『ポジショナルプレーのすべて』の著者で、SNSでの独自ネットワークや英語文献を読み解くスキルでアカデミック化した欧州フットボールの進化を伝えてきた結城康平氏の雑誌連載が、WEBの月刊連載としてリニューアル。国籍・プロアマ問わず最先端の理論が共有されるボーダーレス化の先に待つ“戦術革命”にフォーカスし、複雑化した現代フットボールの新しい楽しみ方を提案する。

第31回のテーマは、アジア強豪の育成と移籍戦略だ。日本の育成への評価は上がっているが、世界の市場で若手選手の価値を最大化するという点では、まだ改善の余地も残されている。Aリーグを舞台に10代でトップデビューを果たし、欧州へ送り出すオーストラリア。年代別代表を「ショーケース」として機能させ、海外移籍を加速させるウズベキスタン。アジアのライバルたちの挑戦から、日本サッカーが学ぶべきものを探る。

 日本代表の育成は世界に認められ、多くの選手たちがヨーロッパの強豪クラブで活躍している。韓国代表が少しずつ選手の輩出に苦労するようになっている一方、オーストラリア代表やウズベキスタン代表は10代の選手たちを積極的にプレーさせるようになってきている。アジアのライバルたちは、どのように育成と選手の売却という課題に挑んでいるのだろうか。

W杯で証明されたオーストラリアの若返り

 オーストラリア代表は、若く野心的なチームで北中米W杯に挑んだ。世代交代が急務とされていた代表チームはヨーロッパで評価されていたトルコを破りグループステージ突破を果たすなど善戦し、十分に世界で競い合える才能がある選手が揃っていることを示した。W杯をアピールの場として使い、主力選手たちをステップアップさせたこともポジティブだ。

 大会後、18歳のルーカス・ヘリントンはMLSのコロラド・ラピッズからイングランドのハル・シティに移籍することが決定し、オーストラリア人としての移籍金記録(2023年にストーク・シティからレスター・シティに移籍した、ハリー・サウターの移籍金1500万ポンド+ボーナス500万ポンド)を更新したと報道されている。今季からプレミアリーグに昇格するチームで、若きCBは存分にそのポテンシャルを試されることになるだろう。

 20歳のネストリー・イランクンダは名門バイエルンの引き抜きでその名を知られるようになり、2025年にはワトフォードへ。イングランドの地で結果を残し、W杯初戦トルコ戦でも鮮烈な先制弾を決めたアタッカーはポルトガルの名門スポルティングへの加入が濃厚とされている。GKのパトリック・ビーチは本大会でスタメンに抜擢され、印象的なセービングでゴールを守った。彼もオーストラリア国内のメルボルン・シティから、フランスリーグのトロワに挑戦の場を移している。ポール・オコン・エングストラーもシドニーFCから、FCケルンへの移籍が決定した。

若手が出場機会を得やすいAリーグという土壌

 フットボールの世界において、国境は曖昧なものになりつつある。グローバル化した社会において、生まれた場所とは違う国の代表ユニフォームをまとうことも珍しくなくなってきている。今大会、モロッコやカーボベルデを筆頭に多くのチームが「ヨーロッパ出身の選手たち」を主軸としたチームを構成し、彼らが戦術的な核を担った。オーストラリアも代表チームのバックグラウンドは多様化しており、イランクンダとモハメド・トゥーレ(22歳)はアフリカ系の移民だ。彼らは驚くべきスピードでトップリーグでのデビューを飾り、そのままヨーロッパのクラブに引き抜かれた。

 2人の物語は似ている。

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Profile
結城 康平

1990年生まれ、宮崎県出身。ライターとして複数の媒体に記事を寄稿しつつ、サッカー観戦を面白くするためのアイディアを練りながら日々を過ごしている。好きなバンドは、エジンバラ出身のBlue Rose Code。

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