マクラーレンのチーム代表アンドレア・ステラが、自らの将来をめぐる臆測を一蹴し、マクラーレンでの職務に全力を注ぐ姿勢を改めて示した。2026年F1第5戦カナダGPの初日、金曜に行われた記者会見でのことだ。

「自分自身について言えば、私は間違いなくマクラーレンに全力を注いでいる」とステラは語った。

チーム代表としての経験の中で最も誇りに思うことの一つは、マクラーレン・テクノロジー・センターのキャビネットをトロフィーで満たし、新たな陳列スペースを設ける必要が生じたことだという。

「私にとって、使命は極めて明確だ。これから先の年月、マクラーレンでその新しいスペースをトロフィーで埋め尽くしていくことだ」とステラは続けた。

だが、この会見は興味深い席割りで行われていた。ステラの隣には、レッドブル・レーシングの代表兼CEOを務めるローラン・メキーズが座っていた。そのメキーズが、ステラの後任をめぐる臆測に再び火を注いだ。

ソファに腰掛けるローラン・メキーズ代表(レッドブル・レーシング)とアンドレア・ステラ代表(マクラーレン)、2026年5月22日(金) F1カナダGPチーム代表者会見(ジル・ビルヌーブ・サーキット)Courtesy Of McLaren

ソファに腰掛けるローラン・メキーズ代表(レッドブル・レーシング)とアンドレア・ステラ代表(マクラーレン)、2026年5月22日(金) F1カナダGPチーム代表者会見(ジル・ビルヌーブ・サーキット)

隣の席から放たれた「チーム代表になる」の一言

事の発端は、ジャンピエロ・ランビアーゼの移籍だった。マックス・フェルスタッペンの長年のレースエンジニアであるランビアーゼが、レッドブルを離れてマクラーレンに加わることが、4月初めに発表された。

レッドブルは、ランビアーゼが現行契約の満了する2028年にチームを去ると説明した。一方、マクラーレンは、ランビアーゼが「遅くとも2028年までに」加入し、「チーフ・レーシング・オフィサー」の役割を担うと発表した。チームの首脳陣を強化するための上級ポストだ。

だが、メキーズの発言がマクラーレンの発表に疑問を投げかけた。マイアミGPの週末にメキーズは、ランビアーゼはチーム代表としてマクラーレンに移籍すると述べた。そしてステラが同席する中、カナダの会見で改めてその見解を示したのだ。

「私の理解では、GP[ランビアーゼ]はチーム代表になるためにマクラーレンに行く」とメキーズは語る。

「彼が決断する前に、我々は何度も話をした。それが実現するかどうかは、私に聞かないでほしい。時期については、私の関知するところではない。私が言えるのは、我々の会話の中身だけだ」

なお、マイアミでのメキーズの発言に対し、マクラーレンのCEOを務めるザク・ブラウンはその翌日、メキーズは「私の知らない何かを知っているようだ」と皮肉を込めて応じたが、直接的には否定しなかった。ランビアーゼが自身の後任なのかと問われたステラも、それを真っ向から否定はしなかった。

ガレージ内で話し込むマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)とジャンピエロ・ランビアーゼ、2024年5月5日(日) F1マイアミGP(マイアミ・インターナショナル・オートドローム)Courtesy Of Red Bull Content Pool

ガレージ内で話し込むマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)とジャンピエロ・ランビアーゼ、2024年5月5日(日) F1マイアミGP(マイアミ・インターナショナル・オートドローム)

否定せず質問を”いなす”ステラの応答術

ステラは主張する。現在だけでなく将来にまでわたる「最強のチーム」を築きたいという野心をブラウンと共有している、と。

そして、黄金時代を謳歌した2000年代初頭のフェラーリを知る経験から、成功のためにどれほどの経験と専門性、リーダーシップが求められるかを知っていると前置きしたうえで、こう続ける。

「GPを雇うことは、このビジョンの一部だ。それは現在のリーダーシップと融合し、マクラーレンをますます強いチームにしていくことを可能とする、上積みとなるリーダーシップを生み出すというビジョンだ」

ステラは否定も肯定もせず、ランビアーゼ後任説を「リーダーシップの強化」というベールで覆い、同時に軸をずらすことで視線をそらす。ステラは以前から、こうした臆測を巧みにいなしてきた。4月の時点では、自身の去就をめぐる噂を料理にたとえて、こう述べている。

「まるで、嫉妬したパティシエが、上等なデザートの仕込みをマクラーレンの菓子店で台無しにしようとしているかのようだ。だが我々は、良い材料と毒入りのビスケットを見分ける術を、よく心得ている」

もっとも、後任説が絶えない背景には、構造的な事情もある。ステラが認めるように、彼はチーム代表としての役割に「非常に手一杯」である一方、チーフ・レーシング・オフィサーの職も兼ねている。ランビアーゼが将来担うとされるのが、まさにこの役職だ。

マイクを握りながら説明するマクラーレンのアンドレア・ステラ代表、2026年5月22日(金) F1カナダGPチーム代表者会見(ジル・ビルヌーブ・サーキット)Courtesy Of McLaren

マイクを握りながら説明するマクラーレンのアンドレア・ステラ代表、2026年5月22日(金) F1カナダGPチーム代表者会見(ジル・ビルヌーブ・サーキット)

マクラーレンに渦巻く三層の憶測

ステラの将来をめぐる噂は、単独で渦巻いているわけではない。現在マクラーレンを取り巻く臆測は、三つの層をなしている。

一つは、ステラ自身がフェラーリに復帰するという説だ。現在フェラーリのチーム代表を務めているのはフレデリック・バスールだが、ランビアーゼの移籍発表と時を同じくして、ステラのフェラーリ移籍説が浮上した。

一部報道では、ステラがすでに事前契約を結び、巨額の報酬を提示されたとまで報じられたが、ステラ本人とブラウンはいずれもこれを事実無根として否定している。

二つ目は、オスカー・ピアストリをめぐる噂だ。フェルスタッペンがレッドブルを去る場合、ピアストリがその後釜として狙われるとの見方がある。ただし、ピアストリはマクラーレンと複数年契約を結んでおり、少なくとも2027年末まではチームにとどまる予定となっている。

この噂についてステラは、ピアストリには「これ以上ないほど満足している」と語り、彼はコースの内外を問わず最高の状態にあると評価。同時にマクラーレンでの現状に満足していると主張した。

ガレージに立つオスカー・ピアストリ(マクラーレン)、2026年5月22日(金) F1カナダGPフリー走行1(ジル・ビルヌーブ・サーキット)Courtesy Of McLaren

ガレージに立つオスカー・ピアストリ(マクラーレン)、2026年5月22日(金) F1カナダGPフリー走行1(ジル・ビルヌーブ・サーキット)

三つ目は、フェルスタッペン自身が、ランビアーゼを追ってマクラーレンに移るのではないかという臆測だ。これについてメキーズは、フェルスタッペンがランビアーゼに続くことは心配していないと否定した。

4度のF1王者はレッドブルに満足しており、プロジェクトの主役として、競争力ある体制の復活に向けて共に取り組んでいるとメキーズは強調する。

こうした三層の憶測の渦中に座るステラは、ランビアーゼが後任なのかと問われ、こう締め括っている。

「我々の計画に疑わしい点は存在しない。その計画にない臆測は全て、我々をシリーシーズン[噂ばかり飛び交う報道閑散期]へと引き戻すものに過ぎない」

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