ホルムズ海峡の安全な通航は世界経済にとって重要だ(8月3日撮影、写真:ロイター/アフロ)

(英エコノミスト誌 2026年8月8日号)

本誌の「ホルムズ依存度ダッシュボード」によれば、世界の期待に反して長続きする。

 世界は何年も前から、イランが核兵器を持とうとしていることを心配していた。だが、この国の指導者たちは5カ月間の戦争を通じて、核とは違う恐ろしい兵器をすでに手にしていたことに気がついた。

 国の地理と火力ゆえに、平時であれば世界で使う石油と液化天然ガス(LNG)の5分の1が通過するホルムズ海峡を事実上支配できる。

 この大動脈を詰まらせれば、イランの指導者たちは敵対国に大きな影響を及ぼすことが可能になる。

 イランを敵視する国々は、ホルムズ海峡が消耗資産であってほしいと思っている。米国のエネルギー長官を務めるクリス・ライト氏は5月、ホルムズ海峡の封鎖は「1度しか切れないカード」だと述べていた。

 ペルシャ湾岸諸国はホルムズ海峡に代わる輸出ルートを懸命に探している。トランプ政権でイラクとシリアを担当しているトム・バラック特使は、あの海峡は「2年後には重視されない存在になる」と見ている。

 こうした主張を検証すべく、本誌エコノミストは専門家への取材とデータの分析を積み重ねて「ホルムズ依存度ダッシュボード」を構築した。その結果、3つの結論が得られた。

 第1に、イランの脅威の持続力はコモディティー(商品)の種類と国によって異なる。

 第2に、イランがこの海峡で収入を得る能力は次第に低下するものの、ゼロになることはない。

 第3に、たとえイランが徴求できる通航料の料率が時間の経過とともに低下するとしても、その戦略的な影響力が必ずしも足並みを揃えて弱くなるわけではない。

 実際、イランの現体制が中東地域での影響力を制度化するにつれ、影響力が深まる可能性もある。

海峡の迂回が比較的容易なのは原油

 まず、ホルムズ海峡を単純に迂回できる積み荷がどれほどあるか考えてみよう(図1参照)。戦前には1日当たりおよそ1500万バレルの原油が海峡を通過していた。最も迂回しやすそうに見えるのがこの積み荷だ。

図1

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 サウジアラビアを東西に走り、アラビア半島を横断して紅海に面したヤンブーの港に至るパイプラインを使えば、ホルムズ海峡を回避できる。

 このルートは戦前、輸出用の原油を日量100万バレルしか運んでいなかったが、今では同700万バレルの輸送容量いっぱいまで運んでいる。

 このうち輸出されるのは日量500万バレル近くで、残りは紅海沿岸の製油所で処理される。

 アラブ首長国連邦(UAE)もハブシャン・フジャイラ原油パイプラインをフル稼働させ、日量180万バレルを輸送している(戦前は同100万バレルだった)。

 またイラクは、休止していた細いパイプラインを再稼働させ、日量20万バレルほどをトルコに運んでいる。

 その結果、原油輸出能力の不足幅は日量1000万バレルに縮小する。そこで今度は、戦争の結果新たに建設されそうなパイプラインを計算に加えてみよう(地図参照)。

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 この問題に詳しいある弁護士によれば、湾岸諸国は指揮統制経済であるため用地取得で問題が生じることはない。

 最も進展しているのはUAEのプロジェクトだ。既存のパイプラインと並走する形で作られており、2027年後半までに追加で日量180万バレルの輸送が実現される。

 イラクはパイプラインの輸送容量を1年以内に日量100万バレルに引き上げることを目指している。

 南部の油田と、ヨルダン、シリア、トルコに至る既存のルートとをつなぐ新しいパイプラインも計画している。

 この日量250万バレルのプロジェクトは業者の選定が行われている最中で、コンサルティング会社ライスタッド・エナジーのラフル・チョードリー氏は事業が4年以内に完成するはずだと話している。

 したがって、2030年までにはさらに日量500万バレルの原油がホルムズ海峡を迂回できるようになる。

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