狂言方和泉流能楽師の野村太一郎が、6月7日(日)に京都観世会館で2年ぶりとなる京都での主催公演を開催します。ファニマガでは、『第二回 野村太一郎 狂言の会 京都公演~京都 東山ゆかりの名曲三番』に向けて気合十分の野村に、公演の見どころや作品の舞台でもある京都に対する思いなどを聞きました。
出典: FANY マガジン
皆さんが前のめりに見てくださるのは嬉しい
――今回は、野村萬斎さんをはじめ、豪華出演者がそろう公演ですね。
京都での主催公演は2回目となりますが、前回は記念すべき第1回ということで、能の方もお呼びした豪華な公演となりました。今回は一門の方々にご助演いただきつつ、師である萬斎先生にも1演目をお願いし、狂言における豪華メンバーで演目、配役を構成させていただきました。
――京都は野村さんにとってどのような地ですか?
以前から関西圏にご縁がありまして、20代のころから大阪の方々に呼んでいただいて、演じることが多かったんです。しかし、ただ役を演じるだけだと爪痕を残せた感じがしなくて、お客さまに見るだけでなく、学び、体験してもらう機会をつくるようになりました。
関西圏のなかでも京都は特別な地で、以前は「東の野村、西の茂山(京都を拠点とする一門)」と名を分けられていた時代もあり、われわれにとってはいわば“アウェイ”な土地。だからこそ、京都での公演はいつも“戦いに行く”ような意識で臨みます。
また、公演場所となる東山は、稽古場をつくったゆかりある地。今回は、そんな東山にまつわる演目を披露いたします。
出典: FANY マガジン
――観客の反応に地域性を感じることはありますか?
ありますね。大阪の方がワッと笑って、パワーをくださるのに対し、京都の方も笑ってはくださいますが、どこか上品な感じがあります。東京も含め、それぞれに反応の違いはありますが、笑ってくださるという点は共通していて、ポカンとされてしまうことはないですね。
ただ、笑うタイミングはそれぞれで、とくに京都の方々は、こちらが思いもよらぬところで笑いが起きたりするので、「こんなところで反応があるんだ」なんて思っていると、「次何だっけ?」と焦ることもあります(笑)。ですので、お客さまの反応に惑わされないよう、緊張感をもって臨んでいます。でも、皆さんが前のめりに見てくださるのは嬉しいですね。
――今回の公演では、京都にゆかりのある3つの曲目が選ばれていますね。
なかでも“東山区”でくくっていて、東山ゆかりの名曲三番として上演します。『萩大名』は清水寺への道中でお茶屋さんに立ち寄る話。『清水座頭』は、清水寺でいい伴侶がほしいと願う男女が出会って生まれるラブストーリー。『止動方角』は、東山で“お茶比べ”という競争があるというのが物語の発端となっています。
歌好きなお茶屋さんの前で和歌をカンニングしようとする大名と、ヒントを出す太郎冠者とのやりとりを滑稽に描き、からっと笑える『萩大名』と、感動的な恋模様をしっとりと描く『清水座頭』。
『止動方角』は、お茶比べに参加するために見栄えをよくしようと主人が、太郎冠者を使って馬を借りる話。普段は軽自動車に乗っているのに、その日だけ見栄を張るために高級外車をレンタルするみたいなことですね(笑)。しかし、借りてきた馬の悪癖を巡り、やがて主人と従者の関係が逆転してしまいます。これは午年にもちなんだ演目です。
出典: FANY マガジン
三番立てにするときは、三者三様の物語を楽しんでいただけるよう、演目選びには気を使っていて、初めて狂言を見る方が「あまり面白くなかった」と思ってしまわないよう心掛けています。今回、上演する演目のほかにも、東山にゆかりのある曲目は多いので、来年も同じサブタイトルで公演する可能性はありますね(笑)。
私は『止動方角』では太郎冠者の役、『清水座頭』では座頭の役で、平家という小歌を歌います。“頑張ろう”と気張って、今回のように大変な役を1日2演目でやるというのはなかなかないので、それも自主公演ならではの見どころだと思います。
さまざまな笑いに触れながらステップアップ
――主催公演となると心持ちは違いますか?
やはり、なお一層頑張ろうという気持ちはありますし、自分の狂言会を見に来てくださるお客さまと一体になって能楽堂の空間をつくっていきたいという思いは強いです。物語を楽しんでいただくのはもちろん、私や他の出演者たちの芸と一体になることが目標ですね。今回の京都公演でもそれを目指しています。
――吉本興業には2021年から所属していますね。
吉本興業が最先端の笑いを生み出し続けているのに対し、狂言は日本最古の笑いです。幅広い笑いを扱うなかで、相互にいい影響があればいいですし、私もさまざまな笑いに触れながらステップアップできればと思っています。
――FANYマガジンではこれまでに、野村さんがすゑひろがりず(南條庄助、三島達矢)や吉本新喜劇と一緒に行ったワークショップなどを紹介してきました。
さまざまな方とコラボレーションしたり、別の芸能を同じ環境のなかでやることで、新しいことに踏み出したいという意欲は常々あります。まずはやってみないと、改善ができませんし、吉本興業はたくさんのアイデアを持っていると思うので、さまざまなことにチャレンジしながら、相互にファンを広げていけたらいいですね。
――すごくバイタリティがあるんですね。
思慮深いほうではあると思いますが、思いついたら早めに計画を立てて、必ず実践するというのは心掛けていて、“やらない”という選択肢は消すようにしています。
――最後に、楽しみにしている皆さんにメッセージをお願いします。
暑い時期に差し掛かるので、能楽堂に涼みに来てほしいですし、能楽堂は雰囲気がとてもよく、“新鮮であり神聖”と感じられる場なので、そんな非日常も楽しんでいただけたらと思います。アンケートでも、能楽堂に入ってから出るまで、神秘的な感覚になるという意見が多いんですよ。
出典: FANY マガジン
100人いれば100通りの楽しみ方があるのが狂言なので、そのなかで自分にあったものを見つけていただきたいですね。笑いに来ている人は大笑いしてもらえればいいし、涼みに来ている方は環境、空気感のよさを味わってもらえれば。堅苦しく考えず、いわゆる“敷居”をとっぱらって来ていただきたいですね。
古典芸能から逸脱し過ぎるのはよくないし、枠をはみ出さないと前進できないので、今回はそのバランスを上手にとりながら、東山の名曲を京都の地で多くの人にお楽しみいただきたいですね。構えず、気楽にお越しください。
公演概要
『第二回 野村太一郎 狂言の会 京都公演~京都 東山ゆかりの名曲三番』
日時:2026年6月7日(日)13:20開場/14:00開演
会場:京都観世会館(京都府京都市左京区岡崎円勝寺町44)
京都観世会館公式サイト公演ページ:http://www.kyoto-kanze.jp/show_info/20260607show_meeting/
