滋賀県ホテル投資2026|大津¥11,700・長浜¥9,300・彦根¥9,100、市町別ADRの3層マップと成立ADR

メトロエンジンリサーチの推定成約ADRで滋賀県の市町を並べると、2026年9月に最も高いのは大津市の¥11,700(N=32施設)で、長浜市¥9,300(N=23)、彦根市¥9,100(N=21)が続く。県全体の水準は¥8,300と京都府(¥14,200)の58%にあたり、この差は京都が紅葉で最も高くなる11月に最大となる。本稿では県内の市町を「琵琶湖岸リゾート層」「城下町・歴史観光層」「南部ビジネス・工業層」の3層に分け、季節性・推定稼働率・周辺人口と就業・地価・浸水想定を重ねたうえで、主要3駅前の新築に必要な成立ADRを試算する。

本記事のデータについて
• ADR(平均客室単価)=各施設がOTA上で公開する最安プラン水準(2名1室利用時・1室あたり料金・税込)に業態別の補正係数を適用して算出した推定成約単価(税抜相当)。上場ホテルREITが開示する物件別実績との照合(91施設・直近3ヶ月間)で誤差中央値は約7%。推定値であり、各施設の実際の成約価格・会計数値とは異なります。
• エリア(都道府県・市区町村)単位のADRは、対象施設の推定成約単価の中央値(エリアの標準的な施設の水準)です。
• 掲載価格に言及する箇所は、2名1室利用時の1室あたり料金(税込)です。
• OCC(稼働率)=エリア内の総客室数に対する販売済み客室数の割合(OTA販売在庫に基づく推定値)。
• 出典:メトロエンジンリサーチ(国内約168,000施設のOTA公開価格を継続追跡、うち稼働確認済み約27,000施設)

県全体ADR(2026年9月)

¥8,300

N=158施設・京都府の58%

大津市ADR

¥11,700

施設数5以上で最高・N=32施設

2年前比(県全体)

+11.8%

2024年9月¥7,400比

推定OCC(2026年9月)

85.7%

109施設/6,543室

宿泊客数(2025年)

410万人

滋賀県発表・過去最高

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(推定OCCは主要予約サイト掲載ベース)/滋賀県「観光入込客数統計調査」

Key Takeaways

— 大津市¥11,700(2026年9月・N=32施設)が施設数5以上の市町で唯一1万円を超える。県全体の¥8,300は京都府¥14,200の58%にとどまる。
— 季節の振れ幅(最高月÷最低月)は大津2.00倍・高島1.67倍、南部の草津1.37倍・甲賀1.28倍。湖岸は繁忙月型、南部は通年稼働型。
— 推定稼働は2026年9月に滋賀85.7%・京都84.0%とほぼ同水準。一方で単価は2025年11月に京都の36.5%まで開く。
— GOP利回り7%の成立ADRは大津駅前¥13,400・草津駅前¥12,500・彦根小規模上位型¥24,200。大津は市の12か月平均との差が1,000円弱。
— 3駅1km圏の22施設中20施設が¥5,000〜14,000に集中。¥15,000〜25,000帯はほぼ空いており、亀の井ホテル 彦根(41室)は¥24,700。

市町別ADR — 大津が抜け、城下町2市が¥9,000台で並ぶ

まずは市町単位の水準を確認したい。2026年9月の推定成約ADRは大津市¥11,700が施設数5以上の市町で唯一1万円を超え、長浜市¥9,300、守山市¥9,200(N=5)、彦根市¥9,100が¥9,000台に並んだ。草津市¥8,500、甲賀市¥7,900、近江八幡市¥7,700、湖南市¥7,400、高島市¥7,200、東近江市¥6,700と続き、上位と下位の幅は約1.7倍に収まる。京都府の同月値¥14,200を基準線に置くと、大津市でもその83%であり、施設数5以上のどの市町も京都の標準的な単価の下側で価格帯を組んでいることがわかる。

滋賀県 市町別 推定成約ADR(2026年9月)と京都府の水準

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(施設数5以上の市町のみ表示。日野町・栗東市・米原市など施設数5未満の市町は参考扱いとして除外)

前年同月比では、高島市が+15.5%と伸びた一方、草津市−15.9%、長浜市・近江八幡市が各−10.0%と下げた。ただし比較対象の2025年9月は大阪・関西万博の会期(2025年4月13日〜10月13日)と重なり、県全体のADRが¥9,200と高かった月である。2年前の2024年9月と比べると、県全体は+11.8%、彦根市+28.7%、甲賀市+20.3%、大津市+9.2%、草津市+6.9%となる。つまり前年比のマイナスは万博期の高い比較基準を反映した面が大きく、各市町にとっては万博後の需要構成に合わせて価格帯を組み直す余地として読むのが妥当だろう。

3層の分類 — 季節の振れ幅がそのまま事業性の違いになる

市町を需要の性格で3層に分けると、各層の違いは単価の水準よりも季節の振れ幅に表れる。直近12か月(2025年10月〜2026年9月)の月次ADRについて最高月を最低月で割った値は、琵琶湖岸リゾート層の大津市が2.00倍、高島市が1.67倍と大きい。城下町・歴史観光層では彦根市1.64倍、長浜市1.32倍、近江八幡市1.28倍とばらつき、南部ビジネス・工業層は草津市1.37倍、甲賀市1.28倍と平らに近い。言い換えると、湖岸層は繁忙月の単価で年間収益を積み上げる型、南部層は通年の稼働で積み上げる型であり、同じ県内でも投資の組み立て方は大きく異なる。

滋賀県 市町別の推定成約ADR・前年比・季節の振れ幅・推定稼働(3層別、2026年9月)
層市町ADR 2026年9月前年同月比2年前比直近12か月平均最高月÷最低月推定OCC 9月(施設/客室)

琵琶湖岸リゾート大津市(N=32)¥11,718−4.2%+9.2%¥12,5482.00倍83.0%(23/1,461)
琵琶湖岸リゾート高島市(N=13)¥7,202+15.5%−4.1%¥7,7041.67倍87.2%(11/173)
城下町・歴史観光長浜市(N=23)¥9,270−10.0%−3.1%¥9,4561.32倍86.1%(20/1,080)
城下町・歴史観光彦根市(N=21)¥9,082−0.9%+28.7%¥8,4851.64倍82.6%(14/794)
城下町・歴史観光近江八幡市(N=11)¥7,740−10.0%−0.9%¥7,3381.28倍85.3%(5/404・参考)
南部ビジネス・工業草津市(N=11)¥8,473−15.9%+6.9%¥8,6261.37倍—
南部ビジネス・工業守山市(N=5)¥9,203−6.5%+6.6%¥9,0131.45倍—
南部ビジネス・工業甲賀市(N=14)¥7,861−3.3%+20.3%¥7,9631.28倍92.1%(8/279・参考)
南部ビジネス・工業栗東市(N=2・参考)¥9,661+5.3%+24.8%¥8,7821.44倍—

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(ADRのNは2026年9月の対象施設数。推定OCCは主要予約サイト掲載ベースで、対象施設が少ない市町は「—」)

推定稼働率を見ると、9月の県全体は85.7%(対象109施設/客室6,543室、主要予約サイト掲載ベース)で、京都府の84.0%(対象566施設/客室31,989室)と同水準にある。市単位でも長浜市86.1%、高島市87.2%と高く、単価が京都の6割前後でも客室は埋まっている。夏の推移は6月79.7%(113施設/6,577室)、7月83.2%(115施設/6,647室)、8月90.8%(101施設/5,614室)と、湖のレジャー期に向けて段階的に上がった。稼働が先に高い水準へ届いている以上、収益を伸ばす手段として次に効いてくるのは単価側である。

季節性と京都との差 — 夏は78%まで迫り、紅葉期は37%まで開く

県全体の月次ADRを年ごとに重ねると、滋賀の山は8月にある。2026年8月は¥10,200と、2024年8月の¥8,000、2025年8月の¥8,600を上回った。春と秋の山は浅く、2025年11月も¥9,100にとどまる。一方で京都府は4月と11月に山を持つため、両府県の比率は季節で大きく動く。滋賀のADRを京都府で割った値は2026年8月に77.8%まで迫り、2025年11月には36.5%、2026年4月には37.5%まで開いた。

滋賀県 推定成約ADRの月次推移(年別重ね表示)

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(N=153〜163施設。2026年10〜12月の点線は調査時点の掲載水準に基づく推定)

滋賀県ADR÷京都府ADR(2025年10月〜2026年9月)

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(滋賀県N=157〜163施設、京都府N=576〜607施設)

京都の繁忙期に滋賀の単価がほとんど動かないことは、投資の観点では余白といえる。京都市内の宿が高単価で埋まる時期、JR琵琶湖線で京都駅から約10分の大津や約20分の草津には、京都観光を目的とする宿泊者が流れてくる余地がある。それにもかかわらず、県内の価格帯はその時期にも京都の4割弱にとどまっている。調査時点の掲載水準でも、2026年11月の滋賀県は京都府の43%にとどまる。紅葉期の京都から大津・草津・宇治へ宿泊がどう分散するかは、京都紅葉ピークの「あふれ」はどこへ2026でフォワードADRから読み解いている。

滋賀県・京都府・大津市・京都市下京区の推定成約ADR比較(2026年9月実績〜2027年3月推定)
月滋賀県京都府滋賀÷京都大津市京都市下京区大津÷下京

2026年9月(実績)¥8,278¥14,16858.4%¥11,718¥13,92184.2%
2026年10月(推定)¥11,886¥21,26655.9%¥14,362¥22,88062.8%
2026年11月(推定)¥11,601¥27,11842.8%¥15,344¥26,79957.3%
2026年12月(推定)¥11,272¥17,76863.4%¥14,092——
2027年1月(推定)¥10,936¥13,49481.0%¥16,054——
2027年3月(推定)¥11,963¥22,53353.1%¥15,234——

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(2026年10月以降は調査時点の掲載水準に基づく推定で、実績月と同じ基準ではないため前年比較には用いない。2027年3月の対象は滋賀県110施設・京都府505施設)

大津市と京都駅のある下京区を比べると、9月は84.2%と近いが、11月の推定では57.3%まで開く。京都駅から約10分の大津にとって、紅葉期の京都需要を価格に反映していく伸びしろは大きい。この差は京都の宿泊需要の受け皿として、繁忙期の単価を引き上げる余地の大きさを示している。

ブッキングカーブ — 直前1週間の積み上がりは京都と同じ型

予約の入り方も確認しておきたい。2026年9月の宿泊日について、宿泊日までの日数(LT)別に推定稼働率を平均すると、滋賀県はLT45の63.4%からLT7で77.6%、LT1で85.7%まで上がった(対象157施設/客室7,114室、主要予約サイト掲載ベース)。京都府はLT45の60.1%からLT1で84.0%(対象759施設/客室33,110室)で、滋賀はどの時点でも京都を1.2〜3.6ポイント上回る。最後の1週間で8ポイント前後を積む点は両府県とも共通しており、直前の価格調整が稼働の仕上げに効く構造は同じといえる。

ブッキングカーブ(2026年9月宿泊分の月間平均・LT45→1)

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(滋賀県 対象157施設/客室7,114室、京都府 対象759施設/客室33,110室、主要予約サイト掲載ベース)

需要タイプ — 大津はオフィス、草津は人口増、彦根は観光主導

代表3駅の周辺について、居住人口と就業の構成を見る。県庁所在地の大津駅は、半径1km圏の従業者が15,245人で、オフィス系の比率は29.8%と3駅で最も高い。草津駅は従業者19,791人と最も多く、半径1.5km圏の居住人口は2025年の57,623人から2040年に57,335人と、ほぼ横ばいで推移する推計である。彦根駅は従業者7,412人、オフィス系比率14.7%で、居住人口は2040年に2020年比−10.8%と減少が見込まれる。草津は平日の業務需要が厚く、大津は行政・オフィス需要と湖岸のレジャー需要の複合型、彦根は観光が主導する立地と整理できる。

大津駅・草津駅・彦根駅周辺の居住人口と就業構成
指標大津駅草津駅彦根駅

居住人口 2025年(半径1.5km)28,842人57,623人15,550人
2040年推計の増減(2020年比)−5.0%+2.4%−10.8%
高齢者比率 2025年30.0%22.5%28.8%
事業所数(半径1km)1,5571,517737
従業者数(半径1km)15,245人19,791人7,412人
うちオフィス系比率29.8%17.6%14.7%

出典:国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口)、総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」(2021年)。居住人口は国勢調査ベースで、滞在人口・通過人口ではない

草津駅の周辺は、駅の東西に居住人口の厚いメッシュが広がっている。業務・製造業の集積が厚い南部の性格が、人口の分布にも表れている。

草津駅 半径1.5km圏の居住人口(250mメッシュ・2025年推計)

出典:国土交通省 国土数値情報(250mメッシュ別将来推計人口・R6国政局推計)

供給と立地 — 3駅の1km圏は計2,426室、増えたのは彦根だけ

代表3駅の半径1km圏に立つ客室数10室以上の宿泊施設は、稼働中の施設で大津駅8軒・853室、草津駅7軒・737室、彦根駅8軒・836室だった。2017年からの推移を見ると、大津駅は840室から853室へ、草津駅は712室のまま、ほとんど動いていない。彦根駅は473室から836室へ増えており、2018年の245室と2020年の129室の開業がその大半を占める。開業年代では、草津駅は稼働中7軒のうち5軒が1980〜90年代の開業で、大津駅も8軒中3軒が1990年代の開業である。築30年前後のストックが多いことは、建替えやリポジショニングの候補が多いことを意味する。県全体の新規供給の規模と業務帯の価格帯については、滋賀のホテル開発、2026年新規供給は既存比1.5%も参考になる。

代表3駅 半径1km圏の客室数推移(2017〜2026年)

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(2026年10月時点)。開業年が不明な施設(大津駅1軒・草津駅1軒・彦根駅2軒)は年次推移に含めない

本記事の客室ストックは、大津駅・草津駅・彦根駅のそれぞれ半径1,000m圏内にある客室数10室以上の宿泊施設(レジャーホテルを除く)を対象とし、「稼働中」は直近3か月(2026年8月〜2026年10月)に主要予約サイトで販売価格が確認できた施設を指す(2026年10月29日時点、メトロエンジンリサーチ集計)。

滋賀県の市町別ADRと代表3駅の1km圏(円の大きさ=市町の対象施設数)

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング。市町の円は施設分布の重心に配置

公示地価(駅最寄りの商業地)

代表3駅の公示地価(駅最寄りの商業地、令和8年1月1日時点)
大津駅 梅林1丁目39.4万円/㎡(+4.5%)
草津駅 大路1丁目51.0万円/㎡(+11.8%)
彦根駅 大東町12.5万円/㎡(±0.0%)

令和8年1月1日時点・前年比。出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(地価公示)

用途地域・浸水想定

代表3駅の用途地域と洪水浸水想定
駅前の用途地域3駅とも商業地域(容積率500〜600%)
大津駅想定区域外
浜大津の湖岸琵琶湖 0.5〜3.0m
草津駅草津川 0.5m未満
彦根駅芹川 0.5〜3.0m

洪水浸水想定区域(想定最大規模)。出典:国土交通省 不動産情報ライブラリ(用途地域・洪水浸水想定区域)

地価は南部が強い。草津駅前の大路1丁目は51.0万円/㎡(前年比+11.8%)で、大津駅前の39.4万円/㎡(+4.5%)を上回り、彦根駅前の大東町は12.5万円/㎡で3年続けて横ばいだった。浸水想定は地点ごとに確認したい。大津駅は想定最大規模の洪水浸水想定区域の外にあるが、駅から湖側へ約800m下った浜大津の湖岸は琵琶湖の想定で0.5〜3.0m、彦根駅は芹川の想定で0.5〜3.0mの区域に入る。湖岸の眺望を売りにする計画では、電気設備を上階に置くことや、1階を浸水しても運営を続けられる用途に充てる設計が、保険料と運営継続の両面で効いてくるだろう。

ポジショニング — 駅前1km圏は¥5,000〜14,000に集中、上の帯が空いている

3駅の1km圏の施設について、直近12か月の推定成約ADRを客室数に対して並べると、22施設中20施設が¥5,000〜14,000の帯に収まった。¥15,000を超えるのは大津の湖岸に立つリゾートホテル1施設(175室・¥19,400)だけで、¥15,000〜25,000の帯は駅前ではほぼ空いている。県全体のリゾートホテルの直近12か月平均は¥21,000(N=11施設)、旅館は¥14,500(2026年9月N=55施設)であり、この帯を支える需要自体は県内にある。

代表3駅1km圏 客室数×推定成約ADR(直近12か月平均)

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング(N=22施設。推定成約ADRが6か月以上算出できた施設のみ。円の大きさは客室数)

上位帯の実例としては、インヴィンシブル投資法人(8963)が2024年7月に取得した「亀の井ホテル 彦根」(41室、取得価格2,603百万円、1室あたり約6,350万円)がある。同施設の直近12か月の推定成約ADRは¥24,700で、彦根市の12か月平均(¥8,500)の約2.9倍の水準を保っている。湖と城下町という滋賀の資源に、40〜50室規模で上位帯の価格を組み合わせる事業モデルが、J-REITの取得対象として成立していることを示す事例である。

密集している帯

¥5,000〜14,000の帯
駅前の宿泊特化型が中心。3駅計20施設が集まり、差別化は立地と価格の微調整になりやすい。

空白帯① 駅前アッパー宿泊特化

¥13,000〜16,000 × 100〜130室
大津・草津駅前で既存ストックの1段上。京都の繁忙期の受け皿として単価を取りに行く層。

空白帯② 小規模上位

¥20,000〜27,000 × 40〜50室
湖岸・城下町の資源を使う小規模型。県内のリゾート平均と上場REIT保有物件が水準を裏づける。

開発シナリオ — 新築の成立ADRは大津¥13,400、草津¥12,500、彦根小規模型¥24,200

続いて、3駅前の新築を想定し、GOP利回り7%を確保するのに必要なADR(成立ADR)を逆算した。前提は、建築費を国土交通省「建築着工統計」ベースの2025年S造平均240.5万円/坪とし、土地は駅最寄り商業地の公示地価、敷地は容積率の8割消化、開業費などの付帯費用を建築費と土地代の合計の10%とした。GOP率は宿泊特化型を50%、小規模上位型は料飲を含むため35%に置いた。開業時期は2029年を想定し、建設期間の建築費上昇(2026年+5.3%、2027年+5.0%と想定)を織り込んだ値を下段に示す。

3駅前の新築開発シナリオと成立ADR(GOP利回り7%)
項目A. 大津駅前 宿泊特化推奨B. 草津駅前 ビジネスC. 彦根 小規模上位

客室数/延床面積120室/3,960㎡100室/3,000㎡50室/2,500㎡
土地単価(公示地価)39.4万円/㎡42.0万円/㎡12.5万円/㎡
土地代+建築費+付帯費35.3億円27.5億円20.7億円
1室あたり投資額2,940万円2,750万円4,140万円
想定OCC/GOP率80%/50%80%/50%75%/35%
成立ADR(2025年建築費)¥13,400¥12,500¥24,200
成立ADR(建築費上昇を織込み)¥14,700¥13,700¥26,700
市場の参照水準大津市12か月平均¥12,500/11月推定¥15,300草津市12か月平均¥8,600県リゾート平均¥21,000/REIT保有物件¥24,700
参照水準でのGOP利回り6.5%4.8%6.1%(¥21,000時)

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算(建築費は国土交通省「建築着工統計」ベース、地価は国土交通省「地価公示」)。草津は駅前の西大路町2丁目の公示地価を採用

Aの大津駅前は、成立ADR¥13,400に対して市の12か月平均が¥12,500で、差は1,000円弱にとどまる。11月の推定は¥15,300と成立ラインを上回っており、京都の繁忙期と湖岸のレジャー期に単価を取りに行く運営ができれば、利回りは7%圏に届く。一方、Bの草津駅前は成立ADR¥12,500に対して市平均が¥8,600で、新築を単独で成立させるには価格帯を1段上げる必要がある。南部では既存ストックの取得と改装、あるいは建築費を抑えた40室前後の宿泊特化型が現実的な選択肢となる。県内で2024〜2026年に開業した20室以上の施設6軒のうち3軒が、38〜47室の同一ブランドによる郊外型の宿泊特化ホテルだったことも、この読みと整合する(OTA掲載確認ベース、2024〜2026年の開業N=51施設)。

Cの彦根小規模上位型は、成立ADR¥24,200が県内リゾートの平均¥21,000を上回るものの、上場REITの保有物件が¥24,700を実現している。地価が大津の3分の1以下で土地代の比重が小さいため、建物と体験への投資を価格に変えられるかどうかが成否を分ける。2028年の世界遺産登録を目指す彦根城の動向は、城1.5km圏の立地評価として彦根城の世界遺産2028年登録へ、城1.5km圏の宿は947室で詳しく扱っている。

感度分析とリスク — ADR−10%でも大津は5.9%を保つ

開発シナリオ別 GOP利回りの感度分析(ADR−10%・稼働−5pt)
GOP利回り参照水準ADR −10%OCC −5pt両方

A. 大津駅前(ADR¥12,500基準)6.5%5.9%6.1%5.5%
B. 草津駅前(ADR¥8,600基準)4.8%4.3%4.5%4.1%
C. 彦根小規模上位(ADR¥21,000基準)6.1%5.5%5.7%5.1%

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算(建築費上昇の織込み前。簡易試算であり、実際の投資判断には詳細なフィージビリティ・スタディが必要)

単価と稼働の両方を動かすと、大津駅前の利回りの効き方が見えてくる。下表はAの参照水準(ADR¥12,500・想定稼働80%で6.5%)を起点に、ADRと稼働に比例させて換算した2軸感度である。GOP利回り7%に届くのは、稼働80%なら成立ADR¥13,400以上、12か月平均の¥12,500なら稼働86%以上の組み合わせで、紅葉期の推定水準(¥15,300)を取れれば稼働75%でも7%を超える。単価の1,000円と稼働の5ポイントがほぼ同じ重みで効くため、繁忙期の価格設定が年間利回りを左右する構造といえる。

A. 大津駅前 宿泊特化 — ADR×稼働の2軸感度(GOP利回り)

大津駅前 宿泊特化のADR×稼働 2軸感度(GOP利回り)
稼働(前提)\ADR¥11,250
(−10%)¥12,500
(12か月平均)¥13,400
(成立ADR)¥14,700
(建築費上昇込み)¥15,300
(11月推定)

70%5.1%5.7%6.1%6.7%7.0%
75%5.5%6.1%6.5%7.2%7.5%
80%5.8%6.5%7.0%7.6%8.0%
85%6.2%6.9%7.4%8.1%8.5%
90%6.6%7.3%7.8%8.6%9.0%

出典:メトロエンジンリサーチ&コンサルティング試算(建築費上昇の織込み前。投資額35.3億円・GOP率50%を固定し、参照水準の6.5%からADRと稼働に比例させた簡易換算。緑は7%以上)

リスクの側では、まず需要の変動がある。2025年は万博効果で単価が押し上げられており、2026年秋は前年の高い基準と比べられる局面が続く。統計の読み分けも欠かせない。滋賀県の観光入込客数統計では2025年の宿泊客数が410万1,588人と過去最高を更新したが、調査の対象や方法が異なる統計では異なる傾向が出る場合がある。供給面では、国土交通省「建築物動態統計調査」ベースの大型計画一覧に、調査時点で滋賀県所在の案件は確認されなかった。※調査時点での確認申請ベース。今後の申請追加により件数・客室数は増加する見込みであり、現時点での確定パイプラインの下限値として参照。建築費の上昇は、新規参入を抑えて既存施設の競争環境を穏やかにするアップサイドの要因としても働く。

まとめ — 京都の外縁として単価を取りに行く余地

ここまでを整理すると、滋賀県の宿泊市場は稼働で京都と肩を並べながら、単価では京都の5〜6割にとどまる市場である。単価差が最も開くのは京都の紅葉期と桜の時期で、その時期に大津・草津の駅前で1段上の価格帯を用意できれば、既存の稼働の高さを収益に変えられる。投資の優先度は、需要の厚みと成立ADRの近さから大津駅前の宿泊特化型が最も高く、彦根・長浜では40〜50室の上位型が空白帯を埋める候補となる。南部の草津・栗東は業務需要の安定を生かし、既存施設の取得と改装で価格帯を引き上げる道が現実的だろう。

⚠ 将来日程のADRに関する注意:本記事のADRのうち2026年10月以降の値は、調査時点でOTAに公開されている販売価格の水準に基づく推定であり、チェックイン日に近づくにつれて変動します。現時点で高く設定されている価格が直前値下げで下落する可能性がある点にご留意ください。なお関西圏では、2025年の大阪・関西万博期間の高い単価が比較基準となるため、前年同月比が実勢より低く見える月がある点にもご留意ください。

※推定OCC(稼働率)はOTA上で販売される在庫の消化状況に基づく推定値であり、施設全体の実稼働率とは異なります。メトロエンジンリサーチは国内約168,000施設を追跡し、うちOTA上で稼働が確認できる約27,000施設・約126万室を分析対象としている。

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参考資料・出典一覧

■ データソース

メトロエンジンリサーチ&コンサルティングがOTA公開価格から算出した推定成約ADR(市町単位は対象施設の中央値。実績月は2024年9月〜2026年9月、2026年10月〜2027年3月は調査時点の掲載水準)、主要予約サイトの販売在庫に基づく推定稼働率とブッキングカーブ(2026年9月宿泊分)、大津・草津・彦根各駅の半径1km圏にある客室数10室以上の宿泊施設ストック(レジャーホテルを除く)。周辺人口・就業は国土数値情報の250mメッシュ将来推計人口と経済センサス(2021年)、地価・用途地域・浸水想定は不動産情報ライブラリによる。

■ 試算前提

成立ADRはGOP利回り7%を確保するADRの逆算値。建築費は建築着工統計ベースの2025年S造平均240.5万円/坪、土地は駅最寄り商業地の公示地価(令和8年1月1日時点。草津は西大路町2丁目)、敷地は容積率の8割消化、付帯費は土地代と建築費の合計の10%。想定稼働率(前提)は宿泊特化型80%・小規模上位型75%、GOP率は宿泊特化型50%・小規模上位型35%。2029年開業ケースは建築費の上昇(2026年+5.3%、2027年+5.0%と想定)を織り込んだ。

■ 限界・留意点

推定成約ADRと推定稼働率はOTA公開情報に基づく推定値で、各施設の実際の成約価格・稼働実績とは異なる。2026年10月以降の値は調査時点の掲載水準で、直前の値下げなどにより変動しうる。2025年は大阪・関西万博の影響で単価が高く、前年同月比が実勢より低く見える月がある。対象施設が5未満の市町は参考扱いとした。成立ADRと感度分析はGOPベースの簡易試算で、公租公課・保険・修繕積立・金利は含まない。実際の投資判断には詳細なフィージビリティ・スタディが必要となる。

■ 市場データ

■ 政府統計・公的データ

■ REIT・業界レポート

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