黒崎彰(1937–2019)は、旧満州国大連に生まれ、浮世絵の伝統技法を基盤にしながら現代的で力強い表現を切り拓いた版画家です。1987年から2006年まで京都精華大学美術学部教授を務め、版画史研究者・教育者としても多くの後進を育成しました。京都工芸繊維大学在学中に幕末の浮世絵と出会ったことを契機に、独自の木版画表現を追求し、国内外で高い評価を受けました。数々の国際版画展で受賞するほか、世界各地で制作指導や審査にも携わりました。
1970年代以降、展覧会や国際交流を通じて中国・韓国をたびたび訪れた経験は黒崎の創作に大きな転機をもたらしました。欧米とは異なる独自の文化に触れるなかで、各国の造形表現や伝統への理解を深め、それらを自身の創作へと取り入れていきました。中国では書や筆の造形表現に魅了され、韓国では強靭で素朴な風合いをもつ韓国紙と出会ったことで、版画に加えてペーパーワークへと表現の幅を広げていきます。
本展では、こうした中国・韓国への旅を契機として生まれた作品に着目し、版画集『中国』と『韓国八景』に収められた作品群を紹介します。
