと)。完売施設率はOTA等で掲載在庫が確認できない施設の割合(推定)。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
ここから導けるのは、栃木県のビジネスホテルにとっての「谷の夜」は、カレンダー上の日曜ではなく休日の最終夜だという整理である。通常週なら日曜、三連休なら最終日の夜が谷になる。年間の価格・在庫カレンダーを組むときは、曜日ではなく「翌日が休日か平日か」で夜を分類したほうが、実態に近い需要の山谷を描ける。同じ10月三連休の最終夜を旅館側から見た動きは、栃木の10月三連休、旅館は初日86.5%・最終夜64.9%で詳しく分析している。
月別に見ても形は変わらない。月全体の推定OCCは9月が79.0%、10月が87.0%で、祝日・連休関連を除いた日曜泊は9月が62.4%(3泊)、10月が70.7%(3泊)と、どちらの月も7曜日の最下位だった。月全体の水準が高い10月でも日曜だけは70%前後にとどまっている点は、繁忙期であっても日曜の在庫は自然には埋まらないことを示している。
周辺県と比べる — 18.4ptの谷は北関東に共通、東京では4.8pt
この谷は栃木県に固有のものなのか。同じ定義・同じ期間・同じ除外条件(祝日・連休関連の6泊を除く)で、周辺の都県のビジネスホテルを並べた。
表3 周辺都県の曜日別推定OCC(祝日・連休関連を除く)都県日曜泊月〜木曜泊月〜木との差土曜泊N(施設)栃木県66.6%85.0%18.4pt89.0%58〜66茨城県66.0%88.0%22.0pt84.8%78〜88群馬県70.3%88.2%17.9pt91.9%47〜53福島県72.1%90.1%18.0pt92.4%48〜54埼玉県74.9%89.7%14.8pt93.5%56〜67東京都89.3%94.1%4.8pt94.1%536〜561
対象: 各都県のビジネスホテル、Nは宿泊日ごとの施設数の範囲。推定OCC(OTA掲載在庫ベース)。期間: 2026年9月1日〜10月31日の宿泊日から祝日・連休関連の6泊を除く。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
月〜木曜泊との差は茨城県が22.0ポイント、群馬県が17.9ポイント、福島県が18.0ポイントと、栃木県の18.4ポイントと同じ水準か、それより大きい。埼玉県は14.8ポイント、東京都は4.8ポイントで、日曜泊そのものも東京都は89.3%と高い。日曜の谷は栃木県だけの弱さというより、東京都の外側に広がる県に共通して見られる形である。裏を返せば、周辺県のホテルも同じ谷を抱えており、土曜から日曜へ1泊延ばす需要や月曜朝の前泊需要は県をまたいで取り合いになり得る。自館の日曜泊を比べる相手は、県内平均だけでなく隣県の水準まで広げておきたい。
ブッキングカーブで見る日曜 — 45日前で既に16ポイント差、直前の上積みも木曜に届かない
では、日曜の谷はどのタイミングで生まれるのか。10月の通常週から、日曜泊2日(10月18日・25日)、木曜泊(10月22日)、土曜泊(10月24日)のブッキングカーブを、宿泊日の45日前から前日まで重ねた。対象はいずれも栃木県ビジネスホテル N=62〜63施設(客室5,323〜5,447室・主要予約サイト掲載ベース)である。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
表4 通常週のブッキングカーブ(2026年10月の4宿泊日)宿泊日45日前30日前14日前前日(直前)45日前→前日の上積み10月18日(日)40.9%43.3%51.4%70.5%+29.6pt10月25日(日)40.1%44.3%56.7%70.1%+30.0pt10月22日(木)57.0%61.1%76.8%96.9%+39.9pt10月24日(土)54.2%58.4%76.2%89.7%+35.5pt
対象: 栃木県ビジネスホテル N=62〜63施設(客室5,323〜5,447室・主要予約サイト掲載ベース)。推定OCC(OTA掲載在庫ベース)。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
45日前の時点で、日曜泊の2日は40%台前半、木曜泊は57.0%、土曜泊は54.2%と、すでに15ポイント前後の差が付いていた。そこから30日前までの15日間で日曜泊が積み上げたのは2.4〜4.2ポイントにすぎず、木曜泊の4.1ポイントとほぼ変わらないため、差は縮まらないまま推移する。日曜泊のカーブが本格的に立ち上がるのは14日前以降で、10月18日は14日前の51.4%から前日の70.5%へ19.1ポイント、10月25日は56.7%から70.1%へ13.4ポイントを直前の2週間で上積みした。
それでも45日前から前日までの上積み幅は日曜泊が+29.6〜+30.0ポイントで、木曜泊の+39.9ポイント、土曜泊の+35.5ポイントには届かない。つまり、日曜の谷は「出足が遅いだけで最後に追いつく」型ではなく、早い段階で付いた差が直前の伸びでも埋まりきらない型である。直前の値下げだけに頼ると、伸びしろの小さい局面で単価を譲ることになりやすい。日曜泊の需要を厚くするには、45日前〜30日前の段階から、日曜を含む予約を生み出す商品設計が求められるといえる。45日前の水準と直前の伸びしろの関係を業態別に比べた視点は、栃木県の業態別ブッキングカーブ2026年8〜9月も参考になる。
11月の日曜泊の現況 — 前半は高い位置、月末は10月並みの出足
ここまでの物差しを、これから迎える11月の宿泊日に当てはめてみる。2026年11月3日までの観測に基づく断面で、対象は栃木県ビジネスホテル N=59施設(客室5,221室・主要予約サイト掲載ベース)である。数値は現時点の販売状況に基づくもので、今後の予約や在庫の出し入れによって変動し得る。
表5 11月の宿泊日の販売状況(2026年11月3日時点)宿泊日45日前30日前直近の観測(宿泊日までの日数)11月8日(日)53.8%58.5%70.9%(5日前)11月12日(木)52.4%61.1%81.4%(9日前)11月14日(土)57.4%65.3%79.9%(11日前)11月15日(日)51.0%57.6%64.4%(12日前)11月22日(日・翌日が勤労感謝の日)61.3%66.1%72.3%(19日前)11月26日(木)44.7%50.1%54.3%(23日前)11月29日(日)39.9%42.6%45.8%(26日前)
対象: 栃木県ビジネスホテル N=59施設(客室5,221室・主要予約サイト掲載ベース)。推定OCC(OTA掲載在庫ベース)。2026年11月3日時点の観測。現時点の販売状況に基づく推定で、今後変動し得る。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
11月8日と15日の日曜泊は、45日前の時点で51〜54%台と、10月の日曜2日(40%台前半)より10ポイント以上高い位置から始まっていた。紅葉期の観光需要が重なる時期でもあり、11月前半の日曜は10月より出足が良い。ただし11月15日は30日前の57.6%から12日前の64.4%まで6.8ポイントの上積みにとどまり、同じ区間で61.1%から77.4%へ16.3ポイント伸ばした木曜泊(11月12日)との差は開いている。日曜特有の伸び悩みは残っている。
注目したいのは翌日が勤労感謝の日にあたる11月22日(日)で、45日前で61.3%、19日前で72.3%と、10月の日曜泊が前日に到達した水準をすでに超えている。先に見た「翌日が休日なら日曜は土曜並みになる」という性質が、ここでも先行して表れている形だ。反対に、11月29日(日)は45日前39.9%、30日前42.6%と10月の日曜2日とほぼ同じ出足で、通常の日曜に戻っている。同じ週の11月26日(木)も30日前で50.1%と、10月22日(木)の61.1%を下回っており、月末は平日・日曜ともに追加の需要喚起を検討したい時期といえる。
推定成約ADRは10月に前年比+5.1% — 月次の単価水準は維持されている
稼働の曜日差を価格でどう扱うかを考える前提として、月次の推定成約ADR(税抜相当)の水準も確認しておく。栃木県のビジネスホテル(N=137施設)の確定値は、2026年9月が約¥6,600(前年同月約¥6,600・+0.2%)、10月が約¥7,200(前年同月約¥6,900・+5.1%)だった。9月は前年並み、10月は前年を上回っており、単価を崩さずに10月の稼働を確保できていたことになる。
出典:メトロエンジンリサーチ、ホテルバンク編集部より作成
対象: 栃木県ビジネスホテル N=133〜140施設(月ごと)。推定成約ADR(税抜相当)、2025年1月〜2026年10月はいずれも確定値。推定OCCの対象施設(N=58〜66)とは集計対象が異なる。
推定成約ADRは月次で確定させる指標のため、本稿では曜日別の価格は扱わない。言えるのは、月全体の単価水準が前年を下回っていないなかで、日曜泊の在庫だけが毎週3割前後残っているという事実である。月の単価を守りながら空いている夜を埋めるには、日曜単体の値下げより、日曜を含む滞在そのものを商品として売る発想のほうが整合的だろう(業態ごとの単価の動きは栃木県のADRは一枚岩ではないを参照)。
日曜の値下げは、稼働がどこまで戻れば元が取れるか
「日曜単体の値下げより」という判断を数字で確かめておく。祝日を除く日曜泊の推定OCC66.6%(2026年9〜10月)を起点に、単価変更と着地OCCの組み合わせでRevPARがどう動くかを指数にした(値下げ前の66.6%を100とする)。
表6 単価変更×着地OCCのRevPAR指数(現状=100の試算)着地OCC\単価変更据え置き−5%−10%−15%−20%66.6%(現状)100.095.090.085.080.070.0%105.199.894.689.384.175.0%112.6107.0101.495.790.180.0%120.1114.1108.1102.196.185.0%127.6121.2114.9108.5102.1
RevPAR指数 = 着地OCC ×(1 + 単価変更率)÷ 66.6 × 100。販売した全客室に同じ単価変更が及ぶと仮定した算術上の試算で、客室売上のみを対象とし、OTA手数料や清掃費などの変動費は含まない。着色は指数100以上。値下げによる稼働の増加を予測するものではない。
指数100に戻るのに必要な着地OCCは、−5%で70.1%、−10%で74.0%、−15%で78.4%、−20%で83.3%となる。一方、2026年9〜10月の通常の日曜6泊で最も高かった夜は71.5%だった。つまり観測された範囲で元が取れるのは−5%までで、−10%以上の値下げは、この期間の通常の日曜が一度も届かなかった稼働を前提にすることになる。単価を動かすなら小幅にとどめ、稼働の上積みは連泊や前泊といった商品側で作るほうが、数字の上でも無理が少ない。
栃木県のビジネスホテルを運営するレベニューマネージャーへ — 日曜の谷を埋める示唆とアクションプラン
運営目線のインサイト
1. 夜の分類を「曜日」から「翌日が休日か平日か」に置き換える。翌日が祝日の日曜は90.4%・90.1%と土曜並み、連休最終日は60.3%・68.6%と通常の日曜並みだった。自館の価格・在庫カレンダーも、通常の日曜と連休最終夜を同じ「谷の夜」として扱い、翌日が祝日の日曜は週末側に分類して見直す余地がある。
2. 日曜の差は45日前に付いている。市場の日曜泊は45日前で40%台前半、木曜泊より15ポイント前後低く、30日前までほとんど縮まらなかった。自館の日曜の予約が直前にしか動かないなら、それは市場と同じ型であり、取り返す手段は早い段階の商品づくりにあると考えられる。
3. 日曜は「土曜の延長」と「月曜の前夜」の両側から埋める。土曜泊は89.0%、月〜木曜泊は平均85.0%と両隣が高い。土曜に泊まる観光客の2泊目として日曜を売る連泊、月曜朝から県内で動く出張者の前泊として売る法人需要の両面から需要を引き寄せる余地がある。
4. 単価は月で守り、日曜はセット商品で動かす。10月の推定成約ADRは前年同月比+5.1%だった。日曜単体の値下げで月の単価水準を崩すより、連泊・滞在型プランの中で日曜の価値を上乗せする設計が、月次の単価と稼働を両立させやすいといえる。
具体的な打ち手として、栃木県の需要文脈に沿った3つの方向がある。1つ目は土日連泊プランで、日光・那須・鬼怒川方面への観光客に対し、土曜と日曜の2泊目に朝食や駐車場、レイトチェックアウトといった付加価値を載せて、日曜単体の価格を下げずに連泊を選びやすくする。2つ目は日曜起点のワーケーション・滞在型プランで、日曜チェックインから平日にかけて数泊する滞在を想定し、デスク付き客室や長時間利用を軸に組み立てる。首都圏から新幹線で移動しやすい立地は、日曜夕方に移動して月曜から現地で仕事をする使い方と相性が良い。3つ目は法人の前泊需要で、県内に工場や事業所を持つ企業の月曜朝の会議・研修・現場立ち会いに向け、日曜前泊を前提にした法人向け条件を提示しておくことが考えられる。いずれも、日曜を「売れ残る夜」ではなく、両隣の高稼働日とつながった夜として売るための設計である。
表7 日曜の谷を埋めるアクションプラン時間軸打ち手判断トリガー(記事中の数値)狙い今週中11月29日(日)の自館の予約状況を市場カーブと照合する市場の30日前時点42.6%を自館が下回っているなら月末日曜の需要喚起策を早めに打つ判断材料にする今週中11月22日(日)を週末側の価格・在庫設定に揃える市場が19日前で72.3%と、10月の日曜泊の前日水準を超えているなら翌日が祝日の日曜で単価を取りこぼさない2週間以内土日連泊プランを12月以降の宿泊日向けに用意する自館の土曜泊が市場の89.0%並みに埋まる一方、日曜泊が66.6%前後にとどまるなら土曜の観光需要を日曜の2泊目につなげる2週間以内県内の法人取引先に日曜前泊の条件を案内する自館の月曜泊・日曜泊がともに市場の80.0%・66.6%を下回るなら月曜朝の出張需要を日曜に前倒しで取り込む来月に向けて日曜チェックインのワーケーション・滞在型プランを45日前から販売する市場の日曜泊が45日前で40%台前半と木曜泊より15ポイント前後低い状態が続くなら直前の値下げに頼らず、早い段階で日曜を含む予約を積む来月に向けて年間カレンダーで連休最終夜を「谷の夜」として洗い出す連休最終日の市場推定OCCが60.3%・68.6%と通常の日曜並みだったことを踏まえ三連休の最終夜にも日曜と同じ打ち手を当てはめる
いずれの打ち手も、自館の数値を市場の物差しに重ねて判断することが前提になる。市場平均を上回る日曜泊を実現している施設であれば、無理に打ち手を足すより、すでに効いている要因を連休最終夜にも横展開することを検討したい。
まとめ — 日曜の谷を測る3つの物差し
栃木県のビジネスホテルの9〜10月の曜日別推定OCCからは、次の3つの物差しを引き出せる。
表8 日曜の谷を測る3つの物差し物差し栃木県ビジネスホテルの値自館での使い方祝日を除いた日曜泊の水準66.6%(月〜木曜泊平均85.0%との差18.4pt)自館の日曜泊がこの水準とどれだけ離れているか翌日が休日の夜/連休最終夜90.4%・90.1%/60.3%・68.6%夜を曜日ではなく翌日の性格で分類する日曜泊の45日前の出足40%台前半(木曜泊57.0%)45日前時点で日曜の予約がどこまで積まれているか
日曜の谷は、通常週に毎回現れ、45日前からすでに形になっている。だからこそ、直前の値下げではなく、土曜の観光需要と月曜の出張需要をつなぐ商品で早めに埋めにいく発想が求められる。翌日が祝日の日曜は土曜並みに埋まるという事実は、日曜の需要が「無い」のではなく「翌日の予定に縛られている」ことの裏返しでもある。その制約を連泊・滞在・前泊という形でほどくことが、栃木県のビジネスホテルにとって日曜の在庫を収益に変える糸口になるだろう。
よくある質問 — 栃木県ビジネスホテルの日曜の稼働
栃木県のビジネスホテルで稼働が最も低い曜日は?
2026年9〜10月の推定OCC(OTA掲載在庫ベース・N=58〜66施設)では日曜泊が最も低く、全61泊の単純平均で72.5%、祝日・連休関連の6泊を除くと66.6%だった。月〜木曜泊の平均85.0%より18.4ポイント低い。
連休中の日曜も稼働は低いのか?
翌日が祝日の日曜は低くない。2026年9月20日は90.4%、10月11日は90.1%と土曜泊並みに埋まった。一方、連休最終夜の9月23日は60.3%、10月12日は68.6%で、谷は日曜そのものより休日の最終夜に現れる。
日曜の谷はいつ生まれるのか?
2026年10月の通常週では、宿泊日の45日前にすでに差が付いていた。45日前の日曜泊は40.9%・40.1%、木曜泊は57.0%だった。前日までの上積みも日曜泊は約30ポイントで、木曜泊の39.9ポイントに届かなかった。
栃木県の日曜の谷は他県より深いのか?
同じ定義・同じ期間(2026年9〜10月、祝日・連休関連を除く)の月〜木曜泊との差は、栃木県18.4ポイントに対し、茨城県22.0ポイント、群馬県17.9ポイント、埼玉県14.8ポイント、東京都4.8ポイントだった。北関東に共通する形で、東京都では浅い。
日曜は値下げで埋めるべきか?
試算では、祝日を除く日曜泊の推定OCC66.6%(2026年9〜10月)を起点に単価を10%下げると、客室売上を保つには74.0%まで稼働を戻す必要がある。2026年9〜10月の通常の日曜6泊の最高は71.5%だったため、値下げ単体より、連泊や前泊など日曜を含む商品で需要を作るほうが整合的と考えられる。
推定OCCは実際の稼働率と同じか?
定義が異なる。OTA掲載残室数と総客室数から算出した掲載在庫ベースの推定値で、掲載外の客室を消化済み側に数えるため、実客室稼働率より高めに出る。水準の絶対値より、曜日間や時点間の差を読む指標として使いたい。
データについて
表9 集計の定義と対象項目内容推定OCCの定義OTA掲載在庫ベース稼働率 = 100 − 100 × OTA掲載残室数 ÷ 総客室数。対象は総客室の30%以上をOTAに掲載する施設で構成した固定コホート(各宿泊日で同じ施設集合。本記事の N がその施設数)。OTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、実客室稼働率とは定義が異なる(掲載外の客室を消化済み側に数えるため高めに出る)。 本文では「推定OCC(OTA掲載在庫ベース)」と表記した。対象期間は2026年9月1日〜10月31日の宿泊日(61泊)。ブッキングカーブ宿泊日の45日前から直近までの観測に基づく。推定成約ADRの定義OTA等の販売データ(最安プラン水準×業態別係数・複数チャネルのアンサンブル)から推定した成約価格水準(税抜相当)。過去月は確定値、現在・未来月は現時点の販売状況に基づく推定値。公表運営実績との照合で誤差中央値6.6%。本記事では2025年1月〜2026年10月の確定値のみを使用した。対象 N= の内訳推定OCC: 栃木県ビジネスホテル N=58〜66施設(客室4,833〜5,657室・主要予約サイト掲載ベース、宿泊日ごと)。11月の断面: N=59施設(客室5,221室)。推定成約ADR: N=133〜140施設(月ごと、2026年9月・10月は137施設)。祝日・連休関連の除外宿泊日が祝日、または翌日が祝日にあたる6泊(2026年9月20日〜23日、10月11日・12日)を除いた集計を併記した。周辺都県との比較各都県のビジネスホテルについて、栃木県と同じ定義・同じ61泊・同じ6泊除外で曜日別に単純平均した。月〜木曜泊との差は小数第1位に丸めた値の差。RevPAR指数の試算祝日を除く日曜泊の推定OCC66.6%(2026年9〜10月)を基準(100)とし、販売した全客室に単価変更が及ぶと仮定した算術上の試算。価格の実額や曜日別の単価は用いていない。データ時点データ時点: 2026年11月4日。販売状況・在庫は日々変動するため、本記事の数値は取得時点のスナップショットである。
