カナダのピール警察は2026年6月9日、元エア・カナダの機長が適切なライセンスを所持せずに約16年間にわたり大型旅客機を操縦していたとして、詐欺や文書偽造などの容疑で逮捕・起訴したことを発表しました。北米を代表するメガキャリアにおいて、長年監査をすり抜けていた事実が発覚し、航空業界に大きな衝撃を与えています。

 逮捕されたのは、元エア・カナダ機長のジェフリー・ウォール容疑者(59歳)です。今年1月、カナダ運輸省が実施した定期的な資格審査において、同氏が提出した書類に異常が見つかったことが発端となりました。

 これを受け、警察は「プロジェクト・イカルス」と名付けた犯罪捜査を開始しました。その結果、同容疑者が偽造書類を用いてカナダ運輸省および雇用主であるエア・カナダを欺いていたと断定し、6月1日に5,000ドル以上の詐欺、文書偽造、公衆の不利益を招く行為などの容疑で逮捕に踏み切りました。

 警察の発表によりますと、ウォール容疑者は「事業用操縦士技能証明(CPL-A)」は所持していたものの、ボーイング777、787、767といった大型旅客機で機長(PIC)を務めるために必須となる上位資格「定期運送用操縦士技能証明(ATPL-A)」を取得していませんでした。同容疑者は偽造したライセンスを使用し、2009年から2025年までの約16年間にわたり、900便以上の国内外のフライトで機長として乗務していたとされています。

 2020年にはパキスタン国際航空でパイロットの約3割が不適切なライセンスを所持していた大規模なスキャンダルが発覚しましたが、今回のケースは北米の主要航空会社で発生したという点で性質が異なります。

 カナダ運輸省と航空会社による多重の書類・資格監査システムが16年もの長きにわたり機能していなかった事実は非常に重く受け止められています。今後、各国の航空当局やエアライン各社において、パイロットのライセンス確認プロセスの厳格化や、デジタル照合システムの導入見直しなど、再発防止に向けた議論が加速することが予想されます。
Photo : Air Canada

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